実用性において優れているのはフィットとノートだ

 トヨタ・ヤリスにホンダ・フィット、そして日産ノート。ここ1年ほどで各メーカーは主力コンパクトカーをフルモデルチェンジ。競争が激化している。今回は、そんな最新コンパクトハッチバックを買おうとしている人に向けて、ライバル比較において必ずチェックすべきポイントをお伝えしよう。

 まずは実用性だ。具体的にいえば、後席居住性と積載性である。

 単刀直入にいえば、優れているのはフィットとノート。後席は充分な足もとスペースと開放感があり、長時間乗車も快適にこなせる。一方ヤリスは先代に当たるヴィッツよりも狭いほどでフィットやノートとは比較にならず、キャビン上部の絞り込みと窓の小ささなどから閉塞感もある。

 後席を気にしないなら気にする必要はないが、もしもファミリーユーザーなどで後席を頻繁に使おうと考えているなら、フィットやノートに分がある。

 またラゲッジスペースも、FFモデルで257〜270リットル(4WDは209リットル)のヤリスに対し、フィットはガソリン車が330リットルでハイブリッドが306リットル。そしてノートはFFモデルで340リットル(4WDは260リットル)とヤリスは控えめとなっている。

 ここで考えたいのは、ヤリスは実用性を犠牲にして何を得ているかということ。それは燃費だ。ヤリス(FF/CVTモデル)のWLTCモード燃費はガソリン車が20.2〜21.6km/Lでハイブリッド車は35.6〜36.0km/L。それはフィット(FFモデル)のガソリン車19.4〜20.4km/Lやハイブリッド車27.2〜29.4km/L、ノート(ハイブリッドFFモデル)の28.4〜29.5km/Lを大きく凌ぐもの。

 ヤリスはパワートレイン自体の効率もいいのだが、加えて実用性を割り切ってまで空力を味方につけることで燃費をとびきりよくしているのだ。「実用性を求めるならヤリスクロスで」という作り分けといっていい。

パワートレインや価格、装備にも違いがある!

 また、パワートレインの違いにも注目したい。もっとも割り切っているのはノートで、通常のガソリン車はなくハイブリッドのみ。フィットはガソリン車もあるが、従来までと違ってマニュアルトランスミッションは用意されていない。

 一方ヤリスは、ガソリンとハイブリッドが選べるだけでなく、ガソリンは廉価タイプとして排気量1リッターも設定。また1.5リッターガソリンにはマニュアルトランスミッションを用意するなど、パワートレインやトランスミッションの選択肢が多いのが特徴だ。駆動方式はヤリスフィット、ノートともにFFと4WDを用意している。

 パワートレインのラインアップは価格帯に大きな影響を与えており、ヤリスのボトム価格は139万5000円と3車中もっとも安い(ただしこの仕様は先進安全装備が組み込まれておらず、それを備える仕様は145万5000円から)。フィットは155万7600円から、ノートはもっとも高く205万4800円からとなる。

 価格といえば、ノートはACCを装着しようと思うとナビなどとのセットオプションとなり、メーカーオプション価格が44万2200円と高額。機能的に違いはあるものの、フィットであれば全車、ヤリスは廉価グレードを除けばほぼ同等の機能が標準装備されているので、この違いは大きい。

 パワートレインのフィーリングも気になるところ。燃費に優れるのはヤリスのハイブリッドだが、加速のフィーリングがもっとも爽快なのはノートだ。「e-POWER(イーパワー)」と呼ぶノートのハイブリッドがエンジンを発電専用として駆動力はモーターだけで生み出すのが特徴だが、その伸び感と盛り上がりのある加速感はとにかく気持ちいい。それを味わうためだけにノートを買いたくなるほどだ。

 ガソリン車では、唯一の4気筒エンジン搭載車であるフィットの上質感が光る(ヤリスは3気筒エンジン)。振動や音はやはり3気筒よりも4気筒のほうが理想的だ。

 結論としては、燃費で選ぶなら間違いなくヤリスだ。いっぽうで実用性を重視するならフィットやノートを選ぶべき。

 ハンドリングはヤリスのキビキビ感が好印象で、加速の気持ちよさはノート優勢。ガソリンエンジンの上質感ならフィットがいい。