増える「2世Jリーガー」。今季は初となる選手同士での親子対決も
元日本代表で、昨シーズンはJ2のヴァンフォーレ甲府でプレーしたハーフナー・マイク(33歳)が、今シーズンから東海社会人リーグ2部のFC.Bomboneraでプレーすることになった。
2006年に横浜F・マリノスでプロデビューし、甲府やヴィッセル神戸などの数多くのJクラブやフィテッセ(オランダ)やコルドバ(スペイン)、ヘルシンキ(フィンランド)などの海外でもプレーした経験を、J昇格を目指すクラブで発揮していく。
今季J2山口に入団した18歳・新保海鈴の父親は?
そのハーフナー・マイクといえば、Jリーグで初めての「日本人父子Jリーガー」であり、「兄弟Jリーガー」でもある。
父のディド(63歳)はJSL時代にマツダや読売クラブでプレーし、Jリーグ発足後は名古屋グランパスエイト(現・名古屋グランパス)やジュビロ磐田、コンサドーレ札幌(現・北海道コンサドーレ札幌)でプレーした。弟のニッキ(25歳)も2013年に名古屋でプロデビューし、現在はスイスのFCトゥーンでプレーを続けている。
父がGK、兄がFW、弟がDFと、それぞれが違うポジションながらも、ハーフナー家が先鞭をつけた「Jリーグ父子鷹」の道を、その後も多くの父子が歩いている。
父子Jリーガーにして、初めてJリーグで監督と選手として親子対決を実現させたのが、「アジアの大砲」こと高木琢也(53歳)と、その息子の高木利弥(28歳)だ。
現役時代は長くサンフレッチェ広島に在籍し、日本代表として「ドーハの悲劇」も経験した父・琢也は、引退後は指導者として横浜FCやV・ファーレン長崎などを率い、昨シーズンまでは大宮アルディージャで監督を務めた。
息子の利弥は大学卒業後の2015年にモンテディオ山形でプロキャリアをスタートし、ジェフユナイテッド市原・千葉、柏レイソルを経て、2019年から松本山雅FCでプレー。Jリーグでは希少な左利きの左SBとして、いぶし銀の働きを見せている。
この高木親子の対決が実現したのは、2016年のJ2リーグ第40節。父が長崎の監督、息子が山形の選手として対戦した。
琢也と現役時代に広島で一緒にプレーした風間八宏(59歳)も、名古屋を率いた2017年にJ2で、当時FC岐阜に在籍した次男・宏矢(27歳/FC琉球)と親子対決を実現している。
しかも風間親子の場合、2012年に父・八宏が川崎フロンターレの監督に就任すると、長男の宏希(29歳/FC琉球)と宏矢も川崎に入団。2013年に兄弟が移籍するまで、父と3人一緒にプレーした。
最初に親子ともにJ1でゴールを決めたのは、水沼貴史(60歳)・宏太(30歳/横浜FM)の親子だ。
父・貴史は1983年にJSLの日産自動車に進み、ウイングとして金田喜稔、木村和司らと黄金期を築いた元日本代表。Jリーグ発足後は1995年まで横浜マリノス(現・横浜FM)でプレーし、42試合5得点の成績を残している。
1990年生まれの息子・宏太は、2007年に横浜FMで17歳にしてプロキャリアをスタート。J2の栃木SC経て2012年からはJ1のサガン鳥栖に所属したが、このシーズンの3月24日の鳥栖vs横浜FM戦で古巣からJ1初ゴールを決めたことで、史上初となる「J1親子ゴール」が生まれた。
J1での日本人の親子ゴールは水沼親子を含めて3ケースあるが、2例目は、浦和レッズ往年の名フリーキッカー広瀬治(55歳)と息子・陸人(25歳/現・鹿島アントラーズ)。浦和ユース育ちで右SBが主戦場の陸人は、2014年に水戸ホーリーホックでプロデビューし、翌年から4シーズンは徳島ヴォルティスに在籍。2019年に横浜FMに加入すると、ユース時代を過ごした浦和レッズ戦でJ1初ゴールをマークした。
3例目は、昨シーズンにJ1初得点を決めた横浜FCのMF安永玲央(20歳)。11月8日のヴィッセル神戸戦、J1出場12試合目でJ1初ゴールを決めた。これは1995年に清水商高から横浜Mに入団した父・安永聡太郎(44歳)が、ルーキー年に1得点を決めるまでに要した22試合を大きく上回った。
父と同じGKのポジションでJリーガーになった息子もいる。ヴィッセル神戸の前川黛也(26歳)だ。
広島などで活躍した元日本代表GKの前川和也(52歳)を父に持つ黛也は、中学3年時にフィールドプレーヤーからGKに転向。関西大を経て2017年の神戸加入以降、191cmの大型GKは着実に出場機会を増やし、昨季は15試合でゴールマウスを守った。
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ほかにも、徳島ヴォルティスに所属するFW垣田裕暉(23歳)の父・垣田健(50歳)は、1989年〜1992年に鹿島の前身である住友金属でプレーしたFW。また、2008年にU−23日本代表にも選ばれたエスクデロ競飛王(32歳/栃木SC)の父親は、1992年に浦和レッズに加入してサテライトリーグでプレーしたセルヒオ・エスクデロ(56歳)。父はトップチームでの出場はなく現役を引退している(引退後に日本国籍を取得)。
そんなJリーグの歴史のなかで着実に増えてきた父子鷹に、今季は新たな歴史が刻まれる。それがJ2のレノファ山口に今季から入団したFW新保海鈴(18歳)だ。
母はモデルのMALIA。父はJ2の松本山雅でキャプテンを務める元日本代表の田中隼磨(38歳)。両親の離婚後は母のもとで育ってきた新保と、父親の田中が同じフィールドに立つことになれば、J史上初の選手同士での父子対決となる。
ちなみに東京ヴェルディの佐藤優平(30歳)は、2014年12月から2017年3月までMALIAと結婚していた。新保の12歳から14歳の多感な時期に継父であった佐藤との父子対決にも注目が集まる。