就任早々、新料金プランの発表会見に臨む井伊基之社長(撮影:大澤誠)

「ドコモは若い世代に弱かった。10年後、20年後に顧客の中心となる20代の客を取り戻さないといけない。今負けているとずっと負けたまま。後発なので他社よりも競争力のある価格にした」

データ利用量20GB(ギガバイト)で月額2980円――。12月3日、NTTドコモはこれまでの価格帯を大きく下回る新たな通信料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表した。提供開始は2021年3月で、業界最安値の水準だ。

この2日前に就任したばかりの井伊基之新社長は会見で、冒頭のように新プランの狙いを語った。菅政権の携帯料金値下げの要請を受け、KDDIやソフトバンクに続いてようやくドコモも“回答”を示したという面もある。

対抗プランの相次ぐ投入は必至

これに先立つ10月末には、KDDIとソフトバンクがそれぞれのサブブランド「UQモバイル」「ワイモバイル」で20GB・4000円前後の新プランを発表している。

ただ、ドコモは国内通話かけ放題のオプション(1000円)をつけても、これらを下回る価格を提示した。同じく2980円(先着300万人は初年度無料)のプランを展開する楽天モバイルは、自社の回線エリアであれば通話・データ量とも無制限だが、基地局の整備が終わっていないエリアはKDDIの回線を間借りしており、データ容量は月5GBまでだ。

今回の料金発表翌日の12月4日には、MVNO(仮想移動体通信事業者)の日本通信が16GBで月額1980円の「ドコモへの対抗プラン」を12月10日に開始すると発表した。ドコモの新料金プランの開始日(2021年3月)から自動的に20GBに増量するという。通信大手はMVNOに回線を卸し接続料を徴収しているが、今後これが引き下がることを受け、対抗プランはまだまだ広がりそうだ。

ドコモはアハモについて、あくまでもドコモブランドの新料金プランであり、サブブランドではないことを強調した。これについて井伊社長は、「ブランドはお客さんが価値を決めるもの。キャリア側がこれがメインで、これがサブ、という考え方ではない。あくまで20代の方々のためのメインプランだ」と説明する。

メインブランドとドコモが言い張るのは、武田良太総務相が11月中旬に通信各社に対してメインブランドでの値下げを強く要請し始めたためともみられる。武田総務相が記者会見で「多くの利用者が契約しているメインブランドで新たなプランがまったく発表されていない。いろいろなプランができた、あとは利用者次第、というのはあまりにも不親切ではないか」と述べていたからだ。

しかし、ドコモがもともとアハモを別ブランドとして検討していたと見て取れる点はいくつもある。例えば、プロモーション映像には「プランはたったひとつ」「ドコモの通信回線」といった文言が登場する。ドコモの新プランであるのに「たったひとつ」と表現し、わざわざ「ドコモの通信回線」を使っていることを強調している点は不自然だ。

既存のドコモユーザーがアハモに移行する場合でも、他社のユーザーと同様の乗り換え手続きが必要になったり、ドコモの利用年数がリセットされたりするなど、通常の契約変更とは異なる部分が多い。にもかかわらず、別ブランドではなく「新プラン」として打ち出すのは、既存のドコモユーザーの混乱を招きかねない。

純増契約数で大きく見劣り

また会見のプレゼンテーション資料の画像では、スマートフォンの電波強度表示の横にあるキャリア名が「ahamo」となっていたことから、ドコモの他のプランと異なるSIMカードになる可能性もある。これについて田畑智也・料金企画室長は、「SIMの扱いをどうするかは検討中」と説明する。

価格で攻めた背景には、ドコモの「一人負け」となっている現実がある。通信各社は四半期ごとに契約数を公表しているが、ドコモの通信契約数は2020年1〜3月期以降、前年同期比で3四半期連続で減少した。減少幅は拡大の一途をたどり、直近の7〜9月期は約58万件減った。一方、ソフトバンクは大きく伸ばし同期間の契約数は172万件増えた。KDDIもauの減少をUQが補い、純増を維持している。

ソフトバンクの強さの裏には、ワイモバイルの存在がある。2015年にソフトバンクモバイル(当時)が吸収合併して以来、マルチブランド戦略で先行し若年層を中心にドコモやauから顧客を取り込みつつ、主力のソフトバンクブランドへの誘引を進めた。その結果、ソフトバンクは「LINEモバイル」も含め、展開する3ブランドすべてで契約数を伸ばし続けている。


若者を意識した新料金プランを発表したドコモだが、値下げはこれで終わらない(撮影:大澤誠)

これを追ったのがKDDIで、2020年10月にUQモバイルを統合。auの店舗でもUQを提案できるようになったり、転出手数料がなくなったりしたことで、同月のUQからauへの送客数は前年同月比3.5倍となった。「ソフトバンクの伸びにはワイモバイルからのアップセル(高価格帯プランへの送客)が相当効いている。われわれも同じことを狙っている」(KDDI幹部)。

ドコモの井伊社長は会見で高価格帯のプランへの送客などについて言及しなかったが、当然同社も低価格プランで若年層を囲い込み、将来的に5G需要や家族割などをテコに大容量プランへの誘引を進めるだろう。

値下げ影響をどう補うのか

さらにドコモは既存の大容量プラン「ギガホ」や従量制プラン「ギガライト」でも値下げを検討していることを明らかにした。12月中にも詳細を発表する。通信量の少ない顧客向けには、MVNOと連携したプランも検討するという。すべての価格帯で値下げを進める見込みだ。アハモを皮切りにドコモの“価格破壊”が進めば、顧客を奪われまいとする通信各社は戦略の練り直しを迫られそうだ。

攻勢に打って出るものの、値下げは大きな減収要因となる。井伊社長は「(収益面で通信業界の)3番手からトップに返り咲きたい。料金を下げれば通信料収入は減るが、非通信の付加価値サービスでどう埋めるかを考えるのが経営者としての責任。減収を宣言したわけじゃない」と話す。今後は料金だけでなくサービス面でも差別化できるかが焦点となる。