Nikon Z 5はコスパ抜群のミラーレス! パフォーマンスとメリットをライブ撮影でチェック

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2020年も残すところ約1ヵ月、今年はミラーレスカメラにおいて、革新・進化・バリエーションなど開発方向性が強まり、各社の本気度が高まった年だったように思う。

一眼レフと構造が異なるミラーレスカメラの特徴は、イメージセンサーの映像をそのまま背面液晶やEVF(電子ビューファインダー)に投映できることにある。一眼レフカメラの場合は、被写体を確認するための光学ファインダーと、撮影するためのイメージセンサーを特定の機能搭載機を除いて同時に利用することができないため、撮影後にやっと明るさや色合いが確認できるという仕組みだ。

つまりミラ−レスカメラの場合、撮影をする前に実際の明るさや色合いといった仕上がりを確認できるという強みを持っている。これは上級者だけではなく、初心でも扱いやすいというメリットでもある。
また、スマートフォンでの撮影に慣れたユーザーなら、背面液晶での撮影に躊躇することなくすぐに使いこなせるだろう。

一眼レフカメラのオートフォーカスは、独自の位相差センサーの開発が必要であるため、動体予測や高速化するためにはコストが掛かる。そのためハイエンド機と、低価格のエントリー機ではコスト分の性能差が付いている状態だ。

一方、ミラーレスカメラの場合は、イメージセンサーの性能向上と、画像処理エンジンの高速化によって高精度な画像認識や動き予測ができるようになり、オートフォーカス性能が格段に進化している。

コスト面はイメージセンサーの性能次第ということもあるが、ハイエンド機とエントリー機の性能差は一眼レフカメラほどない。逆に、数世代前のハイエンド機より、最新のエントリー機の方が高性能、なんてことも起きているのである。

乱暴な言い方をすると、新旧で比較すると価格差やクラスの差はなくなり、新しいものほどより良くなっているというのが、ミラーレスカメラの世界と言えるだろう。

以前、ニコンのフルサイズイメージセンサーを搭載した「Nikon Z 5」の記事において、エントリー層からさらに上の層にも刺さるカメラであることを紹介した。
今回は、さらに深掘りして、AF性能や連写、連写枚数に余裕があるハイエンド機で撮影することが当たり前となりつつあるライブ撮影にZ 5を持ち込んで、どのように撮れるのか、それをレポートしてみたいと思う。

使用した機材は、Z 5と交換レンズとしてプロ仕様の「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」(以下、Z 24-70/2.8 S)、「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」(以下、Z 70-200/2.8 VR S)を用意した。2時間弱のライブ撮影以外にリハーサルの撮影なども行うことを想定して、予備バッテリー(EN-EL15b)も2個用意している。


大口径標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」



大口径望遠ズームレンズ「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」


ライブの主役は楽器奏者とヴォーカルで構成するガールズユニット「C;ON(シーオン)」。
2020年10月17日に川崎の「CLUB CITTA'(クラブチッタ)」で行われたワンマンライブに、Z 5で挑んだ。




広いステージでのライブと言うこともあり、オープニングではシーオンの5人に加えて30名のダンサーとによる華やかなコラボレーションが行われた。また、サプライズとしてピアノ担当の新メンバーお披露目があり、今後は6人体制で活動することを発表、さらに2021年2月6日に恵比寿LIQUIDROOMでワンマンライブを開催することを発表した。

さて、Z 5に話を戻そう。有効画素数2432万画素のフルサイズイメージセンサーは、ISO 100〜51200の感度設定が可能だ。今回、F2.8通しの明るいズームレンズを使用しているが、ダンスなど激しい動きにも対応できるようにシャッタースピードを1/250秒以上に設定した。このため必然的に高感度を使用する機会が増えると予想している。

高感度撮影では上限設定が鍵を握るのだが、Z 5は最大ISO51200に設定できるので、その点は安心だ。
通常の撮影ではそこまで高いISO感度が必要となることは少ないと思うが、設定できる/できないとでは、撮影の幅が大きく違ってくる。

Z 5のオートフォーカスでは、画面の周辺までをカバーする273点のフォーカスポイントがあるため、構図の自由度が高く、それがコストパフォーマンスの良さとなっている。さらに顔認識AFや瞳認識AFなど便利な機能も搭載されている。

Z 5の連写速度は秒間4.5コマと、最新のカメラとしては高速連写が苦手な部類である。撮影の記録形式はRAWで行ったが、ディスプレイに表示される撮影可能なバッファは16枚と心もとない印象を受けた。こうしたドライブモードや記録バッファがハイエンド機との違いでもあると言える。

しかし秒間4.5コマの連写速度ということもあり、連写中にSDカードへの書き込みが次々に完了していくため、余裕で16枚以上の撮影が可能であった。体感としては20〜30枚は撮影できているように感じた。

撮影設定は、ISO感度の確認もかねてシャッタースピード優先オートで、シャッタースピードをひとまず1/250秒に設定した。背景が暗いこともあり、オーバー気味に撮影されるシーンが多いく露出補正を適宜行うなどして対応している。




Z 24-70/2.8 Sのワイド端24mmで撮影。広角レンズだが落ち着きのある画となった。さらにライブ撮影ならではの迫力を出すためには、Z 24-70/2.8 Sのような標準ズームレンズではなく強烈なパースが付く超広角レンズを使用したいところだ。




同じくZ 24-70/2.8 Sの望遠端70mmでの撮影は、立体感があるクリアな画が撮影できた。照明が明るいこともあり、ISO感度は250であった。




こちらは同じ70mmだがZ 70-200/2.8 VR S。ISO感度は450、輝度ノイズが少し見られるが、ノイズリダクションで十分補正できるレベルである。




そして望遠端の200mmでの撮影。
AFに関してだが顔認識AFが動作しているため、手前のマイクにピントが行かずしっかりと顔、そして目にピントが合っている。一眼レフカメラでは、AFエリアが中央に集まっており中央以外にピント合わせをするためにはAFロックをするなど一手間必要だ。また、さらに一手間掛けてAFポイントで細かく指定してもAFポイントが大きいため手前のマイクにピントが合ってしまうこともある。こうしたシーンでは顔認識・瞳認識AFがあることがミラーレスカメラのメリットであると感じた。




こうした管楽器など大きな被写体が手前にある場合は、ミラーレスカメラにおいてもワイドエリア、オートエリアなど広い範囲を対象に自動でピントを合わせるフォーカスモードでは、近くのものにピントを合わせてしまうのだが、顔認識が働いているおかげで面倒な設定なしで構図を決めて撮影することができた。




こうしたコールアンドレスポンスの決定的なシーンでも、一々フォーカスポイントを左上に持って行くことなく、顔認識・瞳認識AFがピタッとピント合わせを行ってくれる。エントリー機なのでAFの性能を心配していたのだが、このように簡単に撮影できることに驚いた。




横顔でもしっかりと顔を追ってくれているので、髪の毛の一本一本、汗の一粒までしっかりと描写するZ 70-200/2.8 VR Sの解像度の高さを活かすことができた。







Z 5とZ 70-200/2.8 VR Sの組み合わせは、Z 5のボディが小さいため扱いづらいかもしれないと思ったのだが、グリップがしっかりしていることと、そして一眼レフカメラのシステムよりトータル重量が軽いため長時間の撮影でも辛いと感じることはなかった。

顔認識で複数の候補がある場合、コントローラーで選ぶことができる。これがUIとして分かりやすく使いやすい。







顔さえ認識できれば、手前にどんなモノがあろうともピントが合う、これでZ 5とライブ撮影との相性の良さを感じることができた。







過去にニコンの「D1X」、「D2X」、「D300」、「D700」、「D610」など一眼レフカメラも使ってきたが、強烈な光源が画面内にあり、輝度差が大きい場合オートフォーカスが上手く作動しないことがあった。




そうしたシチュエーションを思いだしながら、気を付けるようにしていたが、Z 5では強い光源があっても問題なくAFが動作した。




顔認識が苦手なシチュエーションもある。
目や輪郭が髪で見えなくなるシチュエーションでは、AFエリアを指定して撮影する必要があった。
こうした場合は、機能を覚えて臨機応変に対応したいところである。

連写時に被写体を追い続けるAF-Cモードだが、顔認識のタイミングのズレなのか全くどこにもピントが合わないこともあった。




写真の一部を拡大したものだが、シャッターを切った1カット目はピントがしっかり合っているのだが、2カット目はピントが抜けてしまっている。枚数を撮影すれば、こうした失敗カットも増えていくものである。

続いて、照明の演出によって、暗くなるシーンがある。そうした暗所での撮影において、AFが思ったような動作をしないこともあった。




この写真は、RAWデータから明るさを補正した状態での連続10カットである。
最初の2カットはピントが手前、続く2カットが被写体を抜けて奥にピントがあっている。そして4カット目で復帰して以降、ピントが合っていた。暗所でのAFの初動が心配となることがあった。

今回、慣れていないカメラをいきなり実戦投入ということで想定外の動作もあったが、最新のカメラは、使う人を選ばない懐の広さがあり、さらに特性を理解していけばもっと使いこなしていけそうである。

今回の撮影では予備バッテリーを使うことなく、バッテリー1本でテストカットを含め3000枚ほど撮影することができ、使いやすさと画質を含めてZ 5のコストパフォーマンスの高さを実感することができた。
これからフルサイズミラーレスカメラ選びで悩んでいるユーザーは、Z 5と上位機種との価格差分を交換レンズに投資して撮影を楽しんでみてはどうだろうか。

今回使用したレンズ(Z 24-70/2.8 S、Z 70-200/2.8 VR S)は、2本合わせると価格は約60万円!ともなるので、なかなか手を出しづらいのは確かだ。




レンズの明るさは異なるが、同じ撮影領域をカバーするズームレンズ「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」(夷か、Z 24-200/4-6.3 VR)が2020年7月に発売されている。
こちらは12万円弱という価格帯なので、イベントでの撮影や観光地での撮影など、このレンズ一本あれば様々なシチュエーションに対応できる。




広角端の24mmでは多くの情報を写し込むことが得意だ。



70mmぐらいになると安定感のある自然な画となる。標準ズームレンズは、ここまでしか撮影できない。望遠ズームレンズでは、同じ場所(動かずに)でここより広い範囲を写すことができない。



望遠端の200mmは、目視できない距離のものを大写しにすることができる。絞り開放(F6.3)では少し甘い描写となるようだ。

望遠端200mmでのボケ具合について絞りを変えてチェックしてみよう。




開放F値は6.3だが、流石にフルサイズの200mmだけあって遠くが溶けたようなボケとなった




F16まで絞ったところ、手前から2本目の柵の輪郭が見えるようになった。奥の方のディテールもなんとなく分かるような印象だ。




F36まで絞ると、柵の一本一本が分かるようになった。

このように望遠レンズならではのボケ効果をコントロールできるのは、フルサイズイメージセンサーを搭載するミラーレスカメラの特徴と言える。スマートフォンのポートレートモードとは異なり、被写体の輪郭が自然に描写される真のポートレートモードが楽しめるのである。




価格や大きさ、重さが異なる3本のレンズだが、今回ライブ撮影をして感じたのは、
Z 70-200/2.8 VR Sは買って損はない最高のレンズであると言うこと。
日常での利用シーンが多い広角、標準域に関しては、いつかはZ 24-70/2.8 Sという選択肢を視野に入れつつ、持ち歩きを考えて単焦点レンズで楽しむということも良いのではないかと思う。

とはいえ、一本でなんでも撮りたいというニーズに応えるようZ 24-200/4-6.3 VRが選べるようになったのは大きい。動画撮影にもこうした高倍率ズームレンズは扱いやすいのでオススメだ。

撮影協力:C;ON(シーオン)https://twitter.com/c_on_official


執筆  mi2_303