U-19日本代表候補のアタッカーの面々。左上から時計回りに、櫻川ソロモン、斉藤光毅、染野唯月、西川潤。写真:田中研治(櫻川、斉藤、西川)、松尾祐希(染野)

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 ビジャレアルの久保建英が10月22日のヨーロッパリーグ1節・シバススポル戦で1ゴール・2アシストの活躍を見せた。そんな彼に呼応するように同年代の選手たちがJ1の舞台で輝きを放っている。久保と同じ2001年生まれの選手が軸となるU-19日本代表にとっても、新たな才能の台頭はプラスの材料。来年初旬に延期されたU-19アジア選手権と同年のU-20ワールドカップを目指す上で、彼らの成長は実に頼もしい。特に目覚しいのはFW陣の活躍で、影山雅永監督も前線の組み合わせに良い意味で頭を悩ませている。

 現在、U-19日本代表は4-4-2のシステムを採用しており、FWのレギュラー枠はふたつしかない。今年7月以降に開催された5回の合宿(7月下旬の活動は中止)で招集されたFWは計8人だ。

 個人技に秀でた斉藤光毅、190cmの高さを持つ櫻川ソロモン、ポストプレーが武器の染野唯月、ハードワークを厭わない大森真吾、左足とアイデアで勝負する西川潤、裏への抜け出しと高さを併せ持つ藤尾翔太、動き出しの良さが光る晴山岬、抜群の得点センスを持つ唐山翔自となっており、個性豊かな面々が揃う。昨年12月の福島合宿に参加し、スピードで勝負する若月大和も含めた9人が現状の候補となるが、この中で今シーズン、誰が結果を残しているのか。数字にすると下記のようなデータとなる。

斉藤光毅(横浜FC) J1/22試合(1249分)・3得点
櫻川ソロモン(千葉) J2/13試合(438分)・2得点
大森真吾(順天堂大) 関東大学1部/13試合(921分)・1得点
染野唯月(鹿島) J1/12試合(346分)・0得点
西川潤(C大阪) J1/11試合(144分)・1得点
藤尾翔太(C大阪) J1/4試合(23分)・1得点 J3/16試合(1281分)・7得点
晴山岬(町田) J2/1試合(45分)・0得点
若月大和(シオン) スイス3部/3試合(75分)・0得点
※セカンドチームでの出場記録
唐山翔自(G大阪) J1/0試合・0得点 J3/20試合(1799分)・10得点

 カテゴリーが違うため、各選手を同列に並べて考えることはできない。ただ、多くの選手が出場機会を得られているのはポジティブな材料だ。中でも目立つのは斉藤の成績。22試合のうち13試合で先発出場しており、プレー時間もダントツで長い。直近ではベンチスタートのゲームも少なくないが、前回のU-20ワールドカップにも飛び級で出場した実力は抜きん出ている。現状ではエースに最も近い存在と言えるだろう。

【布陣図】U-19日本代表、気になる各ポジションのメンバー構成は?
 一方で、その他の選手は横一線だ。

「ポジティブに捉えている一方で、5人の交代枠がある中で十分な出場時間を確保できているのか。そこは別問題。過密日程もあってトレーニングマッチができていない。トータルの出場時間で考えた時に、試合を重ねている選手がどれだけいるのかは気になる」(影山監督)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で過密日程となり、多くの若手たちがルーキーイヤーとしては上出来と言える出場機会を得た。その中で染野や櫻川は可能性を感じさせる働きを見せており、決して悪い数字ではないだろう。だが、指揮官が懸念するようにコンスタントに出場時間を増やせていないのも事実だ。直近のゲームではベンチ外になる場合も多く、さらなる奮起が求められる。

 斉藤とともに昨年5月のU-20ワールドカップに出場し、同年の秋のU-17ワールドカップでエースとして活躍した西川もプロの壁にぶつかっており、出場時間を伸ばせていないひとり。チームでは右サイドハーフで起用されている中で、戦術面や守備面で適応できずに苦労している。10月24日の24節・浦和戦では最前線で起用されたが、本来のポジションで活躍して調子を取り戻したい。

 同じくU-17ワールドカップで活躍した若月は唯一の海外組としてスイスリーグに挑戦しているが、セカンドチームでのプレーが続く。U-19代表合宿への参加も難しく、まずは所属チームでトップチーム入りを果たしてアピールをしたい。9月5日の14節・浦和戦でJ1初ゴールを決めた藤尾、昨季の高校サッカー選手権で活躍した晴山は出場機会を伸ばせておらず、まずは所属チームで出番を掴みたいところだ。

 逆に日増しに存在感を高めているのが、U-17ワールドカップ出場組の唐山。J1で出番を得られていないものの、J3では驚異的な決定力を発揮。すでに10ゴールを決めており、8月12日のルヴァンカップ3節・湘南戦ではトップチーム初ゴールを含む2得点の大活躍を見せた。類い稀な得点感覚は代表でも大きな力になるはずだ。
 
 10月25日から始まった今年5回目のU-19代表候補合宿には、斉藤、西川、藤尾、大森が招集された(唐山はチーム事情で辞退、染野は負傷で初日に離脱。追加招集の大森は2日目から参加)。来年初旬のU-19アジア選手権に向け、影山監督は言う。

「FWに関しては得点が取れる選手が一番。それぞれの武器を持っていて、どう組み合わせていくかが僕の仕事。選手たちには所属チームで特徴を出してもらいたいし、代表合宿でも思い切って良さを発揮する努力をしてほしい」

 選考基準はシンプル。得点を奪い、自分の良さを出すことだ。U-19日本代表のレギュラー争いを勝ち抜くのは誰か。大会が延期になったことで今まで呼ばれていないメンバーにもチャンスはあり、代表に名を連ねたからといって何も保証はされていない。若き点取り屋たちの激しいポジション争いに今後も注目だ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)