ヨーロッパ南天天文台(ESO)が2020年10月12日に、ブラックホールに近づいた天体が引きちぎられながら崩壊する潮汐破壊現象を観測したとする論文を、イメージ映像と共に公開しました。

outflow powers the optical rise of the nearby, fast-evolving tidal disruption event AT2019qiz | Monthly Notices of the Royal Astronomical Society | Oxford Academic

https://academic.oup.com/mnras/article/499/1/482/5920142

Death by Spaghettification: ESO Telescopes Record Last Moments of Star Devoured by a Black Hole | ESO

https://www.eso.org/public/news/eso2018/

ESOは10月12日に、既知の潮汐破壊現象としては最も地球から近い「AT2019qiz」を2019年9月に発見したことを発表しました。エリダヌス座の渦巻銀河で見つかったAT2019qizは、地球から近いだけでなく発生してから間もないため破片やちりの発生が少なく、非常にはっきりと観測することができたとのこと。

ブラックホールに天体が近づいたことより潮汐破壊現象が始まると、天体はあまりにも強力な重力によって引き延ばされ、スパゲッティのように細長くなってしまうスパゲッティ化現象が発生します。

ESOは、6カ月間にわたりAT2019qizを観測して得られたスパゲッティ化現象の様子を、イメージ映像としてTwitterやYouTubeで公開しています。



オレンジ色の球体は、ちょうど太陽と同じくらいの質量を持つ恒星です。



恒星が100万倍以上の質量を持つブラックホールに近づいたことで、スパゲッティ化現象が発生。恒星が細長く引き延ばされて、ブラックホールに飲み込まれていきます。



恒星からブラックホールに飲み込まれる物質の速度は、最高で秒速1万キロメートルにも達するとのこと。



恒星の質量の半分はブラックホールに飲み込まれ、もう半分は外部に向けて放出されたと見られています。



スパゲッティ化現象が発生すると、爆発により強力な電磁放射が発生すると考えられています。しかし、ブラックホールに飲み込まれた天体の破片やちりが、さながらカーテンのように光などを遮ってしまうため、これまではっきりと潮汐破壊現象を観測することはできませんでした。

ESOの研究チームは、「ブラックホールが星を食い荒らすと、視界を遮る強力な爆発を発生します。今回、私たちは潮汐破壊現象を早期に発見し、ブラックホールが物質を猛スピードで放出し始めた瞬間を捉えたので、ブラックホールが実際にちりや破片のカーテンをまとうのを観測することができました」とコメントしました。

今回の発見は、超巨大ブラックホールと、極大重力環境にある物質がどのように振る舞うかや、将来観測される潮汐破壊現象を理解するために役立つとされています。