Jリーグが再開されてから、関係者は覚悟していたに違いない。そうだとしても、やはり衝撃はある。

 7月26日のサンフレッチェ広島対名古屋グランパス戦が、当日に中止となった。名古屋の選手と関係者から、新型コロナウイルスの感染者が出たからだった。翌27日には、アビスパ福岡のスタッフの感染も発表された。

 感染予防を徹底して不要不急の外出を控えても、ウイルスは私たちに忍び寄ってくる。選手も例外ではない。

 リーグ戦が再開されてから、各チームは公共交通機関やバスを使って移動をしている。航空機の機内は、空気が約3分で入れ替わる。新幹線の車内は6分から8分と言われる。どちらも換気の良い空間だが、チーム以外の利用客との接触がまったくないわけではない。いまさら指摘するまでもなく、移動そのものでリスクを背負う。

 バスでの移動については、一台当たりの乗車人数を減らしている。2時間以上の移動となる場合は、複数台での分譲が義務づけられている。

 Jリーグが随時更新しているガイドラインには、移動だけでなく宿泊についても事細かにチェック項目をあげている。宿泊は施設単位、またはフロア単位での貸し切りの検討を提案し、入口を含めてチーム専用の動線の確保も推奨している。連泊する場合の客室の清掃については、清掃しないことも感染予防の選択肢になる、としている。

 どれほど気をつけても、ウイルスは追いかけてくる。名古屋の選手の観戦は、新型コロナウイルスの恐ろしさを改めて我々に突きつけた。

 感染拡大は全国へ広がっている。人の往来も増えている。試合が中止に追い込まれることは、今回限りではないと考えるべきだ。

 今シーズンのリーグ戦の成立要件について、Jリーグは以下のように定めた。

 「年間予定総試合数の75パーセント以上が開催され、かつ当該リーグの全てのクラブについて年間予定総試合数の50パーセント以上が開催された場合に成立するものとする」

 J1の総試合数は1節9試合×34節の306試合で、その75パーセントは「229.5」になる。各クラブの総試合数の50パーセントは、34節の半分なので17試合だ。

 75パーセントの要件を満たすには、全チームが26節を消化することが条件になる。タイミングとしては、10月下旬から11月上旬になりそうだ。

 10月下旬から11月上旬に、新型コロナウイルスの感染拡大は収束しているだろうか。秋に第2波が確実に襲ってくる、と言われている。ウィズコロナでのリーグ戦開催となるのは確実で、いまよりもっと状況は厳しいかもしれない。

 26日に行なわれるはずだった広島対名古屋戦の代替日程は、28日現在で発表されていない。再開後のスケジュールには、すでにほとんどすき間がない。再調整は簡単ではないのだろう、感染者が出たことによる延期が増えれば、物理的に消化できない試合が発生してしまう可能性が生じてくる。

 これまで「地域リーグ」のような規模で対戦カードを組んできたJリーグは、8月からいつもの「全国リーグ」へ転換する。地域をまたいだ移動へ切り替えていくところで、感染者が出てしまった。何ともタイミングが悪い。

 感染者が出たチームとの対戦に抵抗感がある、というチームが出てきてもおかしくない。選手の感情を想像すれば、「とにかくやってください」とは言えないだろう。リーグ戦成立を阻害する要件が、増えてしまうことになる。Jリーグは難しいかじ取りが続いていく。