ただその分、メディアやファンの要求レベルが高く、自ずと若手が台頭する機会も限られてくる。ソシエダとの比較においてマドリーが懸念している点もまさにそこにあるが、現在順位は4位と来シーズンのチャンピオンズ・リーグの出場権獲得を視界に入れている。ソシエダがヨーロッパカップ戦の出場権を逃せば一気に本命に浮上する可能性もある。
 
 もちろん選択肢の一つとしてマジョルカ残留の線も完全に消えたわけではない。ただ2部に降格するとその時点で可能性は消滅。1部に残留できたとしても、来シーズン、チーム状況が劇的に変化するとは考えにくく、それがぬるま湯になって久保の成長にブレーキをかける要素になりかねない。久保自身は愛着を感じているが、魅力的な選択肢が他にある中、レンタル延長を選択する可能性は低い。

 久保の去就を考察するうえでもう一つ重要なファクターが、来シーズンの日程が変則的になることが決定的である点だ。新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、今シーズンのラ・リーガは来月下旬まで日程が組まれている。さらにマドリーが8月に予定されているCLで上位に進出すれば、オフがほぼない状態で来シーズンの開幕を迎える可能性すらある。

 久保自身は昨夏がそうだったようにトップチームのプレシーズンキャンプに帯同しながら去就を模索する希望を持っていたが、現状そうした時間的余裕は取れそうにない。
 
 最後にマドリーのトップチーム入りの可能性については、ほぼないと言っていいだろう。才能のある若手をベンチに置き続けるのならば積極的にレンタル修行に出すというのが近年クラブが採っている手法である。その方針に照らし合わせれば、伸び盛りで現状出場時間を確保できそうにない久保は、まさにその対象に該当する。

 久保には少なくとももう1年はレンタルに出すことがマドリーの考えであり、現時点で選択肢として提案する意向なのがレアル・ソシエダとミランの2クラブだ。

 去就の可能性を割合で表わすなら、このような感じになるだろう。

●マドリーのトップチーム入り【5%】
●他のチームにレンタル【75%】
 ・ソシエダ(40%)
 ・ミラン(10%)
 ・ラ・リーガの他のチーム(20%)
 ・他国リーグのミラン以外のチーム(5%)
マジョルカでレンタル延長【20%】
※1部残留の場合。2部降格の場合は0%。

文●セルヒオ・サントス(アス紙)
翻訳●下村正幸

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