5月末、インド北西部・ラジャスタン州に飛来したバッタの大群は、居住用マンションの屋上を隙間なく覆った

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東アフリカで発生したバッタの大群が中国に迫っている。数千キロの飛行能力があり日本も他人事ではない

5月末、インド北西部・ラジャスタン州に飛来したバッタの大群は、居住用マンションの屋上を隙間なく覆った

「忘れもしない5月25日の午前10時頃、私が取材で訪れていたインド・ジャイプルに奴らが来ました。無数の羽音が近づいてきたかと思うと、晴れた空が一瞬にして黒い雲に覆われた。町中の人が外に出て、プラスチックの容器を必死に叩いて音を出し、奴らを追い払おうとします。しかし、数が多すぎて効果はあまりない。住民たちと一緒に外に出たはいいが、ひとたび口を開けたら奴らが入ってくるんじゃないか、そんな恐怖を覚えながら、口を固く閉じ、ただただ過ぎ去るのをじっと待つしかありませんでした……」

 ニューヨークタイムズ紙のインド・ニューデリー支社に勤めるスハシーニ・ラジ記者は、おびただしい数のバッタと遭遇した日をそう回想する――。

 新型コロナウイルスの蔓延に苦しむ人類に、もう一つ未曾有の災厄が襲いかかる。「サバクトビバッタの大群」だ。

 農学・昆虫学を専門とする東京農業大学の足達太郎教授が解説する。

「本来サバクトビバッタは、1匹単位で生活する大人しい種です。しかし、一昨年から昨年にかけて、東アフリカで季節外れの大雨が降った影響で、バッタが大量発生した。すると、性質に変異が生じ、翅(はね)が長く獰猛で群れを作る種が生まれました。その種が長距離を大群で移動して、各地に被害を及ぼしているのです」

 過去70年で最大規模とされるバッタの大群は、生まれ故郷のアフリカを出発し、各地で農作物を食いつくしながら東進中。現在インドに到達した。中国政府は警戒を強め、ニュース番組は連日のように『4000億匹のバッタの大群がインド・パキスタン国境から中国に迫っている』と報道。中国農業科学院植物保護研究所の研究員は、6月中にバッタが飛来する可能性を示唆している。

 足達教授は話す。

「変異して群れるようになったバッタは、季節風に乗って飛ぶ。風がうまく吹けば、数千km飛ぶことも可能です。過去には、西アフリカからカリブ海諸島に到達したという記録もあります」

 当然、日本も他人事では済まされない。中国に侵入したバッタの大群が、黄砂を運ぶ風に乗って海に隔てられた2000kmをやすやすと越え、日本列島へと飛来することは十分にあり得るのだ。

今年の1月中旬頃、ケニアでサバクトビバッタが大量発生。サンブル国立保護区の災害対策チームもたじたじだ

PHOTO:アフロ