整備士のトレードマークといえば「カバーオール」、いわゆる「つなぎ」です。日々旅客機の整備にあたるJALの整備士の制服、一般的なものとはどのような点が違うのでしょうか。

汎用品とは大きく異なるJAL整備士の「つなぎ」

 整備士のトレードマークといえば、上下の衣服がつながりワンセットとなった「カバーオール」、いわゆる「つなぎ」です。

 ファッションメディアの「WORKERSTREND」によると、つなぎの起源は1800年代半ば、ゴールドラッシュ時代のアメリカ、カリフォルニア州にあるそうで、過酷な重労働となる金の採掘者たちの要望から広まったそです。

 つなぎには、その形から服が引っかかったりする事で生じるケガや、ほこりの進入などを防ぐことができるメリットがあることから、ありとあらゆる整備の現場や農業、酪農の現場などで広く着用されています。ただ航空会社の整備士が着ているつなぎは、汎用のものと比べ、現場にあわせた工夫がなされているようです。その工夫をJAL(日本航空)に聞きました。


2020年4月から施行されているJAL整備士の現行制服(2019年7月、伊藤真悟撮影)。

 JAL機の整備を担当する、JALエンジニアリングの整備士、五鬼上(ごきじょう)泰樹さんによると、つなぎは安全運航をサポートするのにも欠かせないもので、汎用品とは大きな違いがあると話します。

「たとえば現行の整備士制服には、静電気の帯電を防止するような機能が備わっています。飛行機には非常に精密なコンピューターが積まれており、万が一帯電したまま触ってしまうと、一瞬にしてダメになってしまう可能性もあるのです。そのためつなぎには、そういったことが起きないような工夫がされています」(JALエンジニアリング 羽田航空機整備センター機体点検整備部 五鬼上泰樹さん)

 帯電を防ぐためにはこのほか、そのための機能性を持たせたリストバンドをつけることもあるそうです。

ポケット類にも工夫 スポーツメーカー監修のJALのつなぎ

 五鬼上さんによると、整備士のなかで広く必携とされている工具、いわゆる「3種の神器」は「インスペクションミラー」「フラッシュライト」「ドライバー」といいます。こういった必携アイテムを常に持っていられるよう、制服であるつなぎにも工夫がされているとのことです。

「私たちの制服は、モノを落としにくいように作られており、ポケットが多いのが特徴です。また『どこに何を入れやすいか』といった角度まで計算されて作られています」(JALエンジニアリング 羽田航空機整備センター機体点検整備部 五鬼上泰樹さん)


質問に答えるJALエンジニアリング羽田航空機整備センター機体点検整備部 五鬼上泰樹さん。手元には「3種の神器」が(2020年6月、乗りものニュース編集部撮影)。

 このほか、夏の暑さのなか、冷房が完備されていない格納庫で作業できるよう熱を逃す工夫や、着用時にはストレッチ性を持たせながらも、洗濯時に伸び縮みしづらくするといった工夫が凝らされているそうです。

 なおJALグループでは、2020年4月からグループ全体の制服を刷新しています。整備士のつなぎは、スポーツ用品メーカーであるデサントジャパンによりデザインされたもので、グレーを基調に、袖に濃紺のライン、管理職には赤のラインがあしらわれているほか、スポーツウェアでつちかわれた機能性を生かしたものとのことです。