米国では、生活必需品を除く小売店の閉店が、あと数週間は続く見込みとなっている。それに伴い、各社のあいだで生き残りをかけて抜本的なコスト削減への取り組みが行われている。

3月第4週には多数の小売企業が一時帰休やレイオフを発表している。メイシーズ(Macy's)は3月30日に、13万人を超える社員の大半を一時帰休とすることを発表した。同社は対象となる社員の具体数については発表していないが「カスタマーにオンラインでサービスを提供し続けられるよう、デジタル事業や流通サポートセンター、コールセンターの一時帰休は少ない」とのことだ。コールズ(Kohl's)は、4月1日まで全社員の給与を支払うとしていたが、3月30日に小売と流通センター、企業社員の一時帰休を開始すると発表している。一方、サービスとしての小売を提供するスタートアップのベータ(b8ta)は、3月第4週に企業社員半数のレイオフと、小売全社員の一時帰休を行ったと発表した。

レイオフと一時帰休の違い

レイオフと一時帰休の実質的な違いはさほど多くない。いずれの場合も社員は企業から給与を受け取っていないため失業手当を申請できる。ただし雇用側は、一時帰休中の社員には医療給付などの福祉を提供できる。メイシーズやベータ、コールズは小売社員に引き続き医療給付を行うとしている。

これは一時帰休を解除したあとに再雇用できるように、社員となるべく良い関係を維持しておきたいという考えがあるからだ。ベル・ローグループ(Bell Law Group)の設立者ジョナサン・ベル氏は、現在の状況が解決したあとに新規に雇用して必要なスキルを習得させるよりも、現在の社員を再雇用しやすいのはレイオフではなく一時帰休だと指摘する。

「(一時帰休では)社員と雇い主という関係は維持される。一時帰休はいわば状況が改善すれば再雇用するという宣言なのだ」と、ベル氏は語る。

小売業界で進められているコスト削減の取り組みはそれだけではない。デジタル広告予算の削減や家主との家賃交渉、なかには支払い停止を要請している企業すらある。

各企業の判断における意味

米国企業の一時帰休やレイオフの判断からは、コロナウイルスの勢いが弱まり生活必需品を除く小売店の営業を再開したあとの事業継続の可否に関する各社の判断も読み取れる。たとえばサードラブ(THIRD LOVE)は、3月第4週にニューヨークで唯一展開している店舗の社員をレイオフしている。バージ(The Verge)が入手した同社CEOのハイジ・ザック氏のメールによれば、同社は「今後、同店舗を小売戦略に含める予定はない」という。

ベータの共同創業者兼CEOを務めるビドゥ・ノービー氏は、米DIGIDAYの姉妹サイトのモダン・リテール(Modern Retail)に対し、社員が引き続き医療給付を受け、同社が提供した株式の所有権を継続できるように一時帰休を決断したと語っている。同氏がTwitterでベータの小売社員に送ったメッセージには「ベータが営業を再開し、将来にわたって雇用を継続して、最終的に成長していくためには独自の手段が必要だった」と書かれている。

ベル氏は一時帰休中の社員は有給休暇を利用できるほか、雇用関係も維持されると述べている。たとえば社員が雇用側と非競争契約を結んでいた場合、一時帰休中もこの契約は有効となるが、仕事が必要な社員に対してこれを解除するという選択も可能だ。

最後にベル氏は一時帰休を選択した企業はメールにアクセスできないようにすべきだと指摘している。メールを見られれば一時帰休中も業務をしていたとも解釈でき、法的問題が生じるおそれがあるためだ。

見通しが立たないことが課題

一時帰休の発表には、事業再開後の再雇用の見込みなど、楽観的な内容が多く見られる。だが、もし予定よりも事業再開が長引けば、一時帰休からレイオフへと切り替わるおそれもありそうだ。

米商務省によると、コロナウイルスが米国で感染拡大しはじめた2月時点で米国における小売の売り上げは0.5%減となっている。だが、3月の爆発的感染に伴い、売り上げはさらに減少するだろう。生活必需品の小売企業に分類されるターゲット(Target)は、3月の売り上げは2割増と発表している。一方メイシーズは、「営業停止によって大半の売り上げ」を失ったための一時帰休を発表した。3月に行われた米DIGIDAYの調査によれば、4割の小売企業とブランドが、今年中のレイオフを考えているという。

小売コンサルティング企業ルーズ・スレッド(Loose Threads)の創業者兼主席アナリストであるリッチー・シーゲル氏は「現在の状況における最大の問題は、いつ改善するのかについて信頼できる判断が存在しないことだ。数日や数週間ならともかく、それ以上の長期にわたる予測は極めて難しい」と述べている。「多くの小売企業が2週間の営業停止を発表したが、それは3月末までという話だった。だが、そのあいだにこの状況が数カ月に渡って続くことは確実になったといえるだろう」。

Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)