(写真左から)江頭2:50、加藤紗里、宮迫博之、藤田ニコル

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 お笑いコンビ・EXITの兼近大樹が2020年1月30日に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日系)に出演し、テレビ番組の収録について「信じられないくらい座らされて、訳わかんない人たちの話とか聞いて……」「収録時間バカみたいに長ぇ」「正直、今、いちばんYouTubeが楽しくなっちゃって」と矢継ぎ早にボヤいたことが当時、話題に。

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 ネット上では「天狗になっている」「本性が出た」という声が多数あがるなど、マイナスにとらえた視聴者も少なくない様子だった。

さんまやケンコバも興味津々!?

 今や“お笑い第7世代(主に'10年代後半から活躍した芸人らを指す)”にとってYouTubeは、テレビではなかなか難しい「自分らしさ」を表現しながらファンを増やすための、貴重な場でもある。しかし、「YouTubeでも注目され、再生回数を伸ばすことができているのは、テレビなどでの知名度があってこそ」と、兼近の発言に気分を害したテレビ関係者も多かったようだ。

 だが、数々の芸能人がYouTubeデビューを飾るか、もしくは興味を持っていることは事実。今年1月29日にYouTubeチャンネルを開設し、闇営業騒動による活動休止からの再出発を果たした、雨上がり決死隊の宮迫博之などは特に注目された。

 2月に入ってからも、ナインティナインの岡村隆史は自身のラジオ番組で「まだ、ちょっとわからへんし」とYouTubeの仕組みを理解できないことを明かしつつも「宮迫さんのことも(厳しく)言うたばっかりやから、いきなり(自分が)YouTube始めたら、また怒られるでしょうから始めないんですけれども」「みんなやってるから、怖くなってくるよね。やれへんかったら、時代遅れというか」と、流行を気にしながらもすぐには参入できない理由を語った。

 ケンドーコバヤシもラジオ番組で「宮迫さんすごいねんで、もうだって(チャンネル登録者数)、何十万人や」「大金持ちになるんちゃう」などと、興味を示していた。

 一方で、大御所・明石家さんまは番組で「敵やから。(YouTubeを見る時間があれば)テレビを見てほしい」と発言。地上波を中心に活躍し、時代を築いてきた世代にとっては「受け入れられない」と、批判的な姿勢を貫く者もいる。

 2月15日に放送された『メレンゲの気持ち』(日本テレビ系)では「一般人が副業として行うYouTube」という特集を放送。ゲストの北斗晶は当初「アップするのはブログだけで精いっぱい。編集とか字を入れたりとかは(難しい)」と語っていたものの、スマホひとつで撮影から編集まで簡単にできることを知り、大きな関心を抱いていた。

 '18年に『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)で優勝後、勢いづいているお笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹は昨年末、YouTubeの日テレ公式チャンネルに、『阿佐ヶ谷姉妹のモーニングルーティン』を公開。これは、初の冠番組『阿佐ヶ谷姉妹のおばさんだってできるわよ』(日本テレビ系)の中で「おばさんだってYoutuberになれる!」ということを検証する目的で作成されたものであったが、投稿からわずか5日で再生回数が120万回を超え、リアルすぎるその日常が話題となった(現在は非公開)。

 阿佐ヶ谷姉妹のように、一見YouTubeとは縁遠そうな芸能人が成功するなど、その「成功・失敗」が読みにくいYouTuberへの道のり。ネット動画デビューしてうまくいく芸能人、辛酸をなめる芸能人の違いは、どこにあるのか検証してみた。

【失敗する芸能人の特徴1:続けられない】

 前述の『メレンゲの気持ち』によると、YouTubeで収益を得る条件は、(1)チャンネル登録者数が1000人以上、(2)総再生時間が1年で4000時間(その他条件あり)と伝え、「登録者数1万2000人のYouTuberが月10万円の利益を得るには週に1本、10分の動画を公開しなければ厳しい」としていた。そのため、YouTubeで稼ぎたいと考えるのであれば、コンスタントに動画を公開し続ける必要がある。

 さまざまな芸能人がYouTube界に進出しているものの、続けることができずに数本公開しただけで辞めてしまうことも珍しくない。ブログなどとは異なり、動画にはコンテンツの企画・準備・画面を持たせるための話術やパフォーマンスなど、多くのスキルを求められる。それだけ、「続ける」ことへのハードルは高いのかもしれない。

【失敗する芸能人の特徴2:好感度が低い】

 YouTubeでは、テレビなどでは見えにくい「好感度」が如実(にょじつ)に現れてしまう。その尺度のひとつが、再生数。そして、もうひとつは「高く評価」するか「低く評価」するかをクリックする、投票制度である。よって、動画の内容だけで判断されるのではなく、「何をやっても叩きたくなるから」などという理由で低評価がたくさんついてしまう人も存在する。

 例えば、お騒がせタレントの加藤紗里(チャンネル登録者数・1.86万人 ※数字は3月3日現在、以下同)は、そうした傾向が一目瞭然。今年1月下旬に公開した『高級店街でわらしべ長者』は、高評価が298件、低評価が1063件。『加藤紗里 あの噂のUSJデートに密着』では高評価が280件、低評価は実に1675件と、その他の動画を含め、「低く評価」のほうが圧倒的に多いのだ。

 また、離婚や妊娠を発表した“炎上モノ”の動画は50万再生を突破しているものの、それ以外の動画は好感度の低さからか、再生回数は数万止まりのものが多く、応援してくれるファンの数を増やせているとは言いがたい。

【失敗する芸能人の特徴3:コンテンツ自体が弱い】

 宮迫の公式チャンネル『宮迫ですッ!【宮迫博之】』は、登録者数 62.4万人で、投稿動画に対しては高い評価が低い評価を大きく上回っているものの、コメント欄やネット上では「企画がつまらない」「スタッフにやらされている」といった中傷も目立つ。

 注目が集まった初投稿の謝罪動画(再生回数493万回)や、ヒカルやホリエモン、DJ社長といった著名人と絡む内容、妻との電話など「他人とコラボ」する企画は軒並み50万〜300万超えの再生回数を記録していいるものの、内容にはゲスト頼みな一面が見られた。

 2月中旬以降に公開している、コラボではない宮迫単体の企画『【予想外】トイレットペーパーで服、作ったらおしゃれになる説』(再生回数18万回)、『大河ドラマで死にかけた話【宮迫博之の一人喋り】』(同20万回)、『実家で起きた、本当に怖い話【宮迫博之の一人喋り】』(同15万回)などは案の定、再生回数が伸び悩んでいる。今後、支持率を上げて生き残っていくためには、宮迫個人の人気及びコンテンツ力の底上げが課題だろう。

 続いては、YouTubeで才能が開花した人々の特徴を考えてみたい。

【成功する芸能人の特徴1:テレビとの差別化】

 ここ最近、YouTubeでの成功がもっとも話題になった芸能人といえば、ピン芸人の江頭2:50ではないか。1月30日にチャンネルを開設したのち、現在の登録者数は約180万人と、すでに宮迫に3倍近くもの差をつけている。彼の場合は地上波では放送が厳しい、際どく身体を張った企画が「テレビとの差別化」となりウケているのだろう。そして、その内容は街頭インタビューに“江頭節”炸裂で乱入するものや、自ら過酷な罰ゲームを受けるものなど、“江頭にしかできない”という独自性も持ち合わせている。

 もちろん、背景には芸人としてのこれまでの実績や、「実はいい人」という世間の見方も影響しているようで、どの動画も高い評価ばかりが多く、コメント欄もあたたかい言葉であふれている。例えば、3月2日に投稿された『玉ねぎ早食い世界記録に挑む! Challenge the world record of fast eating onions!』は早くも110万回再生を突破し、高評価が5.6万件に対し、低評価はわずか568件。コメントは「喋り方が優しくて和む〜」「天ぷら一口目の絵がちゃんの笑顔、いいなぁ◎」など、実に平和なのだ。

【成功する芸能人の特徴2:ニッチな内容】

 自分の趣味や特技を生かすことで成功している芸能人も多い。かわいいルックスと裏腹(?)に、自身の大好きなゲームの実況で人気となっている女優の本田翼(登録者数155万人)や、本人がハマっているキャンプの動画投稿のみに特化したヒロシ(登録者数61.3万人)などがそうだ。

 さまざまなジャンルのクリエイターになりきって密着取材を受けるドキュメンタリー番組ふうのチャンネルを展開する、お笑いトリオ・ロバートの秋山竜次(登録者数53.3万人)も、自分の世界観を動画でうまく表現しながら、コアファンを増やしていると好評だ。

 テレビではクローズアップしにくい「ニッチな内容」であればあるほど、自身のファンだけでなくその“ニッチな内容のファン”の心をがっちりと掴むことができる。「本当に自分の好きなことをやっているのだ」という、“ヤラセ感”の少なさも、好印象に映るのだろう。

【成功する芸能人の特徴3:ニーズを把握している】

 モデルの藤田ニコルはメイク動画を中心に投稿しているが(登録者数61.8万人)、これは彼女の支持層である若者のニーズとマッチしている。今年1月に出演したラジオ番組では、チャンネルの開設にあたって初めてパソコンを使うようになり、動画編集を続けるうちに、文字も打てないレベルからだいぶ上達したことを明かし、「(自分は)ヘタでも成長していくスタイルのほうがいいかなと思って。最初からできすぎていると、ファンの人も応援しないじゃないですか」と語った。

 藤田のように、自身のファンが自分に何を求めているのか、どういう動画を見たいと思っているのか、という要望を把握することができているかどうかも大切な要素だろう。

 そうした意味では、宮迫のYouTubeは「まずは(相方の)蛍原徹と2人の姿が見たい」という、多くの視聴者の声を無視しつつある。宮迫と同じ“闇営業騒動”で話題となったお笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号の田村亮が、相方の田村淳とそろって会見をしたことで、そのニーズが色濃くなったにも関わらず、だ。

 加えて、騒動に対するけじめをつけきれなかったことに世間がモヤモヤとしており、好感度が回復しきっていないにも関わらずYouTubeを主戦場としてしまったこと、「いずれはテレビに」と、変わらず上から目線なところも批判を呼ぶ要因だろう。

 前述のEXIT・兼近も知名度や人気があるうちはいいが、YouTubeだけでやっていけると過信せず、まずは本業もさらに頑張ったほうがいいのではないだろうか。

(取材・文/松本果歩)