2月はじめ、ブーツブランドのエリアット(Ariat)の共同創業者でありCEOのベス・クロス氏は、コロナウイルスが短期的にはファッション企業の運営方法に影響が出るだろうと語った。さらに、もしこの危機が続けばファッション全体の売上に大きな打撃となると予測した。それから2週間ほどが経ち、同氏の発言がいま、現実のものとなりつつある(※原文記事は2月18日掲載)。

2月第3週、ブランド各社がコロナウイルスによる事業への影響を口にするようになった。その影響は物流だけでなく販売にまで及んでいる。とりわけ影響を受けているのが、中国への依存度が大きい企業が多い高級ブランドだ。

バーバリー、ベルサーチなどの動向

バーバリー(Burberry)は、すでに中国国内の64店舗中24店舗を閉鎖した。中国本土と香港での売上は大きく落ち込んでいる。同社の代表は、即座に影響があるのが中国国内での支出だが、今後数週間のうちに世界中で中国からの旅行客が減り、売上が低下するだろうと予測している。たとえば中国人旅行客のあいだで人気の都市、ロンドンにはバーバリーは7店舗、ニューヨークには10店舗を出店している。

バーバリーのCEOマルコ・ゴベッティ氏は、「中国本土におけるコロナウイルスの流行は高級品の需要に大きな悪影響を及ぼしている」と語る。「こうした状況がどれくらい続くか現状では予測できないが、当社は自分たちの戦略に自信を持っている。それまでのあいだ、社員の安全と健康、安心を確保するための緩和措置やあらゆる予防策を講じる」。

ベルサーチ(Versace)とジミーチュウ(Jimmy Choo)の親会社カプリホールディングス(Capri Holdings)は、これまでウイルスによって失われた同社の売上は1億ドル(約110億円)と予測している。アリババは詳細は伏せたものの、次の四半期でコロナウイルスによる大幅な落ち込みが考えられると述べている。ラルフローレン(Ralph Lauren)はウイルスの流行以降、7000万ドル(約77億円)の売上減と算出している。

カプリホールディングス(Capri Holdings)のCFOを務めるマギー・ウー氏は、2月12日に実施された業績報告で「当社の売上成長率に悪影響が出るのは避けられない」と語っている。

それだけでなく、長期的にさらなる打撃を受ける可能性も出てきた。中国で販売や製造を行っていないブランドであっても、旅行客による売上が大きい場合は影響を受けるおそれがある。旅行ブランド、空港での販売、ハドソンヤーズといった観光地などでは、国の出入りを制限する渡航制限による打撃が考えられる。2月14日時点で、米国やイタリア、オーストラリアなど、世界で50カ国以上が中国への渡航と中国からの渡航を制限している。

高級旅行ブランドのアメッティ(Ametti)の共同創業者、テッサ・ホロビッツ氏は「当社製品は主に欧州で製造されているため、工場レベルではコロナウイルスの影響はそこまで大きくない」と語る。「だがアメッティにとってグローバルなビジネスウーマンがコアカスタマーであり、中国をはじめ世界中へ定期的に旅行する方が多い。コロナウイルスがカスタマーに及ぼす影響は避けられないだろう」。

中国は今後も重要市場ではあるが

ファッションの製造と消費の両面において中国が今後も重要市場で有り続ける可能性は高い。だが米中貿易戦争に伴い、何もかもを中国に依存する戦略への見直しを行ってきたブランドも多い。今回の危機はこうした動きを加速させる可能性がある。

エディテッド(Edited)で市場アナリストを務めるカイラ・マーシ氏は「ウイルスの流行で売上に影響が出る業界として最初に浮かぶのが小売だろう。だが何より厳しい立場に立たされるのが小さな新興ブランドだ。サプライチェーン構造が整理されておらず、十分な予算がないブランドも多いためだ」と分析する。「流行する前から、小売業界は中国以外で調達する手段を模索してきた。ウイルスが終息したあとも、業界において中国は大きな存在で有り続けるだろう。だが長期的に見れば、将来的なリスク回避の一環として生産、調達、製造を多くの国に分散させる小売企業は増えると予想される」。

DANNY PARISI(原文 / 訳:SI Japan)