3月から、東北・北海道・上越・秋田・山形・北陸新幹線も交通系ICカードによるチケットレスサービスが始まる(写真:tkc-taka/PIXTA)

「モバイルSuica特急券」から「新幹線eチケットサービス」へ。東京駅から北へ向かう新幹線のチケットレスサービスが、3月14日から大きく変わる。

新幹線eチケットサービスを導入するのは、JR東日本・JR北海道・JR西日本の各社。予約サイトの「えきねっと」(JR東日本・JR北海道)または「e5489」(JR西日本)に登録した手持ちの交通系ICカードやモバイルSuicaで、東北・北海道、上越、秋田、山形、北陸新幹線に乗車できるサービスだ。

予約サイトのアカウントにICカードの情報を登録したうえで予約すれば、紙の切符に交換することなく、自動改札機にICカードをタッチするだけで乗車できる。東海道・山陽新幹線で導入されている「スマートEX」のようなサービスといえる。

紙の切符より楽で安い

新幹線eチケットサービスは、運賃と特急料金が一体となった新幹線専用の商品である。大きなメリットは、切符の受け取りなどの手間がないだけでなく、紙の切符よりも価格が安くなることだ。

例えば、東京―仙台間の通常期普通車指定席が紙の切符で1万1410円のところ、新幹線eチケットでは1万1210円。東京―新函館北斗間は2万3430円が2万3230円となる。紙の切符で乗車券と指定席特急券を買う場合より200円安くなるわけだ。

また、早期予約で安くなる「えきねっとトクだ値」「お先にトクだ値」もeチケットに対応するという。紙の切符と同様に、特急料金の閑散期・繁忙期料金(基本的に閑散期は200円引き、繁忙期は200円増し)は適用される。予約は最大6人まで可能だ。

一方でデメリットもある。新幹線の駅同士のみのチケットであるため、「東京都区内」「仙台市内」などといった「特定都区市内制度」は適用されない。

例えば西荻窪や金町など、都心からやや離れた「東京都区内」の駅から東京駅に行って新幹線に乗り、仙台で在来線に乗り継いで「仙台市内」の駅で降りるという場合、紙の切符よりもやや高くつく。

また、新幹線と在来線の乗継割引も適用されない。例えば東京から新潟へ行き、特急「いなほ」に乗り換えて酒田まで向かうといったケースでは、紙の切符なら「いなほ」の特急料金が半額になるが、eチケットだと別々に購入することになるため、運賃を通しで計算できず特急料金も割り引かれない。とはいえ、全体的には便利なサービスだといえるだろう。

モバイルSuica特急券は終了

同サービスの開始とともに、これまでの「モバイルSuica特急券」はサービスを終了する。

モバイルSuica特急券は、利用する際のハードルがやや高かった。「モバイルSuica」のサービス自体、FeliCa搭載の携帯電話・スマートフォンでなければ使用できず、JRのビューカード以外で登録した場合は年会費も必要だったためだ。

一方、JR東海・JR西日本は、会員制の新幹線予約サービス「エクスプレス予約」で、専用のICカードで乗車できるチケットレスサービス「EX-IC」を2008年に導入。これは年会費が必要で、決済に使えるクレジットカードも限定されていたが、2017年9月末から開始した「スマートEX」は年会費不要で多くのクレジットカードに対応し、Suicaなどの交通系ICカードでチケットレス乗車ができるようになった。

JR東日本も、在来線特急ではモバイルSuicaでなくても使えるチケットレスサービスを2010年から導入していた。「えきねっとチケットレスサービス」だ。これは、えきねっとで指定券を予約すれば、紙の切符に引き替えることなくそのまま利用できるというシステムである。「成田エクスプレス」に始まり、現在は常磐線の特急「ひたち」「ときわ」や、中央線の特急「あずさ」「かいじ」などに広がっている。

JR東日本は2019年11月30日、スマートフォン向けの「えきねっとアプリ」をリリースした。

現状では在来線特急のチケットレスサービスに特化したアプリであるが、同社公式サイトのえきねっとアプリの案内欄には「新幹線eチケットサービスは、3月中旬頃対応予定です」と書かれている。アプリが新幹線に対応すれば、eチケットサービスとの組み合わせでより簡単に予約ができるようになり、利便性の高いものとなるだろう。

東海道・山陽新幹線の「エクスプレス予約」「スマートEX」が提供する「EXアプリ」は使いやすいという評価を受けており、現在の「えきねっとアプリ」もWebサイトに比べれば使いやすいため、その流れを受けたスタイルとなることが予想される。

チケットレス強化は続く

モバイルSuicaもハードルは低くなってきた。iPhoneがFeliCaを搭載するようになって普及が進み、今年2月26日からは年会費も無料になる(iPhoneは現在も不要)。えきねっとアプリが新幹線に対応すれば、モバイルSuicaを利用している人は、スマートフォン1台で新幹線の予約から乗車まで完結することができる。

さまざまな施策で、チケットレス、モバイルへのシフトを強化しようとしていることがわかる。

自動改札機は、磁気券を通すタイプだとメンテナンスをしなくてはならない箇所も多い。ICカードによるチケットレスサービスが普及すれば、切符を通す部分のないIC専用改札機に順次切り替えることで、改札機のメンテナンスを簡素化できる、というもくろみもあるだろう。

また、航空などほかの交通機関でネット予約が当たり前となっている中、簡単に利用できるチケットレスサービスを導入して利便性を高めることは重要だ。そういった状況下で「北へ向かう新幹線」が、東海道・山陽新幹線と同様に交通系ICカードを使うことによってチケットレス化を推進したいという考えになるのは当然のことだろう。

新幹線のチケットレスサービスは、2022年春に九州新幹線でも「エクスプレス予約」「スマートEX」が使用できるようになる。東京駅から「西へ向かう新幹線」も「北へ向かう新幹線」も、チケットレスサービスを強化していく。