音楽配信売上高

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 音楽番組の特番などが増え、年末を迎えたと感じる。大晦日は紅白歌合戦を見て過ごす人、アーティストのカウントダウンイベントに行く人など、音楽に触れながら年を越す人も多い。

 振り返ると、今年の1月には人気アイドルグループの嵐が2020年12月31日をもって活動を休止することを発表。また、7月にはそのジャニーズ事務所の代表ジャニー喜多川氏が死去、世間を大いに驚かせた。

 近年の音楽市況をみると、音楽の販売はソフト型からダウンロード型、そしてストリーミング型へと転換している。一般社団法人日本レコード協会によると、音楽ソフトの販売金額は2009年の3165億円から2018年には2403億円と減少している。そうした一方で、2009年に10億8300万円であったストリーミングの売り上げ実績は、2018年には348億6600万円と10年で大幅に拡大し、初めてダウンロードの売上高(256億3900万円)を超えた。こうしたユーザーの変化は、CD販売業者に影響を及ぼしている。

サブスク隆盛、大手の近況は?

 CD販売業者の業績はヒット作の有無に左右される面があるなか、近時はSMAPの解散や安室奈美恵の引退に伴い、関連するCDやライブDVDなどが好調だった。大手の業績推移を見てみると、TOWER RECORDSを運営するタワーレコード(株)の2019年2月期の売上高は約555億円で増収となった。HMVを展開する(株)ローソンエンタテインメントやシネコン事業を行うユナイテッド・シネマ(株)を含めた(株)ローソンのエンタテインメント関連事業は、CD販売のほか、ライブ市況が活況を呈していることもあり、2019年2月期の売上高は約780億円で増収となった。

 しかし、タワーレコードは2008年2月期には売上高約650億円を上げていたが、約10年で100億円ほど減少したこととなる。TSUTAYAなどレンタルショップの登場、iTunesなどダウンロード型の定着、そしてストリーミング型へと、大手でも例外でなくCD販売業者は早いトレンドの移り変わりに苦戦している。また、2010年代にはAKBグループやK-POP人気があったものの、業績は減少傾向で推移していたことを踏まえると、ヒットソング頼みでは不確定要素も多いうえ、大幅な業績改善は難しいだろう。

 ローソンエンタテインメントも定額制音楽配信市場に参入するなど、後進である日本においてもサブスク市場でさえ飽和状態になってきているなか、各社ともにCD販売以外でいかに収益を上げられるかがカギとなろう。

V系バンド専門CD店の相次ぐ破綻

 CD小売店や楽器小売店を含む「楽器小売」を主業とする企業の2019年の倒産は11月時点で13件発生、最多である2009年の14件に次ぐ水準となっている。

 今年は「ライカエジソン」を運営していた(株)ライカロリーポップや「Brand X」を運営していた(株)ブランドエックス、「ZEAL LINK」を運営していた(株)オングなどビジュアル系バンド専門のCD・DVDショップ運営会社の倒産が相次いだ。それぞれビジュアル系バンドのファンやインストアイベントなどで利用していたバンドの方々からもSNS上などで閉店を惜しむコメントが多く見られた。そのような根強いファンを獲得していた店舗でも、インターネットによるダウンロードやストリーミング配信サービスの普及などCDの市場縮小という時代の変化に対応しきれなかった。

 また、楽器小売店の倒産要因として、地域の小学校向けに楽器を販売していたが、少子化の影響で生徒数が減少したことに伴い、販売数も減少したため業績が悪化し、事業継続を断念したというケースが見られた。

 倒産動向をみても、やはりインターネット販売、配信の台頭がCD小売店に大きな影響を与えている。最近ではミュージックビデオを公式でYouTubeにアップすることや過去の曲を定額制音楽配信アプリで配信することも一般的となってきた。AKB・坂道グループにおいてはCDに握手券など付加価値をつける商法は未だ健在でYouTubeにアップすることは、広告のような意味合いもあるのだろう。

 地域性や時代、市況の変化に対応できない企業は今後さらに淘汰されていく可能性がある。CDが回らなくなるなか、CD店の経営も回らなくなっていくのだろうか。