保育園の自主営業で、今後どうなる?(写真はイメージ)

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東京都世田谷区内の認可外保育園が突然、閉園となり、即日解雇された保育士らが「自主営業」を始める異例の事態になっている。

加入する労組の支援を受けているが、今後の状況は不透明なままだ。運営会社は、年内にも自己破産する意向だが、労組では、保育士らとともに民事再生などを求めている。

資金繰りが悪化し、年内にも自己破産する意向

支援する介護・保育ユニオンなどによると、保育園の運営会社側が2019年11月29日夕、会社がこれから倒産する方向だとして、保護者向けの「お知らせ」の貼り紙を保育園に出した。その場にいた保育士らにも、閉園して全員を即日解雇すると伝えた。

これに対し、保育士らは、今後も保育園を続けたいとして、会社側とその場で話し合ったが、折り合わなかったという。ユニオンも支援に乗り出し、泊まり込みを行って閉鎖されないようにしたうえで、12月1日に保護者説明会を開いた。そこで協議した結果、当面、自主営業という形で保育士らが子供たちを預かることになった。

2、3日と自主営業を続けているが、保育園施設のオーナー側との交渉もこれからだという。

帝国データバンクにJ-CASTニュースが3日に聞いたところでは、運営会社は、いくつかの保育園を展開していたが、最近は閉園が相次ぎ、資金繰りが悪化して事業継続を断念したという。年内にも自己破産を申請する見通しとなっている。

これらの保育園は、20年ほど前から順次運営されており、幼稚園入園前の乳幼児を中心に預かる施設として、地域で定着していた。ところが、関係者などによると、保育園では最近、子供を預かる環境が悪化していたともいう。

実質的な保育士の不足状態が続き、保育士1人が6人の乳幼児を連れて遠足に出たり、段ボールが積んだ部屋で寝かせていたりしたとの証言もある。残業代も支給されなかったといい、半年以上前から数十万円分の給料の未払いが続いていた保育士らもいたという。

自主営業「聞いたことない」異例の展開

保育園の運営会社に対し、都では、2018年10月の立ち入り調査で、職員勤務の書類がないなどと指摘し、その後も、保育士の1人勤務の時間帯が見つかるなどして、2度改善を求めた。しかし、運営会社から改善の報告書提出はされていなかった。

世田谷区の保育認定・調整課は12月2日、J-CASTニュースの取材に対し、同日に都の担当者とともに保育士らと打ち合わせをして、今後の対応を検討することにしたと話した。

これまでに保育園の閉園はいくつかあったが、計画的に行っているといい、急に閉園したケースはあまり聞かないという。保育士らの自主営業についても、聞いたことがないとしている。

介護・保育ユニオンの担当者は2日、解雇後も保育園に残って業務を続けることについて、憲法や労働組合法で権利が保護され、刑事や民事上の免責がある組合活動の一環であると取材に説明した。また、未払いの給料があることから、財産管理について、保育士らに労働債権者として優先権があるとした。

なぜ倒産したかなどの説明を運営会社に求めており、そのうえで、民事再生などを権利として求めていくとしている。

保育士らは現状、ボランティアとして働いている状態で、生活費を渡すためにもツイッター上などで寄付を募っている。

運営会社の代理人弁護士は3日、年内に自己破産手続きをしようと準備を進めていると取材に答えた。運営会社の資金繰りが悪化したことが理由だとしたが、閉園までの詳しい経緯については、まだ聞いていないとした。

保育園施設オーナーと運営会社との賃貸契約は、現時点では解除されていないという。ただ、オーナーは、支払いが滞っていることから解除を通知したい意向だといい、保育士らが自主営業を続けたい場合は、賃料支払いなどを迫られる可能性もある。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)