超初心者でもできるローリスク・ローリターンの投資の始め方を教えてもらいました(写真:eternalcreative/iStock)

老後の資産形成のための投資に興味があるけれど、投資についての知識がまったくない。また、知識がないゆえに「リスクが怖くて踏み出せない」「投資に回せる資金がない」という人も少なくないでしょう。

ですが、少ない額でも長期間コツコツ積み立てることで、資金を大きく増やすことができるというのは、『横山先生 ド素人の私にわかりやすく教えてください! これからの「お金」の貯め方&増やし方』などの著書のある横山光昭氏です。いきなり多額の投資はせず、最初は毎月3000円からでもOKだという横山氏に、超初心者でもできるローリスク・ローリターンの投資の始め方を教えてもらいました。

投資をする前に貯めたい目標金額とは?

銀行にお金を預けていてもほとんど利子がつかない現代、老後を見据えて「お金を増やしたい!」と投資に興味を持つ人が増えてきました。

ただ、投資の初心者の中には、すぐにお金を増やしたいから投資の部分だけ知りたい、という方もいますが、それはNG。「貯金の目標金額を達成してから投資にチャレンジ」が基本だということを、まずは知っておきましょう。

投資をスタートするにあたって、まずは3つの袋をイメージしてみてください。ここで言う「袋」とは、銀行口座のことで、口座を「使う」「貯める」「増やす」に分類して管理するということです。

「使う袋」には、最低でも手取り月収1.5カ月分はおいておきましょう。3カ月ほど1.5カ月分を超える状況が続いたら、次の「貯める袋」にうつしておきます。

「貯める袋」においておきたいのは、最低でも手取り月収の6カ月分。それから、今後3年以内のライフイベントとして、車を買う予定がある、住宅購入の頭金が必要、お子さんの入学金が必要であるといった場合には、それに応じて別に貯めておきます。

こうして、「使う」と「貯める」の袋に7.5カ月分のお金ができあがってからようやく「増やす」の袋を作る、すなわち投資を行うのが理想です。「使う」から「増やす」にいきなりジャンプするのは避けましょう。

ですが、「投資を今すぐにでも始めたい!」という人もいるでしょう。家計改善が順調に進んでいるのであれば、2の貯める袋を増やしながら、3の増やす袋を増やしていく同時進行もアリかと思います。

というのも、投資は長期戦。長くやればやるほど有利になるからです。ある調査によると投資を始めて11カ月くらいでやめてしまう人が多いようです。初心者の方ほど、「損した!」とか「ぜんぜん儲からないなあ」と感じてしまいがち。ですが、11カ月でその判断を下すのは早すぎます。投資は長期間、コツコツと続けないと結果が出ないものなのです。

例えば、毎月2万円くらいに投資したとしてそのまま複利5%で長期間運用を続けた場合、次の図のようなイメージになります。ちなみに複利とは、「元本+金利」に金利がつく仕組みです。増えたお金にもさらに金利がついていき、どんどん増えていくのです。


このように、最初の数年ではほとんど増えませんが、10年後には77万円のプラス、20年後には353万円のプラス、30年後には954万円のプラスとなるのがわかるでしょう。時間を味方につけると、小さな一歩が大きな結果になるのです。
ですから、決して短期間での結果を求めず、資産運用は10年単位の長いスパンで考えることが大切です。

投資額は3000円からでもOK

では、肝心な投資についてですが、「超初心者でも取り組める資産運用」のポイントは3つあります。

1 ネット証券を利用する
2 毎月少額(3000円〜)積立で長期間行う
3 バランス型の投資信託を購入する

一つひとつ解説していきましょう。

投資を行うことのできる証券会社は、例えば、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、カブドットコム証券などいくつもあります。手数料がかさんでは意味がありませんので、手数料の低いところを選び、運用コストを抑えましょう

そして、投資額は最初は3000円からでも十分です。いきなり100万円を投資につぎ込むのは怖いですが、毎月少額、例えば3000円分だけの積立投資なら、飲み会1回分だと考えれば可能ですよね。少額から始めて、慣れてきたら投資額を増やしていくといいでしょう。

そして、次に考えるのは何を買うか。投資用の金融商品には、株、債券、FX、外貨預金、金、不動産投資などさまざまなものがありますが、私は、知識がない初心者の方には「バランス型投資信託」から始めることをお勧めしています。

バランス型の投資信託とは、投資家から集めたファンド(お金)をプロが運用してその成果を投資家に分配するもの。運用はプロにおまかせなのでラクなのが特徴です。日本株・日本債券・外国株式・外国債券がバランスよく配分されており、1つ買うだけで複数に投資していることになるんです。

さまざまな金融商品の中でも、この「バランス型の投資信託」が最もローリスク・ローリターンだと考えています。初心者はハイリスクなものは避けるのが鉄則。ローリターンといっても、毎月着実に、そして長期間続けることで結果が出てきます。

おトクな税制優遇を活用しない手はない

運用の際は、おトクな税制優遇を活用することもお勧めです。銀行預金の利息や、投資で得た利益には、通常、一律約20%の税金がかかります。わかりやすく言えば、10万円の運用益が出たとしても、そのうち約2万円が引かれてしまい、手元に残るのは約8万円となってしまうわけです。これは大きいですよね。

ですので、今は、一定の枠内でこれらの税金を非課税にするという国の税制優遇制度もあります。

これは、国からの「税金を安くするから投資してね」というメッセージのようなものです。

年金や医療費のような老後の社会保障が今後ますます厳しくなるため、資産形成は自分でやってほしいという思いからです。これらのおトクな制度を使わない手はありません。

代表的な制度が、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)、NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)、つみたてNISAの3つです。「聞いたことはあるけれど、あまり詳しくない……」という人のために、簡単にご説明しましょう。

「iDeCo」は、自分で年金を作る制度。毎月の掛け金を決め、自分で投資信託を運用していきます。運用商品の中には定期預金などの元本保証型もありますが利率が低い今はおすすめしません。会社員や公務員、主婦も活用できます。

メリットはなんといっても税制面の優遇です。掛け金が全額所得控除となり、所得税&住民税が軽減されます。それから、運用益が出た際も税金はかかりません。年金や一時金で受け取ることができますが、それぞれ一定額までは非課税です。利回りは選ぶ商品にもよるので一概に数字を言えないのですが、この節税効果は大きなメリットです。

デメリットは、老後資金の準備のための制度なので、60歳にならないと引き出せないこと。60歳になるまでは教育費に使ったり、失業したときの生活費に使うということはできません。それらの費用は別途準備しておく必要があります。

「NISA」は、個人投資家向けの非課税優遇制度。毎年120万円まで運用益に課税されません。非課税金額は最長5年なので、投資総額の上限は600万円。iDeCoと異なり、用途は老後資金に限りません。


NISAは、iDeCoと比べて自由度がかなり高い制度です。いつでも解約・売却できるため、教育費や生活費の足しに、と引き出すことができます。遠い先の老後というよりは近い将来使うお金を定期預金代わりに入れておく運用方法といえるでしょう。とはいえ、現在50代以上で老後までの時間があまりなく、急いで老後資金を作りたいという方も総額600万円まではこの税制優遇制度を活用することができますね。

「つみたてNISA」は、NISAから派生してできた非課税優遇制度。NISAと異なるのが、「積立」方式のみであること。また“積立”期間が20年と長く、コツコツ積み立てる制度です。

1年間で利用できる金額は40万円なので、20年間で総額は800万円までOK。NISAと同じように、期間途中でも、いつでも現金化することができる点も便利です。

資産運用は自分で自分の身を守る1つの手段

最近多い質問が、「NISAがいいのか? つみたてNISAがいいのか? それともiDeCo?」という、どれを選べばいいのかわからないので教えてほしいというものです。しかし、何を選ぶべきかは、その人の状況によって違うので一概にコレ!とはいえないものです。

資産運用は確かに自己責任で、元本割れするリスクもあります。自分の生活の中でどれだけリスクがとれるか、と見極める必要があります。

制度の違いがよくわかるよう、簡単な表にしてみましたので、参考になさってください。


自分で自分の身を守る力が人生100年時代をサバイバルできるカギ。その1つの手段が資産運用です。

ここまでお伝えしてきた家計改善の考え方やお金の価値観が、「資産運用」を推進するエンジンとなります。危なくない投資もあることを知って実践していきましょう。