燃費だけで見れば同じ車種のガソリン車と差が少ないモデルも

 ハイブリッドカーに乗って、その燃費の良さに驚くことがあるのと同時に、「これでハイブリッド!?」と思える、あまり燃費が伸びないハイブリッドカーもある。

 ハイブリッドカーはモード燃費と実燃費の差が大きい、市街地では燃費が伸びるものの、エンジン主体となる高速道路では燃費が伸びない……そう昔から言われているが、個人的には中型車以上の実用車の場合、一般道&高速走行のトータル実燃費で15km/Lを超えてくれれば、良しとしている(コンパクトハイブリッドカーでは20km/Lはいくケースも)。

 もちろん、ハイブリッドであっても大型ミニバンやSUVのように車重が重ければ、たとえばトヨタ・プリウスやトヨタ・アクアのような燃費性能はそもそも期待できない。同ガソリン車との燃費差に恩恵を感じられれば、それで良しとしたい。

 ここでは、e-燃費.comのデータから、実燃費15km/L以下のハイブリッドカーを取り上げてみた。もちろん、年式、走行環境、運転で数値は変わってくるので、あくまでも参考程度として考えてほしい。

1)トヨタ・ヴェルファイアHV(11.98km/L)

 車体の大きさ、両側スライドドアや豪華なシートを備え、車重がかさむことから、10km/Lを超えていれば合格、という見方もできるが、意外にも2.5リッターガソリン車との違いは大きくない。むしろ、ハイブリッドならではの滑らかな走行感覚、静かさ、AC100V/1500Wコンセントの用意にメリットを見出して乗るべきハイエンドミニバンだろう。

 ちなみに、ヴェルファイアで一番高いやつをもってこい……と言えば、ハイブリッド エグゼクティブラウンジZ の約750万円! になる。燃費を気にして買う買い物じゃないですよね。

2)トヨタ・エスティマHV(12.06km/L)

 初代から貫かれるデザイン性、スタイリッシュなボディにしてゆとりある居住空間、そして2016年6月のビッグマイナーチェンジ以降の走行性能、乗り心地、操縦性の進化によって、デビュー13年を経ても決して色あせていないのがエスティマだ。

 実燃費がハイブリッドカーのイメージから想像するよりあまり良くないのは、ハイブリッドの場合、E-FOUR=電気式4WDを採用しているから。そのぶん、高速走行、山道での安定感は文句なく、もちろんストロングハイブリッドならではのねばりにねばるモーター走行、AC100V/1500Wコンセントの用意などの魅力たっぷり。

 ヴェルファイア/アルファードHVとともに、燃費だけではないデザイン、居住性、高い実用性などに着目して選ぶべきミニバンだろう。「アエラスプレミアム」グレード同士のガソリン車とHVの価格差は約100万円にもなるのだが。

3)スバル・フォレスターHV(12.44km/L)

 スバルはどのハイブリッドカーでも、燃費を最優先していない(ガソリン車も?)。それよりも、スバルらしい走行性能、走破性、アイサイト=先進安全支援機能を重視しているのだ。

 このスバル最新と言っていいフォレスターのHVモデルも、プリウスなどのハイブリッドカーと同じ土俵にいるわけでは決してなく、モーターはあくまでアシストという考え方。

ハイブリッドの「効果」は燃費だけじゃない

4)スバルXV(12.52km/L)

 確かに、12km/L台の実燃費性能は、現代のハイブリッドカーとして物足りない。が、水平対向エンジン+モーターによる上質で濃厚極まるエンジンフィールはスバルの実用車ベスト、いや、国産車ベストと言えるもの。HV感の強さはスバル車随一で、走りの上質感は、ある意味、燃費とバーターとも言えそうだ。

 もちろん、モード燃費を見る上で、XVがXモードを備えた悪路走破性抜群のAWD専用車であることも忘れてはいけない。走りの良さからすれば、実燃費が12km/L台でも十二分に納得できると、個人的には思っている。

5)日産エクストレイルHV(13.52km/L)

 エクストレイルのハイブリッドシステムは1モーターゆえ、あくまでアシストとしてのハイブリッドシステムだ。軽快にしてタフな悪路走行性能からすれば、まずまずと納得しなければならない数値と言えるかもしれない。とはいえ、ほぼ同じような実燃費性能を持つのが、巨大なマツダCX-8のクリーンディーゼルモデルと聞くと、ちょっと物足りなく感じられるのも事実。

6)トヨタ・ハリアーHV(14・32km/L)

 ギリギリ15km/Lに届かなかったハリアーHVだが、もちろん、走り方によっては15km/Lを超えるだろう。実際、個人的なデータでは、市街地30%、高速70%の走行で、ガソリン車(2WD)が約13km/L、HV(4WD)が約15km/Lを記録したこともあった。

 ハイブリッドモデルはエスティマ同様、全車E-FOURの電気式4WDという点を考慮すれば、なかなかの燃費性能と言うことができる。

 ハイブリッドカーは燃費がいい……それは燃費性能に特化させたプリウスやアクアのようなハイブリッドカー(専用車)のことであり、ミニバンやSUVのような重く大きな車種の場合、実数値そのものはびっくりするほどではない。とはいえ、大きく重く、燃費に不利な車種だからこそ、ガソリン車に対する燃費の優位性に着目すべきではないか。

 そして、繰り返しになるが、一部のハイブリッドカーに装備できる、車内外で家電品を使うことができるAC100V/1500Wコンセントは、ガソリン車にはない、非常時にも役立つ便利装備であることも忘れてはならない。

 世界的にクルマの電動化が一気に進んでいく時代だ。その第一歩の選択として、燃費性能の程度はともかく、ハイブリッドカーを選ぶ意味は十分にあると思う。