タイガーマスクが原辰徳監督の魅力を語る【写真:荒川祐史】

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原監督から学ぶファンサービスの姿勢「ファンあってのプロだから」

 熱狂的な原辰徳ファンを自認する新日本プロレスのタイガーマスク。新日本が誇る初夏の風物詩「ベスト・オブ・ザ・スーパー・ジュニア(スーパーJr.)」に18年連続18度目の出場を果たしているマスクマンが、「Full-Count」の独占インタビューに登場し、憧れのヒーロー、原辰徳の魅力について熱弁を振るった。

 2009年から原監督と交流を深める中で気が付いたのが、恩師でもある初代タイガーマスク・佐山聡との共通点だという。4代目タイガーマスクは、2人のどこに共通点を見出したのか――。3回シリーズの最後を飾る第3弾では「原監督と佐山聡の共通点」をお届けする。

 ◇ ◇ ◇

――子供の頃に憧れていた原さんを深く知り、同じプロとして学ぶことも多いのでは。

「原監督って、どんなに野次られてもファンの人には何も言わない。とにかくファンに感謝しますよね。ファンあってのプロだからって、いつも仰有ってます。1人でも声を掛けるファンがいれば、監督は必ず笑顔で手を振る。名前を呼ばれても何も反応しない人もいるわけじゃないですか。でも、1回でも顔を上げて、少し手を挙げるだけで、ファンは『こっちを見てくれた』って喜びますよね。そうやって応援に来てくれるファンに対して、少しでもサービスをする姿勢や意識はすごく勉強になります。

 今の巨人で、本当は原監督が前面に出てはダメだと思うんですよ。だって、野球をしているのは選手なんですから。でも、原監督にカリスマ性と影響力があるが故に、巨人軍=原辰徳となってしまう。よく原さんも、長嶋(茂雄)さんと一緒で、何を言っているのかよく分からないって言われますけど(笑)、それもあの人のカラー。すぐには分からないけど、実はよく考えると筋が通っている、もっともなことを言っていることが多いんですよ。それを理解しないのは、今どきの人がよく考えようとしないだけ。だから、原さんはすごく隅々まで考えているんだろうなって思います」

――その言動は考え抜かれた末のものだと。

「何でも基本はブレない人ですよ。若い選手に対しても『お前ができれば、俺はいつでも使うからね。お前らあっての野球だから』って、ちゃんと伝えていますよね。起用方法について、いろいろ言われることもありますけど『結果を出してのプロなんだから』という話は常に仰有っていますから、ブレていないんですよね」

「佐山さんと原さんに、すごく共通点を感じるんですよ」

――今季の好調もブレない強さがあるからでしょうか。

「それもあるでしょうね。ただ、今までの監督時代と比べると、今年はちょっと違った色を出していますよね。一見するとハチャメチャというか(笑)。でも、これも1つの手なのかな、と思います」

――1つの手、ですか。

「あのね、天才って何をやるのか分からないんですよ、突然。初代タイガーマスクの佐山聡さんもそうなんです。『10年先を見ている人だ』ってずっと言われていたんですけど、突然、訳の分からないことを言い出すんですよ。聞いていても、頭の中で想像がつかない。『は? 何を突然言い出しているんだろう?』って。でも、10年前に佐山さんが言っていた話が、今こうやって総合格闘技の普及という形で実現されているんですよ。当時、UWFで佐山さんがレガース(脛当て)を着け始めたら、周りには『そんな訳の分からないものを』と馬鹿にされていた。それが、今ではプロレスラーでも格闘家でも当たり前になって、お前は蹴りを使わないだろっていう選手まで着けているんだから(笑)。

 佐山さんって、そういう先見の明があったし、天才って自然と先を見ているんですよね。今現在は理解されないかもしれないけど。原監督も同じだと思うんです。今やっていることに対して、周りは不満や批判の声を上げるかもしれないけど、数年後の巨人を見た時には正しいことなんじゃないかって。僕、佐山さんと原さんって、それぞれとお話をさせてもらって、すごく共通点を感じるんですよ。だから、僕は2人とも好きなのかなって思う時もある。それくらい似ていますね」

――先を見る感覚が、似た雰囲気を醸し出すのかもしれません。

「先を見ているし、人を惹きつける魅力がすごいんですよ。同じプロとして話をさせてもらって、お2人はすごく尊敬できるし、感銘を受けますね。一度、原さんにも佐山さんと似ているって話をしたら『いやいや、そんなことは』って謙遜してましたけど、ソックリですよ」

――となると、数年後の巨人が楽しみですね。

「だと思いますよ。よく、原監督は生え抜きを使わずに、外部から補強するって言われますけど、これも聞いたことがあるんです。『監督、どうして外から補強するんですか?』って。そしたら、こう仰有ってました。『まず、野球は勝たなければならない。育てるのは必要だけど、1年や2年で育つもんじゃないんだよ。やっぱり年月は掛かる。私が監督になった時、選手が育っていなければ、そこから育てないといけない。でも、監督になった以上は、結果を出すことが求められるから補強する。その補強を見て、元々いた選手が悔しいと思った時、そこから競争がスタートするんだ』って。決して生え抜きを蔑ろにするんじゃなくて、自然な競争を生み出している。理に叶っていますよね。

 選手のフォローは、普段はコーチに任せるそうです。監督は常に意見すると言葉に重みがなくなるから、いざという時にだけ声を掛ける。そうすると選手が発奮するんだって」

――深いですね。

「そうなんですよ、深いんです。これは勉強になりましたね。僕たちの世界でも若い選手がたくさん出てきていますから、彼らに声を掛ける時に参考になります」

18年連続18回目の出場「スーパーJr.」 目指すは6月5日・両国国技館での決勝

――タイガーマスクさんは、5月13日から始まった「スーパーJr.」で若い選手たちと新日本プロレスのスーパーJr.ヘビー級の頂点を争われています。

「18年連続18回目の出場ですよ。一緒に戦っている若い選手が、3、4歳の頃から出続けているんですから、よく考えたら俺ってすごいなって思いますよ(笑)。もちろん、体がしんどい時もありますけど、出る以上は彼らと同等。有利も不利もない。お互いに持っているもの、持っていないものがあって、その上で強い者が勝つ。それだけなんですよね。

 今の若い選手なんて、マスクを取ったら内村航平が入っているんじゃないかってくらい、アクロバティックにクルクル回ってますけど、僕はそんな技には掛からないと思っているし、掛けさせないし、その段階に持ち込む前に勝負をつけますよ」

――これまで2度頂点に立った、思い入れのあるシリーズだと思います。

「そうですね。昔は小林邦昭さんとか馳浩さんも出ていた『トップ・オブ・ザ・スーパーJr.』が前身で、ファンの頃から見てましたから思い入れはありますよ。でも、ここ数年は膝が良くなくて、桜が咲く頃になると『やば、スーパーJr.の時期が来た』って嫌な気分になってます(笑)」

――あまり聞きたくないです……(笑)。

「もちろん出る以上は勝ちたい。今回も直前に膝を痛めたので、試合に全力を注ぐ意味でも、リング入場時にコーナーポストに上がるのはやめようと思ってます。結構負担になるので、その分のエネルギーを試合に注いで集中したいので。

 今年は本当にレベルが高いです。特に、外国人選手のレベルが上がっている。彼らにとって今、新日本のリングに上がることは一種のステータスになっているので、スーパーJr.で優勝すれば母国で箔が付く。IWGPジュニアヘビー級王者のドラゴン・リーなんて、メキシコでは英雄ですよ。空中技だけじゃなくて蹴りや膝の使い方も上手い。本当にレベルが高いです。

 ただ、毎年言うのは、僕は僕の色でやりたい。たとえ派手ではなくても、得意の打撃で攻めていきたい。そして、相手が得意技を出す前に仕留める。短期勝負を狙っていきます。最終的には、6月5日の両国国技館で、メインイベントとして行われる決勝に進むこと。まだまだ負けません。優勝を狙いますよ」

【ベスト・オブ・ザ・スーパー・ジュニア26 優勝決定戦】
6月5日 東京・両国国技館
17時開場 18時半開始
チケットなど詳細は新日本プロレス公式ウェブサイトで。(佐藤直子 / Naoko Sato)