企業が掲げる「環境経営」に足りないもの
平成初期の企業を取材した元日刊工業新聞記者の山口民雄氏(循環型社会研究会理事)は、「環境対策は費用がかかるので、経済の足を引っ張ると考える経営者が大多数だった」と振り返る。それが91年、経団連が「地球環境憲章」を公表すると「二の足を踏んでいた経営者が動き始めた」(山口氏)。
“不平等条約”
今はどの企業も当然のように環境経営を掲げるようになったが、日本の温暖化対策は停滞した。元環境庁(現環境省)地球環境部長の加藤三郎氏(現環境文明21顧問)は「05年から日本の努力が減った」と分析する。同年、先進国に温室効果ガス削減義務を課した京都議定書が発効した。
しかし、当時の最大排出国であった米国が議定書から離脱したことにより、「日本の経営者は“不平等条約”と口々に言い、真剣に取り組まなくても良い雰囲気になった」という。
「脱炭素」へ
京都議定書の後継として20年に始まる温暖化対策の国際ルール「パリ協定」は、今世紀後半に排出を実質ゼロにする「脱炭素」を目指す。日本も脱炭素を目標とすることに産業界は反対していないが、加藤氏は「表面だけは『脱炭素をやる』と言っている」と手厳しい。
海外企業は異常気象が多発すると事業を持続できないと警戒し、再生可能エネルギーの普及を政府に働きかけている。一方、日本企業には危機感が足りず、厳しい対策には躊躇している。
山口氏は「日本企業は環境経営とサステナビリティー(持続可能性)が結びついていない」と指摘する。本来は社会、企業活動とも持続可能にするために取り組むべき環境経営が、企業イメージ向上などの目的にとどまってしまった。「令和」の時代が始まり、気候変動問題と真剣に向き合う環境経営が求められる。
