計画相次ぐ国立大統合、「1法人複数大学制度」の是非
04年度の国立大法人化は「大学の教育研究をだめにする」という現場の声が小さくなかったが、15年の月日は重い。運営費交付金の削減が続く中、改革を求める社会の声も受けて「反対一辺倒では乗り越えられない」ことを多くの関係者が実感するようになった。
各大学が覚悟を決めて向き合うようになった転機は、「地域」「特色」「世界」の3類型から主な方向性を各大学が選択する制度の導入だ。
86の国立大はもはや横並びではない。その方が自らの魅力を発揮できる―。地域の事情や規模、分野に合った教育・研究・社会貢献を、各大学が主体的に考えるという意識が浸透した。
さらに政府は、切り詰めて緊縮財政に対応する大学“運営”ではなく、外部資金獲得などを組み合わせた“経営”という言葉で、次の改革を促す。その最もドラスチックなものが「統合」だ。
大学の統合は一般に「地味だが地域を支えてきた中小規模大学が、大規模大学に飲み込まれる」との危惧が強い。しかし1法人複数大学制度ならば、各大学の自主性を保ちつつ合理化ができる。文部科学省は「大学のブランドや地域との関係、同窓会などを残しつつ、リソースを最大限に活用できる。
現在、この方式での統合を表明しているのは4地域・グループの9大学。全国立大の1割だ。別の大学の追加参加を歓迎するグループも多い。文科省に在り方の見直しを求められている教員養成系の大学・学部など、気にならないはずがない。公私立大や研究開発法人などとの別の形式の議論もある。次の再編に向けた環境が整いつつある。
一般社会の関心は「次の統合案件はどこか」に向きがちだが、大学改革は“統合ありき”ではない。統合という手段を使い、何をしたいのか。社会に意味ある存在として何ができるのか―。それが強く問われる。(文=編集委員・山本佳世子)
名大・岐阜大 「強み」と「特徴」相互補完
名古屋大学と岐阜大学は法人統合して東海国立大学機構を設立する。設立時期は法改正次第のため未定だが、2020年4月からの新入生受け入れを目指す。両大学の強みと特徴を生かして相互補完し、国際競争力強化と地域創生への貢献を目指す。強みに応じた研究拠点を形成して教育研究機能を強化、公的資金や外部資金の獲得増加につなげる。
少子化社会では「縮小均衡で生き延びる発想は捨てる」(松尾清一名大総長)と判断、同機構の傘下に両大学が入るアンブレラ方式で統合する。中心となる同機構本部に両大学がぶら下がり、同機構経営協議会やアドバイザリーボード、同機構事務局がそれぞれ運営に関わる「マルチ・キャンパスシステム」を形成する。両大学の自律性を尊重しながらも、地域の国立大学間の壁を取り払う。
国の教育予算が減り、大学のプレゼンスが落ちる中、高等教育機関が持続的に発展し、人類や社会に貢献するには現状のままでは厳しいという危機感を持つ。名大は世界との競争、岐阜大は地域貢献を目指す中で補完し合い、組織的、戦略的に目標に向かうことで地域産業発展に貢献する考え。
名古屋と岐阜がある中京圏はモノづくり産業の集積地。航空宇宙や炭素繊維、農学などの研究を強化、産業構造の変革につなげる。航空工学では名大は設計やシミュレーションに強く、岐阜大は部品加工に強いため補完しやすい。農学では基礎分野中心の名大と全般教育が得意な岐阜大で補完する。
