もし、彼らが泥酔して、現地指導の後で写真を傷つけてしまったものなら、帰国直後に亡くなった第2のアメリカ人大学生オットー・ワームビア氏になっていた可能性もあり得るからだ。脅されようと何だろうと予定通りに出国できただけでも超がつく幸運で、北朝鮮にしては驚きの寛大な処置だったと言える。

 覚えているだろうか、彼らが出国した2日後の8月11日は、杉本倫孝氏拘束が速報で報じられた日なのである。(参照:HBOL)

 北朝鮮側が手配した旅行会社へ彼らが残した誓約書と騒動を伝えてきたのは8日の夕方で、「問題学生らは予定通り出国済み」の一文以外は伝えられなかったそうだ。

 そのため、旅行会社は事実確認のために、その晩から彼らへ複数回メールを送るも返信はまったくなかったという。拘束されていた杉本氏との関連やもしや出国できていないのではと心配を募らせていたところ、16日になりようやく返信があった。

 文面を見ると旅行会社への謝罪の言葉はなく、

・8日の朝、2人で支配人に誠心誠意謝罪し弁償もしてたのでこの件は終わっている。
・我々は十分に謝罪と弁償をした。朝鮮の物価を考えれば十分過ぎる。
・具体的な証拠も提示されず自分たちの過失の確証がない。
・これ以上弁償するつもりはない。
・誓約書は帰国させないと脅されて書かされたものだから無効。

 などと書かれているだけだったという。

 それに対して、北朝鮮から詳細が伝えられていない旅行会社から詳細を尋ねるメールを送るもこの1通のみで返信は途絶えたそうだ。

 修繕費1500ドル(約16万円)は手配した中国の代理店が肩代わりした。北朝鮮の代理店はオーナーシップ制になっているからだ。年が明けた今年1月、東海大学の学生の入国審査時の住所へ請求書などを送るも住所が存在せず返送、本人と保護者(兄)の携帯電話へかけるも番号自体が存在しない状態。申請自体も虚偽だったのだろうか。

 東海大学へ在学確認と1月末に送った学生課宛の手紙を受け取ったのかと確認するも個人情報のため回答できないとの返答だった。そのため慶應義塾の学生は在学するが、東海大学の学生は在学実態ははっきりしない。

 サブカル的に北朝鮮を茶化して楽しむ風潮はあるが、許されない一線というのもあるだろう。場合によっては拘束され、多くの人を心配させる事態にだって発展しかねない。

 また、下手をすれば外交上のカードを握られて、日朝関係に大きく影響しかねないことだ。

 週刊新潮の記事を読むとさも武勇伝のように語られているが、大学生の旅行先での羽目外し、だけでは済まないのはどこの国でも同じだが、とりわけ北朝鮮や中国は体制が日本とまったく異なることを、もう少し認識するべきではないだろうか。

<取材・文/中野鷹 Twitter:@you_nakano2017>