4年に1度のW杯ともなると、ひとつのプレーがとてつもない重みを持つ。ゴールシーンを逃したり、失点を誘うミスをしたりすれば、批判は避けられない。

 望外の結果に沸き立つ日本のなかで、GK川島永嗣は難しい立場にある。コロンビア戦、セネガル戦ともに、失点につながるミスをしてしまったからだ。

 GKは特殊なポジションである。サッカーについて書くメディアも、日本を熱心に応援するファン・サポーターも、部活やクラブでGKをやっていた、あるいはやっている、という人は少数派ではないだろうか。

 フィールドプレーヤーについてなら、自分自身の経験と照らし合わせてプレーを評価できる人は多い。レベルの違いはひとまず棚上げしても、選手の意図をイメージできる。ミスについても、その原因と理由が推測できる。

 ところが、GKのプレーにはそこまで理解が及ばない。分かっているつもりでも、深いところまでは知り得ていない。

 僕自身にはそういうところがあり、結果としてGKのミスに心無い反応をしてしまうことがあった。ひとつのミスが失点につながるポジションであり、ミスがあれば触れないわけにはいかないという理屈で、GKのプレーを批判してしまうことがあった。僕だけでなく世間一般を見わたしても、GKやGKの経験者からすると的外れな批判が少なくないのでは、と想像する。

 そのうえで言えば、川島が批判されるのはしかたがないと考える。彼のおかげで勝利した試合、引分けに持ち込めた試合が、これまでにたくさんある。その実績と経験には、もちろん敬意を払う。

 しかし、W杯という舞台はW杯予選とも、アジアカップとも重みが違う。ここでの勝点1は、4年分の重みを持つ。いや、日本サッカーの歴史に長く刻まれていく勝点とも言える。それを引き寄せたプレーが称賛される一方で、勝点を取りこぼすことにつながるようなプレーは、批判を避けられないと考える。

 僕が求めているのは日本代表の勝利だ。その試合に必要な結果をチームとして残してくれるのであれば、誰がスタメンに選ばれてもいい。
 
 28日のポーランド戦にしても、GKが川島なのか、東口なのか、中村なのかは、僕にとって大きな関心事ではない。西野監督のチョイスについて、その選手のプレーについて、客観的に評価を下すだけである。
 
 個人的な意見を言えば、次のポーランド戦も川島を起用するべきだと思う。負ければベスト16入りを逃すかもしれない重要な一戦で、W杯のピッチに一度も立ったことのない東口や中村を起用するのはリスクが大きい。今回が3度目のW杯となる35歳の守護神も、捲土重来を誓っているだろう。他でもない川島こそが、ポーランド戦に誰よりも闘志を燃やしているはずで、その気持ちを試合にぶつけてほしいのだ。