急成長の裏、行列や混雑が発生する問題が浮上してきた(筆者撮影)

沖縄県那覇市から南西へ約430キロ先に位置する石垣島。世界有数の美しい海とサンゴ礁に囲まれ、リゾート地として人気を集める。特に2013年3月の新石垣空港開港後は、本州からの直行便の充実などをきっかけに飛行機で石垣島に訪れる人が大きく増加。旧空港時代の2012年が約77万人だったのに対し、2017年は120万人を超え、過去最高を記録した(石垣市調べ)。

しかし、最近は急成長による弊害が目立ってきた。というのも、せっかく増えた利用者を空港がさばききれなくなっているのだ。ターミナル内での混雑や行列の発生、荷物を預けるだけでひどいときは1時間もかかる現状を関係者たちはどう認識しているのか。

片道3万円のチケット、即完売の人気路線

まず石垣空港とは、一体どんな空港なのか。

成長を牽引しているのは海外からの訪日客以上に、東京や大阪など本州からノンストップで石垣島に入る日本人の来島者である。飛行機利用者の24%(約29万人)が羽田から、12.7%(約15万4000人)が大阪からの直行便を利用。現在でも那覇からの便を利用する人が50.7%を占めるが、この数年、那覇空港での乗り継ぎにおける混雑を避けたい利用者も多く、那覇経由よりも直行便で石垣島へ来島する利用者が半数を超える日もそう遠くないだろうと思う。

新石垣空港の開港後、他社に先んじて直行便に力を入れたのがANAだった。開港間もない2013年3月31日に羽田〜石垣線の直行便を1日1往復で再開。

機材は、ボーイング767型機(270席)を使用し、夏休みなどの繁忙期には1日2往復に増便した。

それでも供給が追いつかず、2015年3月29日より年間を通じて羽田〜石垣線は2往復の運航となり、同年4月24日にはボーイング787-8型機(335席)が初めて投入された。さらに、繁忙期にはボーイング787-8型機が2往復共に投入され、日によってはより大型の787-9型機(395席)やボーイング777-200型機(405席)も投入された。

筆者も時々この路線を利用しているが、昨年11月に搭乗した際は、朝6時15分発という早朝便にもかかわらず、ボーイング787-8型機(335席)が満席だったことに大変驚いた。

現在も羽田〜石垣線の搭乗率は高水準を維持している。ANA・JTA共に羽田〜石垣線の年間平均搭乗率は8割、繁忙期は9割以上を記録。夏休みには片道3万円以上の航空券を販売してもすぐに満席になるという盛況ぶり。満席のため直行便が取れず、那覇乗り換えの便を仕方なく利用する人も多い。割引のきく団体よりも個人で利用する客の比率が高いので航空券単価も高く、収益面でも大きく貢献している。

3月末にはANAが季節運航だった福岡からの直行便が通年運航になるなど、今後も各航空会社の増便や、本土との新規路線が増える可能性がある。

悩みの種は「混雑」と「ラウンジ不足」

しかし、短期間の成長によって問題も出てきた。空港が大量の利用者にうまく対応できなくなっているのだ。


混雑する新石垣空港内の様子(筆者撮影)

開港当時は、小型機であるボーイング737の就航を前提に設備を整え、地上職員や空港職員を配置していた。ところが後に中型機や大型機が就航したことによって当初の想定以上に乗客が増え、ターミナル内の手荷物受け取り場や出発待合室の混雑、チェックインカウンターや保安検査場の行列が目立つようになった。

特に中型機以上を運航するANAでは、チェックインカウンターのスペースが狭く、繁忙期には荷物を預けるのに1時間近く要することもある。上位クラス「プレミアムクラス」利用者や多頻度会員向けの優先チェックインエリアのスペースもなく、一般客同様に行列に並ぶことを強制される状況が続いている。

この問題に対し、ANAの菅隆宏石垣支店長は「一刻も早く優先チェックインカウンターを作りたいが、現状の限られたスペースでは難しい」と話す。

ターミナル内の混雑や行列に加えて、ラウンジの開設も喫緊の課題だ。


ラウンジの開設が喫緊の課題(筆者撮影)

石垣島を訪れる観光客には、島にも宿泊や観光、食事などでお金を多く落としてくれるリピーター客が多い。空港ターミナルが混雑している時間帯に利用する羽田直行便のリピーター客から出るクレームの中で最も多く聞かれるのが、「出発前に利用できるラウンジがない」という声だ。

空港には航空会社の上級クラスや多頻度会員が利用できるラウンジだけじゃなく、クレジット会員向けのカードラウンジすらない。

航空会社にとっても悩ましい問題

空港ターミナルビル運営会社に話を聞くと「ターミナルの拡張へ向けた検討をしている。ラウンジの開設も検討課題にはあるが、まだ具体的に作る予定はない」と話す。

各航空会社もラウンジ開設を要望しているが、ANAの菅石垣支店長は現在の状況について「優先チェックイン、保安検査場の改善は、お客様からご意見をいただくことが多い。せっかく八重山を楽しんでいただいた後、帰るときに空港が混雑している様子はしのびないと思っている。特に座席数が多い羽田行きの便の出発前は、ゲート前の待合室の椅子に座れないくらい人が溢れており、上級会員やプレミアムクラス利用者に立ってお待ちいただくこともある。我々もラウンジを作って欲しいことを関係機関にも要望している」と話す。

混雑や行列、ラウンジ不足などの問題を早急に解決しないと、せっかく増えた利用客を減らしかねない。スペースを持て余し、利用客が伸び悩む地方空港が多い中では贅沢な悩みである。

日本最南端のスターバックスをはじめとしたフードエリアやお土産店などは充実しており、利用者の評価も上々だが、新空港開港5年を迎える今、旅客増に対応した施策を講じることを真剣に考えていかなければならないだろう。