「賀茂鶴」というブランドがある中で、幻の酒米に未来を問う
東京・表参道のアートギャラリーで7月、賀茂鶴酒造は広島錦の発表会を開いた。著名ソムリエの田崎真也氏が壇上で試飲しコメントするなど、華やかなイベントとなった。新製品のブランディングやパッケージデザインなどは外部の専門業者に委託。「東京で新製品発表会をしたのは初めて。人材育成もあり、商品化プロセスは若手社員に任せた」(藤原社長)という。
酵母には「協会5号酵母」を採用。日本醸造協会(東京都北区)によって良質な酒造りのために全国の酒蔵に頒布されてきた「きょうかい酵母」の1種で、大正時代に賀茂鶴の蔵から分離されたもの。残っていた株から新たに選別し直した。
「ワインでいうところの“テロワール(原料の生育環境)”を意識しながら、原点回帰してつくった」(同)という同社渾身(こんしん)の1本。商品化までに6年を費やしたという。
「賀茂鶴」というブランドがある中で、サブブランドの広島錦を前面に押し出したパッケージデザインや売り出し方は異例のこと。
背景には、同社の立つ独特なポジションの難しさがある。灘や伏見のナショナルブランドのように、年商数百億円を売り上げる規模はない。
一方で知名度が高く全国で手に入るため「地酒を売りにする飲食店では棚に並べてもらえない」(同)。広島錦の純米酒は料飲店専門に卸す販売戦略で、日本酒好きの若い層への浸透を狙う。
また「双鶴」や「ゴールド賀茂鶴」といった従来の主力商品は純米酒ではなく醸造用アルコールを添加した「アル添酒」。「すっきりした飲み口や吟醸香がたつことなどアル添酒の良さはあるが、純米酒のラインアップは弱かった」(同)。
広島錦の純米大吟醸は、4合瓶を一般向けに販売。初年度は純米大吟醸と純米酒を合わせ一升瓶2万本分を生産、来年度は酒米を増やして2倍に増産する。
(文=広島・清水信彦)
