「製造業は製造技術やノウハウで製品の質を高めてきた。今後はモノづくりのノウハウを持っていても、データがなければ競争に参加できなくなる。対策はいち早く製品を出すことだ。医療画像へのAI応用は米FDAで出てきている。画像認識AIの競争はもう終盤。次は機械系だ」

 ―データはプライバシー問題があります。AIスピーカーの普及が期待されていますが、データ収集端末になれるかどうか。
 「おもてなしとプライバシーは表裏一体だ。旅館や料亭の仲居さんも気を回すために、お客の個人情報を知っているが、お客に信頼されている。プライバシーは日本的な方法で解決したいところだ。半分冗談だが、人の顔をアニメや動物の顔にするだけで人はなごむ。画像認識などAIのアルゴリズムは顔の写真がそのまま必要なわけではない。機械的に抽象化した情報があれば十分だ。マーケティングではデータから個人を特定したいのではなく、振る舞いを予想したいだけだ。商品選びが他の人と似ているか、次にどんな商品を求めるか推定して先回りできればいい。顔や自身が調べられると不快だという感情には、日本なりの
解決策を見つけたい」

良質なデータ集まるビジネスモデルを
 ―プライバシーをクリアしたとしても、データだけが集まればいいわけではありません。どんな意味を持つデータか、ラベルをつけないとAIが学習できないのでは。
 「農業用のデータなら農家にラベルをつけてもらうしかない。SNSで流れているデータは、ユーザーが写真と一緒に状況説明や感想を挙げる。ユーザーが自発的に楽しんで行い、SNSにラベルのついたデータが集まる仕組みだ。これに似た仕組みを現場の専門家と作り上げる必要がある。初めはお金を払ってデータにラベルをつけてもらう必要もあるだろう。データへの投資とは、単にデータを集めるだけでなく、良質なデータが集まるビジネスモデルを構築することでもある」

 ―専門知識は先進国が有利ですが、簡単なデータ加工は新興国など人件費の低い社会の方が有利ですね。
 「最近、エチオピアを訪ねる機会があった。貧しく道路や家はボロボロで、料理もあまり美味しくない。だが服と車はきれいで日本で売られている商品とあまり変わらなかった。これはアジアで安く生産され、世界中に流通しているためだ。衣服や車、食材などデリバー(物流で運べる)できる商品は後進国も先進国もほぼ変わらず、建物や交通インフラ、料理など、デリバーできないモノ、その場で作らねばならない料理や建築物は貧しいままだ。だが、これらもロボットによってデリバーできるようになる。人間がその場で作ってきたのは、目が必要だったからだ。目を持ったロボットが代わりに働けば、世界中、同じ品質の仕事ができる。今後、商品やサービス、インフラも世界中で差がなくなっていく」