【松尾豊】AIロボット「日本企業はピークの20代につまらない作業をさせている」
―米グーグルがロボットで80万回、モノをつかむ作業を繰り返して、ピッキングをAIに学習させました。80万回を多いと考えるかどうか。ロボットにAIを応用する技術課題は何でしょう。
「大量データのディープラーニングと強化学習を組み合わせて『深層強化学習』が実現したとはいうものの、まだ強化学習が未成熟で何十万回も繰り返しデータを集めないといけない。強化学習において事前学習として次元削減の技術がきちんとできていないのが原因だが、今後大きく変わるはずで、そうなれば状況は一変するだろう。また、シミュレーション技術が重要になっている。コンピューターの中でシミュレーションできれば実際にロボットが繰り返さなくても大量のデータを増幅できる。囲碁AIが自己対局でデータを増やしたことと同じだ。ただシミュレーションは何を再現すればシミュレーションしたことになるのか難しく、学術的にも面白いところだ。日本の企業は各技術が成熟するのを待たず、すぐに着手した方が良い。フライングでも進めないとビジネスでは勝てない」
―ハードウエア開発はベンチャーには荷が重いとされます。AIロボットは大企業に有利な市場ではありませんか。
「確かにハードウエアは製造技術など、要素のすり合わせが多く、ベンチャーだけでやるのは厳しい。AIに強いベンチャーとモノづくり系の大企業の連携が一つのモデルになる。AI技術の進化は速く、ベンチャーのように即応できないとついていけない。ベンチャー側が売り上げを立てて、大企業との交渉力を持ち続ける必要がある。できなければ大企業は抱え込もうとする。イスラエル・モービルアイ(自動運転用画像認識VB)が米インテルに買収されたように、ベンチャーが特定の企業に依存しないように取引を分散させるなど戦略が要る。日本にもファナックとプリファードネットワークスの協業など先行例はある。ただ数が足りない。今後、成功例が増えていってほしい」
「投資のあり方も変えないといけない。これまで製造業は生産設備や製品に投資してきた。これからデータと人に投資することになる。データはそのまま競争力に直結する。データをAIに学習させると精度が上がり、できる機能も増えていく。データが直接サービスの質を向上させる。検索が良い例で、AIのアルゴリズムだけが優れていても、それを支えるデータがなければ学習できない。アルゴリズムはコピーできても、データが生成され続ける仕組みはマネできない。優れたサービスはユーザーを増やし、学習データも増やす。ユーザーが増えると新しい機能やサービスを試すテスト環境も豊かになり、新サービスを素早く実装できる。この好循環が回り出すと後続組は追いつけなくなる」
