ナダル戦に5連勝してフェデラーは「苦手を克服」したか?

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ロジャー・フェデラー(スイス)が、昨日曜日まで行われた「上海ロレックス・マスターズ」の決勝戦でラファエル・ナダル (スペイン) と対戦し、連勝記録を5試合に伸ばした。長年にわたるライバルに差をつけていることを印象付けた格好だ。

今では「伝説」とも呼べるような数々の熱戦を繰り広げた両選手ではあるものの、過去の対戦成績は、ナダルが23勝15敗と上回っており、フェデラーにも決してひけをとらない。しかし最近の、フェデラーの連勝からは「その理由は何なのか?」と疑問だろう。報じられたところによれば、一つの理由はフェデラーのサービスにあり、ウェブサイトで明らかにされた。

「上海ロレックス・マスターズ」では、フェデラーは決勝戦のナダル戦で6-3、6-4で勝利。サービスゲームでは、ナダル側のコートの左右両方のコーナーへ、自在に打ち込み圧倒的な優位を築いた。狙い通りのコントロールに翻弄されて、ナダルは常にボールを追いかけなければならなかった。コースの読み合いでは、フェデラーに軍配が上がったといっていいだろう。

■ブレークで劣勢を跳ね返せなかったナダル

一つの理由はなんと言っても、フェデラーのサービスの強さで、ナダルにとってはリターンでの劣勢だ。数字にもいかにフェデラーが磐石に試合を運んでいたか統計にもよく表れている。

まずは、ナダルのセカンドサーブに対する得点率で、21%(14本中3本)と低い。両選手の対戦全体38試合を戦った中で、最低だという。また今年の序盤戦で2人が対戦した、アメリカのインディアン・ウェルズで行われた「BNPパリバ・オープン」の25%(20本中5本)を下回った一方で、全試合を含めて計算すると、ナダルのフェデラーに対するセカンドサーブの得点率は50%。

いかに「BNPパリバ・オープン」と「上海ロレックス・マスターズ」では、チャンスにしなければならないセカンドサービスを攻め切れていなかったかが分かるだろう。

リターンでのポイント獲得率そのものも大きく下げており、「上海ロレックス・マスターズ」では18%(44本中8本)にとどまった。一方で、両者対戦の全試合の統計では、38% (3570本中1347本)と大きく差があり、ナダルにとっては勝ち越していた時ほど、リターンで優位に立てていないのだ。

■フェデラーはサービスとバックハンドを武器に

逆にフェデラーからすれば、サービスゲームでは圧倒的な強さを見せ付けたことになる。

その強さの秘密の一つはどうやらポジショニングにあるのかもしれない。デュースサイドでは、コートの端から12回、センターから14回のサーブをフェデラーは放った。

デュースサイドの端から放ったサービスでは、12回で10ポイントを取り、内4ポイントはナダルのバックハンドでのリターンミスを誘った。一方、センターからのサーブでは8本中8本を成功させ、4本のエースを取り、1本をウィナーとしており、圧倒的なポイント獲得力を見せた。

アドサイドでのサービスでも、フェデラーは、コート端にポジションを取ったときには、14回のサービス中、10本を成功させ、7ポイントを獲得。センターに構えた時には、9回サービスを放ち、8回成功させた。それだけではなく、ポイント獲得数は半分以上の5ポイントとした。

またフェデラーの強さはどうやら、サービスだけにあるのではない。フェデラー自身も語っており、ATPのウェブサイトで明らかにされた通り、バックハンドの進化も別の理由の一つだろう。

フェデラーが以前は「バックハンドだけで攻めるのは難しかった」が、今大会では「ほとんど、それが問題なく可能そうだった」と言う。かつては比較的に弱いとされてきたストロークをも武器にできていることが大きく影響して、フェデラーが負け越していた、いわば苦手相手だったナダルを克服したのかもしれない。

実際に、ナダルもフェデラーのサービスに対して手をこまねいていただけではなく、強烈なサービスを武器とするほかの選手との試合でも見せるように、リターンのポジションを思い切り下げるなど工夫を凝らしていた。だが結局、勝ち越していたフェデラーに対して、最近5試合で勝てていないところを見ると、ナダルにとっては、自身のリターンゲームの分析も取り入れて改善を図らねばならないかもしれない。

(テニスデイリー編集部)

※長年のライバル関係にあり、コート外では、友人同士のフェデラーとナダル
(Photo by Lintao Zhang/Getty Images)