東京五輪の代表監督は、誰になるのだろうか。日本代表の活動でひとまず報道は落ち着いているものの、来週末あたりから再びメディアが追跡するだろう。

 有力な候補にあげられているのは、日本代表の手倉森誠コーチと森保一サンフレッチェ広島前監督だ。

 手倉森コーチは、昨夏のリオ五輪で采配をふるった。久保裕也が開幕直前でチームに合流できなくなり、戦略の練り直しを迫られたなかで、1勝1分1敗の成績を残した。グループステージ敗退の評価は分かれるところだが、本大会の経験を20年に生かしてもらうとの考え方は成り立つ。セントラル開催のアジア最終予選で優勝を飾った実績も、手倉森コーチを推すプラス材料になる。

 東京五輪のサッカー会場には、宮城スタジアムが含まれている。そこから読み取るべきは、東京五輪の意義である。東日本大震災に見舞われた被災地の復興を、世界に発信するとの思いから、宮城スタジアムが選ばれたのだろう。

 そう考えると、手倉森コーチは監督の最適任者だ。自らも被災した体験を持ち、復興への日々を見つめてきた彼は、東京五輪に特別な思いを抱いている。チームに一体感や連帯感を生み出すリーダーとして最適だ。

 シドニー五輪のフィリップ・トルシエを除いて、五輪代表の監督は日本人が選ばれてきた。Jリーグで実績をあげた人材の登用が基本方針となり、反町康治、関塚隆、手倉森各監督が指名された。
 
 森保氏が浮上しているのも、これまでの流れを汲んだものだ。サンフレッチェを3度のJリーグ優勝へ導いた実績は、歴代の五輪代表監督でも際立つ。自身も日本代表としてW杯予選などを戦い、07年のU−20ワールドカップでコーチを務めた経験もある。選手としても指導者としても、履歴書にスキはない。

 それぞれにセールスポイントはある。どちらが就任しても、理解を得られるだろう。

 違う視点からも考えてみたい。日本代表との連携だ。

 東京五輪世代のチームは、18年1月のU−23アジア選手権で立ち上げられる。ロシアW杯に先んじて動き出すわけだが、ふたつのチームに連携が求められるのは間違いない。

 リオ五輪のオーバーエイジの人選に、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は影響力を持った。直後にW杯アジア最終予選が開幕することから、日本代表の主力クラスの招集は見送られた。

 それが悪いとは言わない。しかし、東京五輪はこれまでと違う。対戦相手さえ決まっていない現時点でも、チームのターゲットは表彰台に上がることとの共通認識がある。東京五輪への協力を惜しまないことは、次期日本代表監督の使命と言ってもいい。そのひとつとして、日本代表のオーバーエイジ招集を検討していく余地は十分にある。

 だとすれば、いまからリサーチを初めていい。次期日本代表監督の大きな方向性は、早い段階で打ち出しておくべきだ。

 10年のアルベルト・ザッケローニ、14年のハビエル・アギーレ、15年3月のハリルホジッチは、日本代表が目ざす方向性にふさわしい監督として招かれた。ただ、オファーを受けたタイミングでフリーな立場だったことも、彼らの来日を後押ししている。

「五輪は日本人監督に任せるが、W杯は外国人で」というスタンスも、五輪をどこか軽視しているような印象を与える。それでいて、上位進出を逃した監督は厳しい評価を下されてきた。

 外国人監督に日本代表を託す理由は、そもそも何なのだろう。日本人監督は、なぜ最初から候補に上がらないのか。

 日本サッカーの強化方針に関する根本的な答えを、そろそろ明確化する時期にきていると思う。東京五輪の監督選びは、その第一歩になると思うのだ。