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●国内800店舗に

スシローグローバルホールディングスは、回転寿司チェーン「スシロー」の出店加速をひとつの目的に、今年3月に東証一部へ上場した。その子会社であり、スシローを運営するあきんどスシローは年30-40の新規出店を計画、将来は国内800店構想を抱く。

○8-9年後に国内800店舗に

スシローグローバルホールディングスの中期経営計画には、スシロー業態の出店は年30-40店舗ペースとある。水留浩一社長は将来、国内800店舗体制にしたいという。中期経営計画のペースで計算すれば、8-9年で達成できる計算だ。現段階において、1店舗あたりの年間売上は3億3,000万円弱ほどとし、800店体制が実現すると、年商は2,600億円超となる。

目標に向け、出店エリアはどうなるのか。そもそもスシローは大阪発祥の回転寿司屋。関東に店舗が少ないというわけではないが、これまでは比較的、西日本への出店に力を入れてきた。今後は出店余地のある、東北・関東の東日本へ重点的に出店していく考えだ。

ただし、これはロードサイドの郊外型店舗の話。駅前など人が集める都心型店は別だ。東京、大阪、名古屋、福岡、札幌など人の集まるところへ出していく。将来800店体制のときに都心型は100店舗くらいのイメージになっているようだ。

回転寿司は伸びている

これらはあくまで計算上の話。回転寿司業界を取り巻く環境も合わせて、スシローの店舗計画の実現可能性を見たいところだ。

様々な調査を見る限り、近年、回転寿司市場は伸びているようだ。富士経済によると、2016年の回転寿司の市場規模は前年比4.8%増の6,055億円。2017年は6250億円へと拡大すると予測している。こうした現況をどう見ているのか。水留社長は「出店しても売上が取れるエリアがまだ残っているから市場は伸びる。ホワイトスペースと呼ばれる出店可能エリアが残っている」とする。スシローも出店可能エリアが多数あると見ていることを示唆するコメントだ。

とはいえ、大手回転寿司チェーンでは明暗が分かれているのが現状だ。スシローのように伸びるところは伸び、逆に苦戦しているところもある。スシローが伸びている理由はあるはず。それについて、水留社長はどう分析しているのか。

スシローが伸びている理由

スシローの強みについて、水留社長は「寿司にフォーカスして取り組んできたのが支持していただいている最大の理由だと思う。回転寿司の楽しみにはサイドメニューにもあるが、根っこは寿司屋。寿司に魅力を感じてもらうための取り組みが受け入れられたのだと思う」と話す。

スシローの原価率は高い。通常の飲食店は原価率が約30%だが、スシローの場合は約50%と高い。それは利益を圧迫する要因にもなるが、スシローの場合は、ネタに回す。そうした考えをベースに持っている企業だ。具体的な取り組みとしても、昨年11月から「世界の海からいいネタ100円PROJECT」を開始。一皿100円で、良質なネタを提供・販売する取り組みを半永久的に続けていく考えだ。

○個性のある回転寿司チェーンに

ネタにこだわる姿勢はこの先も続く。スシローが現在取り組んでいるのが、上記のプロジェクトに加えて、地産地消的な取り組みだ。その代表例として、前浜プロジェクトと呼ぶものがある。

これは千葉をはじめとする各地の近郊で揚がった天然魚を近場のスシローでネタとして提供していくものだ。全国全店の規模では揃えられないが、エリア限定ならば提供可能になるネタだ。「いいネタだけど、全店で提供できる量にはならないようなものがある。そこに手を付けないのではなく、あるエリア、50店舗、80店舗だったら出せるというネタを取り上げていこうと。そのひとつが前浜のプロジェクト。いいものを目利きして買い付けて提供して行く」。

全国各地に点在する魚市場を巡ると、こうした素材はまだまだあるという。今はまだ千葉県、大阪府の一部店舗で提供する取り組みに過ぎないが、全国各地に広げていこうという考えだ。チェーン店であるにも関わらず、北海道と千葉県ではメニューに違いができる。個性のあるスシロー店舗ができるというわけだ。

●まだまだ進める効率化

○人材確保と工夫

将来、国内800店舗を目指していく中で、解消しなければならない課題もある。それは人材確保だ。目下、人手不足を訴える業界は多い。スシローは直営方式をとっているため、店舗を増やせば、その分、スタッフの増員が不可欠になる。水留社長も人材確保を重要課題と捉えている。

ただし、単に雇えばいい、増やせばいいと考えているわけでもない。中長期的には自動化を進展させ、省力化をさらに進めて、課題解決に当たろうともしている。「現在、16、17人のスタッフがキッチンで作業している。目標感としてはこれを10人まで減らしていきたい。いくらでも自動化は可能だが、とにかく味だけは落とさないようにする」と話す。

どの部分で省力化を図るのかを聞けば、かなり地味な取り組みだ。食器洗浄機を改良し、色別に整った皿を取り出せないか、麺類の茹でを自動化できないか、といった類のものだ。ひとつの改善で作業時間を10分減らし、もうひとつの改善でもう10分を減らしていく。その積み重ねで、必要人員を減らしていくことになる。

国内800店舗になったとき、都心部でスシローを見かけることが多くなり、店内に入れば、エリア限定のネタも味わえる。店舗内部では、いそいそと働くスタッフの人数が減り、自動化が進むことになりそうだ。店内に入って、見えるところも見えないところも、スシローが今とは少し変わったものになっていそうだ。