小野はFC東京戦で右インサイドハーフに入り、ピッチを退く65分まで攻守で奮闘した。(C)SOCCER DIGEST

写真拡大 (全2枚)

[J1リーグ5節]FC東京 3-3 鳥栖/4月1日/味スタ
 
 今年1月にベルギーのシント=トロイデンからサガン鳥栖に移籍した小野裕二は、2節の川崎戦で足を痛めて戦線離脱。5節のFC東京戦でようやく復帰を果たした。
 
 ポジションは開幕2試合と同じ右インサイドハーフ。中盤を縦横無尽に走り回り、守備では身体を張ったタックルやカバーリング、攻撃では持ち前のテクニックでキラリと光るプレーを見せた。
 
 元々はFWやトップ下が主戦場のアタッカーだが、65分にピッチを退くまで3センターハーフの一角で効果的に機能。本人もベルギーで経験済みだったというポジションに手応えを感じていた。
 
「インサイドハーフはベルギーでやっていたので、マッシモ(フィッカデンティ監督)はそれを見ていてくれたんだと思います。まずしっかり守って、チャンスがあれば攻撃に絡めるように意識しています。まだまだ課題はたくさんありますけど、悪くはなかったです」
 
 1992年生まれの小野は、宇佐美貴史(アウクスブルク)、柴崎岳(テネリフェ)、小林祐希(ヘーレンフェーン)、宮市亮(ザンクトパウリ)、高木善朗(東京V)、武藤嘉紀(マインツ)らと同じいわゆる“プラチナ世代”の一員だ。横浜で17歳にしてトップデビューを飾り、プロ契約時には18歳で背番号10を託されるなど、次世代のドリブラーとして脚光を浴びた。
 
 13年1月にはスタンダール移籍で初の海外挑戦。しかし、15年7月に加入したシント=トロイデン時代を含めて、ベルギーでは4年通算で47試合・1得点と不本意な成績に終わる。左膝靭帯断裂、顎の骨折など相次ぐ怪我にも悩まされた。本人はこの欧州時代を「怪我もあったし、色々なことがあった。でも、自分の財産になっています」と振り返った。
 ちなみに、小野がJ復帰を決意した1月には、入れ替わるような形で1歳年下の久保裕也がスイスのヤングボーイズからベルギーのヘントに移籍。しかも、その久保はいきなり7試合で5得点と爆発し、3月シリーズの日本代表では5得点に絡む(2ゴール・3アシスト)活躍を演じた。そんな後輩の姿には触発されるものがあるという。
 
「僕はベルギーで結果を残せなかったけど、彼の活躍は刺激になっています。浮かれるなんて絶対にないと思いますけど、このまま活躍を続けて、日本人の価値を高めてほしい」
 
 とはいえ、小野に負い目や気負いは一切ない。セビージャからC大阪復帰を決めた清武弘嗣をはじめ、ホルンを離れて鳥栖でチームメイトになった権田修一、フィテッセからFC東京に帰還した太田宏介、シュツットガルトから柏に加入した細貝萌など、同じくヨーロッパから日本に帰国した先輩たちとともに、今は目の前の戦いに集中している。
 
「キヨくん(清武)も頑張っていると言っていましたし、僕も鳥栖でしっかり戦って、チームを勝たせたい」
 
 小野は迷いのない表情で力強くそう言い切った。
 
取材・文:白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)
 
【PHOTO】FC東京×鳥栖の美女サポーターたち♥