第4回WBCでプールBに入った侍ジャパンは、キューバ、オーストラリア、中国を相手に全勝して2次ラウンドに進出。プールAで韓国を退けた新星イスラエル、オランダ、さらにはプールB2位通過のキューバも加えた2次ラウンドの激戦が始まっている。

 一方で、9日(日本時間で10日)からアメリカ、メキシコで始まったプールC、プールDの戦いも気になるところだ。日本が激戦を勝ち抜いて決勝ラウンドに進んだ場合、ここから世界一の座を争うライバルが出てくることになる。そこで少々気が早いが、実力的に上位と目される4チームの「注目メジャーリーガー」を一足早くチェックしておこう。


MLBのスター選手であるロビンソン・カノも、連覇を狙うドミニカ代表として参加プールC

ドミニカ共和国

 前回大会の覇者であるドミニカ共和国は、打者中心にチームが編成され、一発勝負のWBCでも物怖じしないベテラン選手が多く選ばれている。

 37歳のエイドリアン・ベルトレ(レンジャーズ)、36歳のホセ・バティスタ(ブルージェイズ)とネルソン・クルーズ(マリナーズ)、34歳のロビンソン・カノ(マリナーズ)など実績・経験共に十分すぎるバッターを揃えてきた。

 ここに挙げたスラッガー4人のメジャー通算本塁打数の合計は1315本。長打力ではアメリカをも凌ぐ世界ナンバーワンのチームといっていい。連戦による疲労のリカバリーさえうまくいけば、「ベテラン集団」の大会2連覇が見えてくる。

アメリカ

 過去3回の大会でまだ優勝できていないアメリカは、「今度こそ」と錚々(そうそう)たるメンバーを招集した。特に攻撃陣のパワーはピカイチ。4番を打てる打者たちがずらりと揃う中で注目したいのは、ノーラン・アレナド(25歳・ロッキーズ)とポール・ゴールドシュミット(29歳・ダイヤモンドバックス)、ジアンカーロ・スタントン(27歳・マーリンズ)の3人だ。

 アレナドは、昨シーズンに打率.294、本塁打41、打点133の結果を残し、メジャーリーグのエリート打者へと成長。ゴールドシュミットは、巧みなバットコントロールに加え、大きな体に似合わぬ俊足で32個の盗塁もマークする身体能力の持ち主だ。2015年に13年総額3億2500億ドル(377億円)でマーリンズと契約したスタントンは、近年ケガに悩まされているものの、身長198cm、体重109kgの巨体を活かし、平均飛距離が140mのホームランを量産している。
投手陣は攻撃陣に比べると若干見劣りするが、マーカス・ストローマン(25歳・ブルージェイズ)やアンドリュー・ミラー(31歳・インディアンズ)など実績十分の投手もいる。

 ストローマンは172cm・81kgと小柄だが、平均150kmの速球と多彩な変化球を駆使する「攻撃型」のピッチャーだ。リードして終盤になれば、クローザーとして身長2mの左腕・ミラーが控える。角度のあるスリークウォーターからの速球と鋭く曲がるスライダーを武器に、昨シーズンは投球回74インニングで123三振を奪った。特に左バッターにとって、最大の脅威なることは間違いない。

 若きスラッガーのマイク・トラウト(エンジェルス)やブライス・ハーパー(ナショナルズ)、黒田博樹の元同僚で、「メジャー最強左腕」とも称されるクレイトン・カーショー(ドジャース)などは不参加となったが、それでも層の厚さは抜群。初の栄冠へ視界は良好だ。

プールD

プエルトリコ

 前回大会、準決勝で日本を下してファイナリストとなったプエルトリコは、22歳のカルロス・コレイア(アストロズ)、24歳のハビエル・バエス(カブス)ら、若手メンバーを主軸に据えて頂点を目指す。

 コレイアは2015年のア・リーグ新人王で、デビューから2年連続で20本以上の本塁打を放っている。また、昨シーズンのチャンピオンチームで頭角を現したバエスは、ワールドシリーズ6試合で打率.318、5打点の活躍を見せるなど、大舞台での強さがある。ふたりは共に高い身体能力の持ち主で、打撃だけでなく華麗な守備でもファンを魅了する。
他にも、2シーズン連続で打率3割に到達した23歳のフランシスコ・リンド―(インディアンズ)らが名を連ねるが、一方でチームの精神的支柱となるようなベテラン勢も配された。カージナルズのヤディアー・モリーナ(34歳)とアストロズのカルロス・ベルトラン(39歳)がリーダーの役割を担う。

「キャッチャー王国」プエルトリコが生んだエリート捕手のモリーナは、「MLB史上、最強の捕手のひとり」とも評され、特に二塁への送球の速さは大金を払ってでも球場に見に行く価値がある。ベテランスイッチヒッターのベルトラン(アストロズ)は、「新ミスター・オクトーバー」のニックネーム通り、プレーオフのここ一番というところで勝負強さを発揮する。スイッチヒッターながら、通算421本塁打のパワーはいまだ衰えていない。ベテランが若手をうまくけん引できれば、優勝の可能性はグンと増すだろう。

ベネズエラ

 昨シーズン、112人がメジャーリーガーとしてプレーしたベネズエラは、ベテランと若手をバランスよく招集したチームで挑んできた。

 ベネズエラ代表の投手陣の核となるのは、フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)だろう。キャリア12年で154勝、防御率3.16を誇り、地元シアトルでは「キング・フェリックス」のニックネームで愛される不動のエースも、今年で31歳を迎える。かつての剛速球は影を潜めているものの、右バッターの懐をえぐる決め球のシンカーはいまだに一級品だ。

 打者では、33歳のミゲル・カブレラ(タイガース)の活躍が期待される。現役メジャーリーガーの中でも、彼のここまでの通算成績は軒並みトップクラスだ。打率.321(1位)、本塁打446本(2位)、打点1553(3位)、安打数2519本(5位)と、MLB殿堂入りが確実視されている。彼の1発は、チームをWBCの頂点に導く大きな原動力になるだろう。

 しかし、このふたりをしのぐ注目を集めているのが、26歳のホセ・アルトゥーベだ。身長165cmの彼は現在メジャーリーガーの中で最も小柄な選手だが、昨シーズン、3年連続の200本安打を達成し、両リーグを通じて1位となる打率.338をマークした。さらに、長打率.531とサイズに似合わぬ長打力も兼ね備えている。特に二塁打が多く、キャリア6年で積み上げた204本は、イチロー(155本)よりペースが早い。この「小さな大プレーヤー」が、今大会の目玉となることは間違いない。

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