ルートインBCリーグ福島ホープスで選手兼監督を務める岩村明憲氏【写真:Getty Images】

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捕手・小林に期待込めて檄「学びながら次の試合で成長を」

 待望の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が、ついに開幕した。野球日本代表「侍ジャパン」は7日、1次ラウンド初戦でキューバと対戦。両軍合わせて25安打17得点の乱打戦を11-6で制し、白星スタートを切った。

 本番に向けての強化試合で懸念されていた打線が目覚め、松田宣浩内野手(ソフトバンク)が今大会の侍ジャパン1号3ランを含む4安打4打点、4番・筒香嘉智外野手(DeNA)は先制点でチームを勢いづけ、7回にはダメ押しの2ランを右中間席に叩き込んだ。一方、盤石かと思われた投手陣は、初戦の緊張もあってか高めにボールが浮くことが多く、キューバ打線に6点を奪われる結果に。

 2大会ぶりの優勝を目指す小久保ジャパンは初戦勝利を飾ったが、第1回、第2回WBC優勝メンバーで、現在はルートインBCリーグ福島ホープスで選手兼監督を務める岩村明憲氏は、どう見るのか。WBCの持つ計り知れないプレッシャー、初戦が持つ独特の雰囲気を知る岩村氏は「まずは勝ってよかった。初戦を勝てたら、これほど気持ち的に楽なことはない。これはデカイね」と切り出した。

「初回に先制点を奪われそうな場面で、菊池(涼介)が見事な守備で防いでくれた。あのゲッツー(併殺プレー)はチームだけじゃなくて日本の野球ファンを勇気づけてくれたよ。あのプレーがあったから、1回裏の青木(宣親)、筒香の先制点につながったね」

 戦前は打線の得点力不足を心配する声が上がっていたが、岩村氏は「強化試合と本番は気持ちの入り方が違う。大丈夫。本番になれば打線は心配ない」と繰り返していた。その言葉通り、キューバ戦では先発野手全員が出塁し、山田哲人内野手(ヤクルト)を除く8人が生還を果たしている。ようやくつながった打線の中で、岩村氏が一番のポイントに挙げるのが、5回に中田翔内野手(日本ハム)が決めた盗塁だ。

「隙あらば1つ先を狙う姿勢は、今後の試合でもカギになる」

 5回1死からストレートの四球を選んで出塁した中田は、続く坂本勇人内野手(巨人)の2球目でスタート。ボールは大きくワンバウンドし、中田は楽々と二塁を陥れた。1死二塁と得点機を作ると、坂本が3球目を左翼線への二塁打とし、中田は一気にホームへ生還。この回合計5得点の猛攻を呼んだ。小久保裕紀監督も「思い切ったスタートだった」と褒めた。

「やっぱり中田翔だね(笑)。安打こそなかったけど、フォアボールを2つ選んで盗塁も決めた。あの二盗は大きかったね。翔は走らないだろう、と相手が思っている隙を見事に突いたプレー。もし盗塁せずに一塁にいたままだったら、勇人の二塁打でホームまで戻れたか分からないよ。あの回に一気にリードを広げられたのはデカイ。

 過去のWBCを見ても、日本は06年は13個、09年は11個、13年は7個の盗塁を決めている。初対戦の外国人投手を相手に打線が苦戦をするであろうことを想定したら、盗塁の非常に大切。あらためて足は大事だってことを知らされたプレーだったよね。走ることで得点チャンスを増やすだけじゃなく、相手の投手や守備にプレッシャーを掛けることができる。隙あらば1つ先(の塁)を狙う姿勢は、今後の試合でもカギになるよ」

 WBC王座奪還の道は始まったばかり。1次ラウンド、2次ラウンド、決勝ラウンドと勝ち進む上で、克服するべきポイントも見えた。伸びしろは無限大にある。そんな期待を込めながら檄を送るのが、小林誠司捕手(巨人)だ。

「小林君の配球とリードが少し心配になった。初回に石川(歩)が内野安打とエラーで無死一、二塁のピンチを迎えた時、打者がシンカーを待っているカウントでシンカーを投げさせていた。確かに石川の持ち味はシンカー。でも、その武器を生かす配球ができていたか。ちょっと疑問だな。

 それと球が高めに浮いた時、低めを要求する時にもっと大きなジェスチャーで投手に意識付けさせてもいいと思う。もちろん『低めに投げよう』って話をして言葉で伝えているんだろうけど、ピッチャーが投球モーションに入った時に、低めに投げろって大きくジェスチャーしてあげることも大事。マウンドで集中する投手には、大げさなくらいのアクションで示さないと届かない。

 今までの使われ方を見ても、小林君を中心にキャッチャーは起用していくんだと思う。だからこそ、実戦の中で学び、次の試合では成長した姿を見せてほしいね」

エース菅野に期待する投球は…「完全シャットアウト」

 実際に試合で指揮を執る人、プレーする人の大変さを分かりつつも「見る立場になると、どうしても完璧を求めてしまう」と笑う岩村氏。7回に則本昂大投手(楽天)がデスパイネにソロ弾を浴びた後に気持ちを切り替えるフォローはできなかったのか、控え野手を1イニングだけでも出場させて独特の雰囲気を感じさせた方がよかったのでは、と鋭い指摘は続くが、それができるのも白星スタートが切れたからこそ。初戦を取った勢いに乗り、8日に迎え撃つのはオーストラリア代表だ。ここでは日本のエース、菅野智之投手(巨人)がマウンドに上がる。

「期待するのは、完全シャットアウト。オーストラリアの息の根を止めるようなピッチングを見せてほしいね。65球という球数制限はあるけど、そこは気にせずに『俺がゼロに抑えてやる!』っていう気持ちを全面に押し出していい。

 オーストラリアは夏が終わったところで、選手の体の動きはいいかもしれない。でも、国内リーグを比べたら、NPBの方が断然レベルが高いんだから。そこはジタバタする必要はない。菅野に限らず、選手はみんな自分がするべきことに集中しさえすれば、必ず勝利を手にすることができる。期待してるよ」

 2勝すれば、1次ラウンド通過に大きく近づく。打線は好調を維持できるのか。エース菅野はどんな投球を見せてくれるのか。オーストラリア戦は8日午後7時に火ぶたが切って落とされる。