「キングオブコント2016」採点データ分析で見えたバナナマン設楽の冷静な採点

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10月2日(日)に放送された『キングオブコント2016』(TBS系列)。総エントリー数2510組の中から、ライスが9代目キングの座を射止めた。(「褒めてくれぇぃ〜」キングオブコント2016優勝ライス会見詳細レポ


最後までライスと競っていたのはジャングルポケット(以下ジャンポケ)。同点1位でファーストステージを通過し、ファイナルステージのネタ順は5番目のトリ。ジャンポケの点数発表は番組のクライマックスとなった。

このジャンポケの点数発表に「バナナマン設楽の点数だけ低い」「おかしい」という声がTwitter上であがっていた。なにが起こったのか、昨年同様に採点データからキングオブコント2016を振り返りたい。
(昨年の記事はこちら→「キングオブコント2015」採点データ分析で見た意外な真実。さまぁ〜ず三村が鍵を握っていた


目の前の決戦を取るか、全体の評価を取るか


キングオブコント2016の審査は、松本人志・さまぁ〜ず・バナナマンの5人が審査員となって行われる。1人100点×5人=500点満点での採点。ファーストステージ上位5組がファイナルステージに進み、2つのステージの合計点で優勝が決まる。昨年から採用された審査方式で、今年も内容は変わっていない。

ファイナルステージのジャンポケの採点を見てみると、設楽・日村・三村・大竹・松本の順に88,94,91,95,96という点数になっている。他の審査員が全て90点以上の高得点を付けているなか、設楽のみ88点。ここだけ取り出すと「設楽だけ低い」という印象になるかもしれない。

この点数について、司会の浜田雅功にコメントを求められた設楽はこう答えている。

設楽:ジャンポケ、1本目のネタが素晴らしかったんで、それとちょっと比べちゃったところありましてね。

設楽はジャンポケの1本目のネタと2本目のネタを比べて点数をつけていた。1本目につけた点数94点を基準に、2本目の点数を考えたことになる。設楽の採点は85点〜94点の間に収まっており、平均点は89.67点。ジャンポケの2本目は設楽にとって「良くも悪くも」という位置だったことになる。

他の4名はどうか。同じく最後のコメントの内容を見ると、日村・三村がライスを、大竹・松本がジャンポケに軍配をあげている。

大竹:いや、やっぱ最後ジャングルポケットよかったですけどね。ん〜なるほどライスもよかったなぁ〜
日村:最後はジャンポケ対ライスだったんで、点数どうこうじゃなく迷ったんですけどね〜。ライスが面白かったです正直!
三村:2本ともライスは面白かったんで、これはもう、決まりだなと。
松本:僕いっつも最後はこの人優勝って決めた人が優勝しないっていう……(笑)今回もそうだったんですけど、ホント1ポイント差だったんですけどね。

この4人がライスとジャンポケに付けた点数を比べてみると、全員1ポイント差になっているのだ。

今回の審査方式では、ファーストステージとファイナルステージの合計点で優勝を決める。ファーストステージで点数を稼いでいれば有利になるのだが、ライスとジャンポケは共にファーストステージで466点の同点。ファーストステージのアドバンテージはない。

そして、ファイナルステージでライスが暫定1位になった。こうなると最後のジャンポケが、さっきのライスの点数を超えるか超えないかで勝負が決まる。この場面で設楽以外の4人は「ライスかジャンポケか」という二択で考え、勝者と思う方に1ポイントの点差をつけたのではないか。

つまり、設楽が異様に低い点をつけたわけではなく、設楽と他の4人で採点基準が異なったために違和感が生まれたのだ。審査員5人のなかで一番標準偏差(点数のバラ付き)が低いのが設楽なのも、場の盛り上がりに流されず自分の基準で採点をしていたから、と考えると納得がいく。

とかく賞レースの審査には「納得がいかない」という声が上がりがちだが、その理由はやはり「審査基準が明確でない」というところに落ち着くのだろう。キングオブコントの場合、審査員が5人しかいないので、その違いはどうしても目立ってしまう。以前の芸人100組による審査ではこうした違いは目立たなかったが、玄人好みのネタが高得点になる印象もあった。バランスを取るには、レジェンド5人+芸人50組なのか……と考えれば考えるほど悩ましい。

(井上マサキ)