【ファンキー通信】遺伝子で睡眠時間が操れる、か?

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 日本人で一番多いのは7時間睡眠だそうだ。しかし4時間ほど眠れば平気な人もいれば、9時間でも足りない人もいる。人間にとって最適な睡眠時間というのはどのくらいなのだろうか?

 米ウィスコンシン大のチームが先月28日付の英科学誌ネイチャーに発表したレポートによると、一日に必要な睡眠時間を決めるのに重要とみられる遺伝子がショウジョウバエから見つかったそうだ。

 遺伝子は「シェーカー(Shaker)」と呼ばれる変異遺伝子で、この遺伝子を持つハエは通常の約3分の1しか睡眠をとらないという。また、似た機能の遺伝子が人間にもあり、共通の仕組みが人にも働いている可能性があるそうだ。「睡眠障害の治療法研究などに役立ちそうだ」とか。

 今回はこのニュースを受け、熊本大学発生医学研究センターの粂和彦助教授に話を伺った。同氏は『時間の分子生物学』(講談社現代新書)などの著書を発表しており、睡眠と遺伝子の関係についても研究を行っている。

 粂氏はこのニュースについて慎重だ。「シェーカーを持つハエには麻酔時に体がピクピクと動く症状がありますが、この遺伝子は脳の中に発現しているため、脳の中の睡眠機構が異常を来たしていると、著者らは推測しています。ただしこの遺伝子は、多くの神経細胞にあるので、影響を受ける部分が多く、睡眠の機構の理解に、どれだけ役に立つかはわかりません。またハエが眠る条件に対して、人間の場合は環境面での作用がより大きいですから、ハエの研究が直接、人間につながるとは限りません」(粂氏)。

 氏は、「脳の働きを理解して睡眠の仕組みを解明する」には、今の段階では「ナルコレプシー」と呼ばれる睡眠障害の遺伝子の機能を理解する方がより“近い”のではないかと言う。「ナルコレプシー」とは、日中強い睡眠発作に襲われ突然眠りに陥る疾患で、若年成人期に発症することが多い。そしてこの疾患には、「オレキシン」という脳内たんぱく質が深く関与しているそうだ。

 睡眠にはまだまだ謎の部分が多く、睡眠と遺伝子の関係もまた、大部分が謎のヴェールに包まれている。今回のニュースは、その謎を解き明かす第一歩といったところだろうか。

 だが、ほかの様々な人間の行動と同じく、睡眠にも遺伝子が関与していることは間違いない。つまりは、「脳は遺伝子によって構成されている」からだ。ナポレオンやサッチャー元英首相は3、4時間しか眠らないショートスリーパーだったというし、アインシュタインは超ロングスリーパーとして有名だ。将来、睡眠と遺伝子の関係が本格的に解明されれば、個人差を乗り越え、最適な睡眠時間を自由にコントロールできる日が来るかも知れない・・・。(文/verb)