経営不振に陥っているシャープが、台湾の大手電子機器メーカー、鴻海精密工業(ホンハイ)による買収の提案を受け入れることを正式に決定しました。これで、シャープは日本の大手電機メーカーとして初めて海外メーカーの傘下に入ることになりました。

シャープ 取締役会でホンハイ傘下を正式決定 NHKニュース

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160225/k10010421271000.html

シャープ、鴻海傘下の再建決定 約6500億円の買収案受け入れ | ロイター

http://jp.reuters.com/article/sharp-decision-idJPKCN0VY076

「シャープ、「ホンハイ」からの支援受け入れ決定」 News i - TBSの動画ニュースサイト

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2711176.html

報道によると、シャープは2月25日の朝から臨時の取締役会を開き、7000億円規模の支援を提示した鴻海と3000億円規模の出資を提示した政府系ファンドの「産業革新機構」とどちらの支援を受け入れるか協議を行い、満場一致で鴻海の提案を受け入れることを決定。今後、鴻海は6500億円程度を出資して事実上の買収を行うほか、銀行が保有しているシャープの優先株のうち1000億円分を買い取ります。残りの1000億円分は銀行が保有をそのまま継続するとのこと。

鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長は提示した再建案について、「シャープを解体するつもりはなく、今後100年存続させたい」と、シャープを一体で再生する方針を言明しており、シャープのブランドを維持する一方で他の企業との統合の可能性を否定しています。ただし、ゴウ会長は太陽電池事業の売却や「40歳以上の従業員の雇用は必ずしも保証しない」という姿勢もちらつかせており、今後どのように展開するのかは不安と期待が入り乱れる状況になりそう。

◆今後の展開は

ホンハイによる事実上の買収に伴い、シャープは日本の大手メーカーとしては初めて海外メーカーの傘下に入ることになります。「日本の技術の流出が心配」という声もあがり、「欲しい技術だけ取られてあとは整理される」という最悪のシナリオを危惧する声があがるなど、シャープの今後とホンハイの狙いに注目が集まるわけですが、経営コンサルタントの大前研一氏はホンハイの狙いについて「郭会長が夢見るのは自社ブランド」という見方を示しています。

KON608「三菱重工・トヨタ自動車・東芝・シャープ〜鴻海・郭会長が夢見るのは自社ブランド」

http://www.lt-empower.com/ohmae_blog/viewpoint/1450.php

大前氏はブログの中で「鴻海の郭会長がシャープ買収に乗り出しているのは、技術が欲しいのではなく、シャープのブランドでしょう」と、技術が目的ではないという見方を示し、「(鴻海は)15兆円の売上をあげる企業になりましたが、いずれも作ってきたのは『他人様のモノ』です。ゆえに、郭会長が1つだけ満たされない部分があるとすれば自社ブランドだと私は思います」と、鴻海の狙いについて予測しています。受注産業で大きな成功を遂げた鴻海ですが、今後の生き残りのためには自社のブランドが必要であり、そのためにシャープのブランドが必要だったという見方は企業を率いるゴウ会長としての戦略としては納得できる部分です。

この発表にあわせ、メディアでもさまざまな見方が示されています。

ホンハイのシャープ買収は「iPhone 8」の有機ELが狙いか|携帯総合研究所

http://mobilelaby.com/blog-entry-foxconn-has-acquired-sharp.html

【経済裏読み】シャープは鴻海を信じられるか!?…姉妹都市の提携では「中国より台湾」日中より犇い絆瓠3/3ページ) - 産経WEST

http://www.sankei.com/west/news/160225/wst1602250001-n3.html

鴻海が7000億円を投じてシャープを買う勝算|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

http://diamond.jp/articles/-/86037?page=4

果たしてゴウ会長の真意がどこにあるのか、発表直後の現時点では知るよしもありませんが、基本的には存続の方向性を示していると伝えられるゴウ会長の方針がどのような形で反映されるのか、注目が集まることは必至です。

今回の事実上の買収劇は、日本経済の流れの中でもひとつのマイルストーンになる出来事になることは間違いなく、それだけに今後の行く末に不安が高まることは避けられないといえそう。とはいえ、やみくもに不安ばかりを煽っても意味がないわけなので、今後の展開を冷静に見守って事態を把握し、ひいてはこれからの日本経済のありかたにも注目することが大切になってきそうです。

◆シャープの公式Twitterアカウントの反応

これらのニュースが報じられたのは2月25日の11時過ぎだったのですが、その約1時間後の12時11分にはシャープの公式Twitterアカウントで「こマ?」というつぶやきが投稿されています。これはおそらく報道を受けて「これマジ?」と反応したと思われる内容。

こマ?— SHARP シャープ株式会社 (@SHARP_JP) 2016年2月25日

その直後の12時15分には「12:15 現在、弊社垢からは以上です」というつぶやきが投稿されていました。

12:15 現在、弊社垢からは以上です— SHARP シャープ株式会社 (@SHARP_JP) 2016年2月25日

◆2016/02/25 18:20追記

鴻海からの支援を受けることを決定した取締役会の決議についてのお知らせをシャープが発表しました。

(PDF)第三者割当による新株式の発行並びに親会社、主要株主である筆頭株主及び主要株主の異動に関するお知らせ - 160225.pdf

この中でシャープは鴻海の支援を受けるに至る経緯を記載し、大きく6つの理由により、鴻海がシャープの全てのステークホルダー(利害関係者)にとってベストであると判断したとしています。

本割当予定先による出資の総額は 4,890 億円となり、下記「3.(2)調達する資金の具体的な使途」に も記載のとおり、かかる出資により、ディスプレイデパイス事業の競争力を強化し、且つ、当社の各事 業が一体として成長していくために必要な成長投資を賄える十分な資金・資本の手当てが可能となると ともに、運転資金の増強など、当社の財務体質の改善にも大きく貢献する内容であると判断したこと

本割当予定先は、液晶事業においては当社と相互補完的な関係にあり、同事業における協業を通じた当 社事業の更なる競争力強化が見込まれるとともに、他の事業においても、世界トップクラスのEMSと しての製造技術の活用により、当社の生産性やコスト競争力の更なる強化が期待できる等、事業面での シナジー効果が大きいと考えられたこと

本割当予定先からは、当社のブランド、既存の従業員及び広範囲にわたる商品ラインアップの価値や、 当社事業をとりまくエコシステムを維持することの意義についての十分な理解が示され、とりわけ、本 第三者割当増資の実行後における当社の経営につき、以下を含む力強いコミットメントが得られたこと

(i) 経営の独立性

当社及びその子会社の経営の独立性を維持・尊重すること

(ii) 一体性の維持

当社及びその子会社の各事業の一体的な運営を維持し、当社の希望する第三者との提携について も十分なサポートを提供すること

(iii) 従業員の雇用維持 既存の従業員の雇用維持という原則にコミットし、組織体制の最適化に関する当社の自律的判断 を尊重すること

(iv) ブランド価値の重要性 顧客サービスや供給製品への責任を含むブランド価値向上のための努力に関する相互理解のもと、

「シャープ」ブランドの価値の維持・向上に資する方法により「シャープ」ブランドを継続使用 すること

(v) 当社の技術の保持 当社の日本における研究開発・製造機能を維持し、当社のコア技術の流出を防止するため相互に 協力していくこと

かねてより液晶テレビ、携帯電話・スマートフォン等のODMを通じた取引があったのに加え、大型液 晶パネルを生産する堺ディスプレイプロダクトを平成 24 年8月から共同で運営しており、同社の取引先

である液晶テレビセットメーカーへの同社液晶パネルの安定供給を実現することなどにより平成 24 年 12 月期から3年連続で営業黒字化を達成するなど、共同運営パートナーとして、両社間に信頼関係を構築 してきていること

本割当予定先の一社である鴻海精密工業は、株式会社みずほ銀行及び株式会社三菱東京UFJ銀行(以 下、株式会社みずほ銀行と併せて「本件金融機関」といいます。)が保有するA種種類株式の半数を総額 1,000 億円で買い取ることを予定しており、また、本第三者割当増資における1株当たり発行価格その他 の条件は、本割当予定先にとって特に有利な条件ではあるものの、本第三者割当増資を行うことによる 事業基盤の確立や企業価値向上の効果を踏まえれば、既存株主の利益にも十分に配慮した条件となって いると考えられたこと 本割当予定先は、本第三者割当増資の実行の確実性を高めるため、締結する予定の株式引受契約におい て、1,000 億円のデポジットを提供すること及び本割当予定先が引受額を支払う義務を履行しなかった場 合等には当社が当該デポジットを予定損害賠償額として没収することができることを合意する予定であ ること