イタリア人記者が内情を書く。「本田圭佑がミランを去る時がきた」
本田圭佑に対しては同情すらも感じる。10月4日。これまでほとんど口を開くことがなかったというのに、なぜミランがホームでナポリに4失点もした最悪のタイミングであんな発言をしてしまったのか......。
「話す」と「言う」は別ものだ。イタリアサッカー界では、いろいろな話はされるが、誰も何も言わない。真実とは、キャリアの最後にすべてが落ち着いてから、なんのしがらみもなくなってから言うものだ。本田はその暗黙のルールを無視して、自分の考えを言ってしまった。
しかし本田の発言の内容がショッキングなものだったかといえば、それは違う。実はもう誰もがわかりきっていることだ。しかし本当のことだからといって、バカ正直に面と向かって言っていいというものではない。特に異論を唱えられるのが耐えられないベルルスコーニのミランでは、それは大昔からタブーだった。また、ロッカールームを支配するミハイロビッチも批判されることは大嫌いだ。
ミラン側は「ミランに属する者がこんな発言をするとは驚きだ」と、柔らかい表現で遺憾の意を表したが、裏ではどす黒く激怒していた。おまけに本田はご丁寧にもミランのすべてをまんべんなく批判した。チーム(ベルルスコーニ)、テクニカルスタッフ(ミハイロビッチ)、メルカート(移籍市場、ガッリアーニ)、サポーター......特にミランが一番ムカついたのはメルカートについての発言だろう。
ミランはこの夏、選手補強に大金をつぎ込み、バッカ、ルイス・アドリアーノ、ロマニョーリを獲得したが、その効果はほとんど見られない。スクデットはこの時点ですでに失っているも同然だし、ヨーロッパカップ出場圏内入りも、よほど楽観的な者でなければ信じないだろう。失敗は明らかだ。そのことは本人たちが一番わかっているのに、そこを突かれたらいい気持ちしはしない。
公表はされていないが、本田は非難されただけでなく、重い罰金を課せられ、一足飛びにブラックリスト入りしたと見られている。
またミハイロビッチは、多少の個人的な報復とほかの選手たちへの見せしめを兼ねて、本田を最後の数分だけ、いるかいないかもわからないような使い方を続けている。これは真実を暴露した者の運命だ。ミランでは、負けた時にも「我々は勝つべきプレーをしたというのに、残念だ」と言わないと、こういう仕打ちを受けるのだ。
ではどうしたらいい? 本田は今、ほぼ控えの選手だ。誰より頑張って練習しても、ほとんど使ってもらえない。マスコミは本田の言ったことは重々承知しているし、「金を使わなければ勝てない」というロジックもわかっている。しかしわからないのは、なぜチームの旗印でもない、そして今後も決して旗印にはなれない選手の口から、この発言がなされたのかということだ。
かつてマルディーニが同じようなことを言ったことがあるが......それはマルディーニだからだ。なぜ本田が? なんの権利で? もしかしてミランに放出してもらいたいのか? そしてチャンピオンズリーグをプレーするようなチームに移籍したいのか?
しかし本田の顔を見ても、いつも通りそこには何の感情も浮かんでいない。言いたいことを言ったあとは、ただあるがままの運命を受け入れるといった感じだ。ただ、本田は後先考えずに思ったことを口にしてしまうバカ者ではない。こうした発言をすればミランに波紋が起こることも、その波が結局は自分に降りかかってくることも、わかっていたはずだ。
思うに、全ては計算づくのことだったのではないか。彼のミランとの契約は2017年の6月30日まで。まだ期限の日まで1年半ある。そして本田はあと半年で30歳となる。サッカー選手としては円熟した年齢だ。もしこの冬、ミランが彼を売ろうとするなら、それを受け入れるかどうかは本田次第だ。移籍先を選ぶことができる。
つまり、今ならまだ本田自身が主導権を握れるということだ。それにうまくいけばすぐにチャンピオンズリーグでプレーすることさえできる。例えばバレンシア。オーナーも会長もシンガポール人だし、監督はポルトガル人。国際色豊かな雰囲気でプレーできる。
ミランは負け続け、ベルルスコーニもガッリアーニもミハイロビッチも、いったいどこから手をつけていいかわからない状態。またも失敗の1年になりそうだ。ミランと本田の関係は良好だったことがほとんどないまま、今は冷え切っている。ミランから出て行く時がきたようだ。本田にはそのことがわかっている。彼をもっと愛してくれる新たなチームを求めて――。
パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

