宮本慎也×ラミレス「セ・パの格差が生まれた理由」を語る
■宮本慎也×アレックス・ラミレス 対談(1)
プロ野球も後半戦がスタートし、猛暑の中、白熱した戦いが繰り広げられている。そんな中、かつてヤクルトで一緒にプレイして日本一に輝いた経験のある宮本慎也氏とアレックス・ラミレス氏の対談が実現。ペナントレースの前半戦を振り返ってもらい、気になった選手や、交流戦で垣間見えた「セ・パの格差」について語ってもらった。
―― まず、ペナントレースの前半戦を振り返って、最も印象に残ったことは何でしたか。
宮本:パ・リーグが強い! セ・リーグが弱い!
ラミレス:宮本さんに100%同意します(笑)。
宮本:個々の能力差が全然違うよね。投手、野手にかかわらず、体格もパワーもパ・リーグが上回っている。
ラミレス:パ・リーグの選手は体が大きく、150キロを投げる投手が数多くいます。
宮本:具体的には柳田悠岐(ソフトバンク)。あれだけ振れるのはすごいと思う。森友哉(西武)も、まだまだというところはありますけど、気になる選手のひとりです。セ・リーグだと......強いてあげれば筒香嘉智(DeNA)ぐらいかな。
ラミレス:柳田はパ・リーグの選手の中でも一番大きいですし、力がありますね。筒香は一緒にプレイしていたので、すごい選手になるだろうと、当時から期待していました。
宮本:パ・リーグはピッチャーを見ても、大谷翔平(日本ハム)だけじゃないでしょ。出てくるピッチャーは、みんな球が速い。負けゲームで投げているピッチャーでも150キロくらい出ていたりする。でも、セ・リーグで同じ状況で投げているピッチャーを見ると、そこまでの投手はいない。それどころか、今でも打てそうな......ね?(笑)。
ラミレス:はい、そうですね(笑)。
宮本:そう考えると、巨人のポレダとマイコラスのふたりはセ・リーグで良かったと思う。セ・リーグだからこそ、球の速いピッチャーとして通用しているところがある。少し前ならセ・リーグにもいいピッチャーがいたけど、今、本当にいいピッチャーっている? パッと出てこないよね。
ラミレス:マエケン(前田健太/広島)、大野雄大(中日)......。
宮本:マエケンも近年は普通の投手という感じになってきている。大野は、球自体は素晴らしいけど粘れないところがある。セ・リーグでそういうピッチャーは......あまり思いつかない。ビシッと抑えるイメージがあるのは、メッセンジャー(阪神)ぐらい。あと、藤浪晋太郎(阪神)は将来的に「そういうピッチャーになるかな」という気配がある。
ラミレス:私は大瀬良大地(広島)に期待しています。今年はアンラッキーな面もあって苦しんでいますけど、エースになり得る素養はあると思います。
宮本:繰り返しになるけど、やはりパ・リーグの選手は体が大きく、厚みがある。それに比べセ・リーグの選手はシュッとしている感じ。スカウティングから違いがあるのかもしれないけど、プロに入ってからも原因がある気がする。
―― その原因とは何ですか?
宮本:僕なりに考えているのが、まず球場の広さが違うということ。それとDH制の有無。パ・リーグは球場が広いからピッチャーは思い切って勝負にいけるし、球速も入団してきた時より上がる選手はいっぱいいる。一方、バッターはその球を打ち返さないといけない。だから、パ・リーグは身体能力が上がる環境が整っているじゃないかな。ところがセ・リーグは、球場が狭いからテクニックに走ってしまう。だから、入団した時よりスピードが落ちるピッチャーが多いような気がする。
ラミレス:セ・リーグに関しては、バッターは空振りしないこと、ピッチャーなら一発を打たれないことが優先されて、テクニックに走るところはありますね。
宮本:セ・リーグは体に厚みをつけることでスピードが落ちることを嫌がっている選手が多い気がする。よく、体重が増えるとスピードが落ちるっていうけど、それは間違い。だって、短距離走の選手はみんなすごい体をしているじゃない。僕は山田哲人(ヤクルト)にも「体をデカくしろ!」って言っているんだけど、なかなか大きくならない。最初はウエイトをいっぱいやった方がいいと思うんだけど......。ラミちゃんはどう思う?
ラミレス:そう、最初はね。山田に関していうと、セ・リーグで24本(7月30日現在)のホームランを打っていますが、パ・リーグだったら半分ぐらいかもしれません。
宮本:でも、おかわり(中村剛也/西武)が今のセ・リーグにいたとしても、今より数字が落ちるということは考えられない。逆はあると思うよ。たとえば、内川聖一(ソフトバンク)がセ・リーグに戻ったら、今よりホームランが増えることはあるかもしれない。
ラミレス:おかわりくんは、本当の意味でナンバーワンのホームランバッターです。本当にすごい。
宮本:基本的に自分が狙っていたのと違う球が来た時でも、当てにいかない。普通はみんな当てにいくんですが、おかわりは2ストライクになってからでも合わせにいかない。当然、三振は多くなるけど、あれだけ振られたらピッチャーは嫌だと思う。
ラミレス:もうバッティングが成熟しています。50本打ったとしたら、40本はレフトにホームラン、10本はセンター。そういうイメージの選手です。
―― 今シーズンの大谷翔平(日本ハム)選手についてはどうですか?
宮本:1年目からピッチャーとして走ったり、投げ込んだりしていたら、たぶん20勝は間違いないでしょう。投手と野手の両方をやるから、足がつったり、マメができたりしてしまう。やはり、ピッチャーの練習が不足しているのではないか? とはいえ、不足していてあれだけ勝つのだから、本格的にピッチャーに専念したらどうなるのか......。それは見てみたい。もちろん、バッターとしても素晴らしい才能を持っています。でも、投げる一本で行ってほしい。
ラミレス:間違いなく彼は今のプロ野球で最高の選手です。私もどっちかひとつに集中した方がいいと思います。まずはピッチャーとして常時160キロの速球を投げられるように。ファンもそれを期待しているでしょう。
宮本:ラミちゃん、今、大谷がメジャーに行ったらどれくらいやれると思う?
ラミレス:最初のシーズンは15勝ぐらいいけるでしょう。ただ、その後、相手が慣れてくると、どうなっていくかはわからないです。田中将大(ヤンキース)を見てもわかるように、慣れられるとちょっと難しくなってくる部分がありますから。その意味で、大谷もメジャーでずっと活躍できるかどうかは未知数です。ただ、変化球は絶対に必要になるでしょう。スプリット、それにスライダーね。宮本さん、真っすぐだけの大谷なら今でも打てるでしょう?
宮本:無理でしょ(笑)。
ラミレス:いま僕は引退しているから、とてもハッピーです。なぜなら、彼と対戦しなくていいから(笑)。
宮本:ただ、もし対戦するなら、年齢的に自分の一番いい時に対戦したかったよね。
ラミレス:そうですね。僕が大谷を気に入っているのは、彼自身、自分が今どのような状態で、いい選手となるために何をすべきかを理解しながらプレイしていることです。自分のことをよく知っていますよね。
―― 前半戦を振り返ると、33試合連続安打のプロ野球記録にあと2つまで迫った秋山翔吾(西武)選手や、高卒2年目ながらチームの中軸として活躍している森友哉(西武)選手についてはどうですか。
宮本:秋山は前でコツンと打つのではなく、ポイントが近い。そして一定のポイントで打てるようになったことが、好調を維持できた理由じゃないかな。緩いボールを投げられ、体が前に出されたとしてもしっかり対応できています。オープン戦からずっと調子が良かったので、自信もついたのでしょう。ただ、1年だけいいというのは誰でもある。やはり、続けてこそ価値がある。
ラミレス:今年はいいと思うけど、これからどうなるかは、正直わかりません。今年は左手がうまく使えているので、去年と比べて力強い打球が飛んでいると思います。それに加え、広角に打てるようになりました。
宮本:あと森に関しては、高卒2年目であれだけバットを扱えているというのはすごいよね。しっかり振れるし、芯もとらえている。ただ、今は若いから対応できている部分があると思うけど、速い球に対してこれからどうなっていくか。森の打ち方は、しゃがむように低くして結構、特殊でしょ。あれがどういうふうに変化していくのか見ていきたい。それと、シーズンをフルにプレイするのは今年が初めてだし、この夏場をどう乗り越えていくのかも注目したい。
ラミレス:森のスイングはすごく印象的です。ただ、プロの選手としては体が小さいので、これから1年、2年、3年とプレイしていく中で、調子が悪くなった時にどうなるのか、まだわからないです。
宮本:やはり3年続けて活躍しないと。今は1年活躍すれば賞賛されるから。
ラミレス:1年だけ活躍して、その後、良かったり悪かったりで、「おい、どうしたんだよ!?」という選手はたくさんいます。日本の若い選手は、ちょっと悪くなるとすぐ動揺してしまいます。カベにぶつかった時に、どう修正していいのかわからない選手が多いのだと思います。宮本さん、そうでしょ?
宮本:自分であまり考えていないからじゃないかな。今の若い選手は昔よりも真面目で、上から言われたことはちゃんとする。でも、本当はひとつ言われたら、その先を見ないといけない。「今これをやっているんだから、別のこれもやってみようかな」というのが、今の選手にはない。だから、引き出しが増えるスピードが遅い。それと、結果が出ないと焦って、すぐにやり方を変えてしまう。それでは、ちゃんとしたものが身に付かない。
―― 投手では、森と同じく高卒2年目の松井裕樹(楽天)が頑張っています。
宮本:僕の個人的な意見としては、先発で見たい。ただ今年、抑えで結果を出していることについては、すごくいいことだと思う。クイックが遅いとか、いろいろ課題があったけど、彼なりに消化している。それはすごい。
ラミレス:そうね。いずれ先発に戻るとしても、今はいい経験を積んでいると思います。
キビタキビオ●構成 text by Kibita Kibio
寺崎敦●協力 cooperation by Terasaki Atsushi

