◆年間12万頭以上犬が殺処分されている

土屋: 現代のペット業界のでの問題点を教えてください。

松原: 私たちが取り組んでいる中では、犬の殺処分問題です。

 年間、17万頭以上の犬猫が保健所(センター)に収容されていて、そのうち12万頭以上が殺されている。5万頭が元の飼い主さんのところに戻ったり、新しい飼い主さんに譲渡されたり、保護団体の人たち、フォスターと呼ばれるボランティアさんが新しい飼い主さんが見つかるまで預かるなどして救っていますが。

土屋: これって、やはり殺処分しないと、数は増えていっちゃうものなのですか?

松原: これも都会と地方で事情が異なるのですが、殺処分をなくすために、様々な団体が活動しています。

土屋: どういう犬が殺処分の対象になるんですか、捨てられたりした犬?

松原: 捨てられた中で、新しい飼い主が見つからないと判断された犬が殺処分されています。

 病気の犬、老犬、噛む犬などが都会では処分対象になっていますが、地方では頭数が多いので、もう順番に。決まった日数が過ぎたら処分ですね。

土屋: 殺処分をゼロにする事って不可能なのですか?

松原: 熊本市が最初に達成して、最近では神奈川県もゼロにしていますから、数字をゼロにすることは不可能ではないですね。

 保健所と地域の動物保護団体が頑張って、ゼロにしている地域も増えてきました。ゼロを達成したところはセンターの職員の方の頑張りがすごく大きいんです。

 だからといって、殺処分をしているセンターの職員さんを責めるのはお門違い。そもそも犬猫を捨てる人がいなければ、センターで処分する必要も無くなるのですから。それに、そもそもの収容頭数が少ない都会でないとすぐにゼロを目指すのは難しいでしょうね。

土屋: ゼロにするためには、人間はどうすれば良いのでしょうか? SNSの情報などを目にすると、ペットとして飼わない方が良いのかなって思う人もいるのかなと。

松原: 簡単なことから言うと、犬や猫を「飼いたい!」と思ったら、保健所や動物保護団体の譲渡会に行ってもらいたいです。確かに、安易に飼うと安易に放棄してしまうということは海外でも実証されているので、飼う際にはしっかり考えて欲しいです。

土屋: ちなみに殺処分の数って、以前に比べて減ってきているのですか?

松原: 年々減少してはいます。ただし、この数字は累積なので…。捨てる人が減っているというよりも、救い出す人(保護団体)がキャパシティ以上に頑張っているんです。

◆「処分業者」「焼却炉」 闇の業者も存在

土屋: そういえば、昔は野良犬とか見た気がしますが、最近は見ませんよね。野良猫も減ったなぁ。 殺処分をしているのって、保健所だけなんですか?

松原: 野良犬が減ったことが、犬の殺処分数の減少には大きく貢献していますね。

 猫はまだまだ野良猫もいますから、処分数がなかなか減らないんです。最近は、処分業者が出て来ていると聞きます。

土屋: 処分業者? なんか怖いっすね…。

松原: 動物愛護管理法が改正されて、保健所が引き取りを拒否できるようになったんです。

 それまでは、誰がどんな理由で捨てに来ても、保健所は引き取らなければならなかったのですが、これが断れるようになった。そこで「1頭幾らで引き取ります」というような闇の業者がですね…。

土屋: って事は、12万頭の殺処分に処分業者分は入ってないんですよね。実際の数って、闇なんですか?

松原: そうですね、入っていないですね。それに繁殖場の中に焼却炉があるところもあるので…。売り物にならない子が一箇所に集められて放置され、そのまま焼却される。悲惨ですよね。

土屋: 最近SNSを見ていると、ペットショップの事が色々と書かれていますが、ペットショップにおける問題点は?

松原: ペットショップも、これも一口にくくれないくらい色んな所があります。

 まず、子犬の「仕入れ」をせり市でやっているか、直接ブリーダーさんと提携しているのか。

 生体と呼ばれる子犬を展示しない方法の店舗もあります。親のカタログがあって「この親から半年後に生まれる予定です」「あなたは5番目の申し込みなので、5頭以上子犬が生まれたら譲ります」という。海外のペットショップはたいていこの方法だと聞いています。

土屋: こりゃ酷いなってやり方だと、どんな感じですか? 

松原: いつお店に行っても生後2ヶ月の子犬が数十犬種並んでいる状態をキープするには、かなりの無理があると言えるかもしれません。

土屋: そうか!

松原: 犬の売れ時が出来るだけ幼い時なので、旬を過ぎると「商品価値」は落ちてしまう。人気犬種の子犬は高値がつきますが、そういう犬たちの親がどういう所で暮らしていて繁殖させられているのか…と考えると…。

土屋: ブリーダーという職種の現状って、なんか大変そうですね。売れなきゃ生活できない。

松原: 適正にやると、決して儲からない仕事だと聞きます。1頭2頭では話にならないので、数頭のオスと数十頭のメスがいなくてはならない。その子たちを1年に2回掛け合わせて出産させる…本当は1年に1回というのが適正といわれていますけれど。

 繁殖場の子たちは1歳になる前から、年に2回、連続して10回くらい産まされて。そうすると生まれてくる子犬の質がよくなくなるし、お母さんもカルシウムをとられて体がボロボロになる。辛い話しかないんです。

 動物保護団体の人たちが、そういうところに乗り込んで行って引き取ったりすることもあります。そんなブリーダーが繁殖させる頭数を減らしてくれれば良いのですが、彼らもたくさん子犬を産ませて売らないと生活出来ない、難しい問題なんです。

 海外では貴族とかーー英国王室の女王はコーギーのブリーダーだったんですがーーそういう人がやるものだったそうです。

 貴族が暇を持て余して、好きな犬種をたくさん飼って、掛け合わせてできた子を知り合いに譲るという、儲けなくてもいい人たちの文化だったんです。

土屋: そういう背景だと理解ができますね!

松原: そうなんですよ、それが日本では生業になっているので無理が生じてくる。でも、ブリーダーと繁殖業者を分けて考えないと。一口に繁殖自体が悪いというのも間違ってますし。


土屋: ブリーダーと繁殖業者の違いってなんですか?

松原: 繁殖業者は売れる子犬をただたくさんーーまさにパピーミルと呼ばれますがーー工場のように産ませ続けている業者ですね。ブリーダーは、その犬種が好きで、その良さを他の人にも伝えたいから、子犬を産ませて分けてあげる人という感じでしょうか。