◆動物愛護団体からもらい受けるメリットも

土屋: なるほど。日本で健康的にペットビジネスが展開されるには、どういう流れになると良いと思われますか?

松原:まず、飼い主がこういう現状を知ることだと思います。犬が好きな人は、自分の愛犬をパピーミルから迎えたいとは思わないですよね? となるときちんとしたブリーダーを選ぶか、もしくは欧米では最もメジャーな方法である保護犬、保護猫を迎えるという選択をする、と。

土屋: 先に飼いたい犬の種類を決めて、1年ぐらい待つみたいな。受注生産にしたらちょっとは良くなるんでしょうか。

松原: そうですね、受注生産で繁殖をしているブリーダーさんは、ホンモノだと思います。

 ただ犬種を選ぶ際の飼う側の知識は求められます。ブリーダーはお金を払えば犬を買える場所ではないんです。

 小さな子どもがいるとか高齢者が飼うのに運動量が多い猟犬は適していませんし、見た目がかわいくてもテリア種はそもそもネズミ駆除のために繁殖された犬たちなので、スイッチが入ると気性が荒いですし。

 飼う時は犬にも我慢してもらわなくてはいけない部分はありますけど、犬の特性というものもあるんです。

 そこを考えるのが、今の日本に欠けていることかもしれませんね。見た目とか流行りで選んじゃうから…。


土屋: ペットコンシェルジュみたいな方がいれば良いのでしょうか。

松原: そうなんです、飼う前に自分たちのライフスタイルに合っている犬は何か考えることが大切です。「Do One Good」でも相談に応じていますが、まだまだ相談される方は少ないですね。

土屋: ちなみに保健所に行った事がないのですが、保護犬とかは展示されているのですか?

松原: 保護犬は一般公開はされていなくて、保健所の中の収容棟にいることが多いです。ただ、保健所の職員さんが譲渡対象と選んだ犬は、見られる施設が増えていますね。長野県にあるハローアニマルという施設は、それに特化してます。

土屋: ここが綺麗に展示される様になり、そこに「Do One Good」さんのように、説明してくれる仕組みができれば良い気がするのですが…。

松原: 保健所から直で貰い受ける方法もありますが、動物愛護団体を間に挟むメリットもありますよ。

 捨てられた犬は人間不信のようになっていたり、しつけができていなかったりする場合もあります。保護団体では、「フォスター」と呼ばれる一時預かりのボランティアさんが自宅で愛犬同様に飼ってくれるので、人間不信が弱まるとか、トイレのしつけ等が済んでいるとか、ある程度家庭に慣れた状態で飼うことができるんです。

 それにフォスターさんはその犬の性格を知っているので、より細やかなマッチングができるんです。例えば、ダックスでも活動的な犬もいれば、おとなしい犬もいます。

 ペットショップでは、そもそも子犬ですからそこまで個々の性格は把握できないですよね。

土屋: 松原さんにとって、理想の人間とペットのありかたってどんな世界ですか?

松原: 理想の在り方ですか…人がペットと一緒に暮らす歴史は2万年とも言われています。その中でペットは私たちに色んなことを教えてくれる存在、まさに家族の一員になっている。

 ですから、基本的には飼える環境下にある人で、飼いたい人が共に暮らせるのが理想かなと。

 犬については「掘る・噛む・吠える」が3大欲求なんです。それを抑えた状態でいい子にしていないさいって言うのは無理な話。たまには思い切り走らせ、吠えさせて、掘らせてあげる場を提供してあげないと、犬を理解したとは言えないんです。

 「人と同じように扱ってあげてる」というのは、ちょっと違うと思います。ペットが癒しをくれるという話がありますが、あれは実は逆で、ペットがくつろげる、安心して居られる環境を人間が提供して始めて、ペットはその場で癒しの存在になるんです。

 ただただペットと暮らせば癒してくれるわけではなく、まずは人間が彼らの福祉を十分に担保してあげることなんですよ。

 国際的動物福祉の基本に5つの自由というのがあって、「飢えと渇きからの自由」「不快からの自由」「痛み・傷害・病気からの自由」「恐怖や抑圧からの自由」「正常な行動を表現する自由」、それを担保して初めて、ペットとどう楽しめるのか、なのだと思います。