スポーツ選手のユニフォームや用具に掲出されるスポンサー企業の広告は、チーム・選手の活動を支える重要なもの。その広告が世間に広くアピールされることによって、チームや選手は広告収入を得ることができ、活動することができます。

したがって、選手側もその広告の露出には常に気を配る必要があります。スキーの選手がインタビューを受ける際にスキー板についた雪を払うのも、板に掲出されたスポンサーのロゴが雪で隠れてしまうのを防ぐためだったりするのです。

そんな中、サッカーにおいてはひとつ厄介な問題があります。

それは、俗にキャプテンマークと呼ばれる腕章によって、ユニフォームの袖の広告が隠れてしまうことです。Jリーグの場合、ユニフォームの袖に掲出できる広告は「左腕の袖にひとつ」と決まっています。右腕の袖にはJリーグが指定する大会マーク(Jリーグのロゴなど)を掲出することになっており、広告は掲出できません。

もし右利きの選手がキャプテンマークを巻こうとしたらどうなるか。普通に利き手の反対側にキャプテンマークを巻くと、左袖の大事な広告が隠れてしまうのです。じゃあそうならないようにハチマキとかタスキとかでキャプテンを示せばいいような気もしますが、Jリーグではキャプテンを示すために「アームバンドを巻く」という規定になっています。アームバンドでなければいけないのです。(参考 Jリーグユニフォーム要項:http://www.jleague.jp/docs/aboutj/regulation/23.pdf

これは困った、ということでチームごとに対応が生まれることになります。袖広告を避けるようにして、肩に近い位置までキャプテンマークを上げるパターン。頑張って右袖にキャプテンマークをつけるパターン。特に何も考えず、左腕にキャプテンマークを巻くパターンなどです。

何も考えないパターンの場合どうなるかというと、キャプテンマークで袖広告が隠れるばかりか、キャプテンマークに最初から書いてあるナイキやアディダス、プーマなど用具メーカーのロゴで袖広告が上書きされる格好になってしまうのです。これでは袖広告を掲出したスポンサーさんもガッカリですよね。

どうやら、ユニフォームについては細かい規定があるものの、キャプテンマークについてはそこまでの縛りがない模様。多くのチームは用具メーカーが販売しているものをそのまま使用しており、その結果、メーカーのロゴが大きく表示されてしまったりするのです。

また、さらに自由なパターンでは名古屋グランパスの闘莉王さんがキャプテンをつとめる際は、キャプテンマークにチームエンブレムや日の丸、あるいは「闘え!」というメッセージを記載していることもあり、グレーな遊びかたも可能である模様。(参考画像 2015年3月22日のJ1リーグ第3節での闘莉王さんのキャプテンマーク:http://nagoya-grampus.jp/fan/photogallery/assets_c/2015/03/150322-game-05.jpg

このグレーゾーンに目をつけたチームがジュビロ磐田ジュビロ磐田では、左袖に浜松ホトニクス株式会社の広告を掲出しているのですが、何とキャプテンマークにも同社のロゴを記載しているのです。これであれば、何も考えずに左腕にキャプテンマークを巻いても、スポンサーの袖広告が見えなくなることはありません。かなりグレーゾーンな気がしますが、上手いことを考えたものです。

しかし、それに飽き足らず、さらなる広告効果アップを目指したのがジュビロ磐田松井大輔さん。松井さんは「そもそも袖の上にキャプテンマークを巻く必要があるのだろうか?」という根本的な部分に突っ込んでいきます。何と4月29日のJ2リーグ第10節において、松井さんは袖より完全に下、剥き出しの素肌のヒジあたりにキャプテンマークを巻くという着こなしを見せたのです。(参考画像 2015年4月29日のJ2リーグ第10節での松井大輔さんのキャプテンマーク:http://www.jubilo-iwata.co.jp/lib/images/photo/archive/150429_09.jpg

これにより、松井さんはスポンサーの袖広告を普通に見せたうえで、キャプテンマークに掲出した広告と合わせて「袖広告ダブル掲出」を達成することになったのです。単にバンドがキツくて上まであげられなかっただけかもしれませんが、結果的に広告効果は2倍となりました。こうした細かい気遣いがスポンサーを喜ばせるのだとしたら、ほかのチームも松井流着こなしを参考にしたほうがいいかもしれません。広告効果、あげていきたいですからね。

(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/