慣れた手つきでクッキーの生地を伸ばす。14日、神奈川県横浜市の「横浜・夢工房」で。(撮影:佐藤学)

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横浜市と人材サービスのテンプスタッフ<2476>が共同して5月に立ち上げたクッキーの製造工場「横浜・夢工房」では現在、45人の知的障害者がクッキー作りの研究・練習に励んでいる。これまで、同社の株主総会をはじめ、3回ほど試作品を配り、提供するごとに評判を上げている。業務用オーブンや冷蔵庫の助成金が下り、器材がそろいしだい本格的な製造・販売を開始するという。

 「横浜・夢工房」の生産行程は、小麦や卵などを混ぜるミキシング、練り上がった生地を伸ばして巻いたり型抜きをする成形、型ができたクッキーをオーブンで焼く焼形、シールやリボンをつけてラッピングする包装の4つ。1日6時間、週30時間労働。クッキーを焼く一般の障害者作業所の月1万円ほどの手当てに比べて、「横浜・夢工房」に勤務する障害者は、日給4500円で月に換算すると約10倍の月収になるとあって、初給与を手にした障害者はさらなるやる気を出しているという。

 採用の条件は、まず第一に一人で通勤可能なこと。与えられた業務をこなすほかに、コミニケーションスキルも大切な要素だ。3カ月の試用期間中に、4つの生産行程を経験し、それぞれ能力や向き不向きを見極めた上で、本人の希望を重視して部署に配属する。材料をこねるミキシングは男性が多い。リーダーシップを発揮し、指導者として勤務する者もいる。

 テンプスタッフで障害者専門の人材紹介などを手掛ける大曲敏之取締役・事業本部長は「単純作業でも集中が途切れないのが、かれらの強みです」と話す。夢は日本一のクッキーを障害者の手で作ること。頭にバンダナを巻き、エプロンをかけ、マスクをつけた障害者の一人は、作業の手を休め「ここで働くことが凄く楽しい」と笑顔を見せた。障害者のひたむきさが結集できれば、クッキーからさらなる夢が生まれる。【了】