先週の9月26日、NAR(全米不動産業協会)は8月の中古住宅販売統計を発表したが、それによると、販売戸数は前月比2.0%増の729万戸(年率換算、季節調整済み)となり、6月に記録した過去最高の735万戸に再び迫る勢いを示した。市場予想のコンセンサスである711万戸を上回り、依然として、住宅バブルが続いていることを確認する結果となったが、その一方で、翌27日に米商務省が発表した8月の新築住宅販売統計では、販売戸数は前月比9.9%減の124万戸(年率換算、季節調整済み)と大幅に減少し、市場予想のコンセンサス134万戸を大幅に下回るという、極めて対照的な結果を示した。一見すると、米国の住宅販売の80%以上を占める中古住宅市場の1カ月先を行くという住宅市場の先行指標となっている新築住宅販売統計にかげりが見えたことで、米国の住宅ブームも終焉が始まった兆候と受けとめられかねないのだが、米国のエコノミストの多くは、住宅バブル終焉の兆候ではないと強気の見方を保っている。

  8月の新築住宅販売統計は、前月比9.9%減の124万戸となったわけだが、これは2004年11月の同10%減以来、9カ月ぶりの大幅下落で、市場予想では5%減と見られていたので、2倍の下げ幅だ。前月(7月)は速報値で141万戸と過去最高を更新し、今回の統計で137万戸に下方改定された関係で、伸び率も改定前の前月比6.5%増から同5.3%増に改定されたものの、これからも分かるように、この統計は月によって、バラつきが多いことで知られており、市場では、8月の10%近い急落でも驚きもなく冷静に見ている。この統計では、もう一つの重要なデータがある。それは住宅価格の動向だ。8月の住宅価格の中心値は、7月の下落から8月は前月比2.5%増の22万0300円に反発しており、価格面から見る限り、バブル傾向は続いているのだ。

  ただ、NAHB(全米住宅産業協会)のエコノミストは、10−12月期の新築住宅販売は、今よりも一段と減少すると予想している。8月末にメキシコ湾岸一帯襲って甚大な損害を与えたハリケーン「カトリーナ」による復興需要で、2006年には2万5000戸の需要が見込めることを考慮しても、2006年は前年比で約5%減少するとも予想している。また、別のエコノミストも、最近の住宅ローンの金利上昇の影響が出始めて、2006年は新築も中古も住宅販売は減速し、住宅価格の上昇ペースは鈍化、または、下落もありうるという。住宅ローン金利は、米住宅金融最大手のフレディマック(米連邦住宅金融抵当公庫)によると、8月末時点での30年固定金利ローンの金利は5.82%で、7月の5.70%から上昇している。NARでは来年には6.4-6.5%に上昇すると見ている。また、カトリーナの影響で、同湾岸地域に集中する石油関連施設の操業が停止している影響で、石油価格が急騰し、そのあおりで、材木やセメントなどの建築資材の価格も急騰してきていることから、新築住宅価格が上昇し、その結果、割安な中古住宅市場に需要がシフトして、中古住宅の販売価格を押し上げるので、住宅価格の値ごろ感が薄れると指摘するエコノミストもいる。

  一方、8月の中古住宅販売は、前月比2.0%増の729万戸と好調を維持している。ただ、問題なのは、住宅在庫の動向だ。8月末時点の販売可能な住宅在庫は、前月比3.5%増の286万戸となり、在庫水準も7月の4.6カ月分から4.7カ月に上昇し、2003年11月以来、1年9カ月ぶりの高水準となった。つまり、住宅の供給が増えたわけだが、NARによると、売りと買いの需給バランスがニュートラルといわれる水準である6カ月をまだ下回っていることから、依然、需給はタイトだとしている。このため、住宅販売価格も8月の中心値は前年比15.8%増(前月比0.9%増)の22万ドルと1979年7月の17.2%増以来の高い水準となったが、当面は、上昇が続くと予想している。しかし、NARの主任エコノミストのデービッド・レリア氏は、まだ、住宅ローン金利は、1年前の昨年8月の5.87%よりは低い水準なので、価格の値ごろ感が残り、住宅市場はかなり強いと見る。