リニア中央新幹線の早期実現を求める山梨県の看板。「リニア中央新幹線が日本を変える」と書かれている(2007年撮影)。

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JR東海が進めているリニア中央新幹線について、その工事が国道交通省から認可されました。なぜJR東海リニア中央新幹線を建設するのか、その目的を改めてまとめます。

リニア中央新幹線にある重要性と緊急性

 2014年10月17日(金)、国土交通省はJR東海が2027年の開業を目指しているリニア中央新幹線の東京(品川)〜名古屋間について、その工事を認可しました。

 これを受けてJR東海は「日本の大動脈輸送の二重系化を実現するプロジェクトがいよいよ建設の段階に入っていきますので、関係者のご理解やご協力をいただきながら、安全と環境、地域との連携を重視して、早期実現に向けて取り組んでまいります」と述べています。

 ここでJR東海が挙げるリニア中央新幹線が持つふたつの大きな目的について、改めてまとめます。

 ひとつ目はそのコメントにもあるように、「日本の大動脈を二重化する」という目的です。東京、大阪、名古屋といった日本有数の大都市を結び、1日あたり42万4千人(2014年3月期)が利用する東海道新幹線が大地震などで被災。長期間運転が不能になれば、日本経済にも大きな支障が出る可能性があります。またJR東海は2011年、「東日本大震災によって、大動脈輸送の二重化の重要性・緊急性をさらに強く感じた」というコメントを出しています。

「二重化」するもうひとつの意味と「世界」への視線

 「日本の大動脈の二重化」は、もうひとつの意味があります。今年10月1日に50周年を迎えた東海道新幹線の経年劣化対策です。JR東海は列車を運休させず高架橋やトンネルといった設備の延命を実現する技術を開発し、現在、東海道新幹線で大規模改修工事を行っていますが、だからといって永遠に使い続けられるわけではありません。もし東海道新幹線の運行を止めて工事する必要が生じた場合、代わりになる路線がなければ日本の大動脈が止まってしまいます。

 ふたつ目は経済効果です。リニア沿線はもちろん、東京、大阪、名古屋の三大都市圏をより短い時間で結ぶことで日本の経済、社会活動が活性化するほか、超電導リニアに伴う様々な最先端技術の実現によって製造業も活性化。そうした技術は高性能材料、電力供給、環境、医療、宇宙開発など鉄道以外の分野への応用も考えられ、日本製造業の国際競争力強化といった波及効果も期待できるとしています。

 そして超電導リニアは19世紀に商用鉄道が誕生して以来2世紀ぶりに、日本独自の技術によってもたらされる鉄道システムのブレイクスルーであり、世界で高速鉄道の需要が伸びている現在、海外へ日本の鉄道技術を輸出していくにあたってビジネスチャンスの拡大が期待されるとしています。

 またリニア中央新幹線によって東海道新幹線の役割が変わるため、現在の状況では難しい「ひかり」「こだま」の増発や新駅の設置など、東海道新幹線の新たな活用可能性が生まれます。

 新幹線が開業する前、1962(昭和37)年から始まっている、国鉄によるリニアモーターカーの開発。それからおよそ半世紀を経て、いよいよ実現が見えてきました。ただそこには大阪への延伸や工事残土問題など懸念される要素も存在。今後の進展が注目されます。