悲運のパナソニックスマホ!苦戦の歴史と撤退となれば残念すぎる理由

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パナソニックが個人向けのスマートフォン(スマホ)事業から撤退するのではないかという報道により、国内市場に大きな動揺が起きています。

パナソニックといえば、従来型の携帯電話(ガラケー)では、二つ折りやスライドタイプ、カメラ機能重視のモデルなど人気の高い機種でシェア上位を占めていたメーカーです。以前からパナソニックの機種を使っている人は、パナソニック指名で機種変更をするファンも決して少なくないほどの人気メーカーでもあります。

冷蔵庫や洗濯機など白物家電からAV機器にいたるまで、日本人が使いやすく、世界でも競争力のある家電製品を手がけるパナソニックですが、スマホの分野ではどうして、撤退報道が出るほど苦戦したのでしょうか?

パナソニック スマホの歴史を振り返りながら考えてみましょう。

■思っているほど出遅れてはいなかった
国内において、プラットフォームにAndroidを採用した国内メーカー製のスマホの展開については、2010年6月にKDDI auから「IS01」を、10月に「IS03」を発表してシャープが先陣を切っています。

わずかに早く2010年4月に現在のソニーモバイルの前進となるソニー・エリクソンがNTTドコモ向けに「Xperia SO-01B」を発売していますが、この時点では厳密には国内メーカーではなく、グルーバル展開の一つとして海外で開発された製品を日本でも販売という形でしたので、国内(開発)メーカー製という括りには収まらないシリーズとなります。

その他の国内メーカーは、2010年の秋モデル、冬モデルから東芝のREGZA PhoneやNECカシオのMEDIASが登場しますが、Xperiaを含め本格的な展開が始まったのは、2011年春モデルおよび夏モデル辺りで、この時期から日本市場にも国内メーカー製品が一気にラインナップが増え、市場全体がスマホへの移行に動きはじめます。

そんな中、パナソニックも他社と同様に2011年NTTドコモ夏モデルで同社初のスマホ「P-07C」を発表します。

しかし、この時点でスマートフォンのブランド展開を明確にしているのはXperia(ソニー・エリクソン)やGALAXY、Desireなど複数ブランドで展開していたHTCくらいで、まだ国内メーカーはガラケー時代の「型番」での展開が一般的でした。

現在国内で大きな成功を勝ち取ったXperiaブランドは、すでに前年から海外で展開しており、国内初登場からブランドを強く押し出していたことと比べると対象的でした。


■LUMIX Phoneスマホを投入が裏目に
パナソニックは初のスマホ NTTドコモP-07Cをリリース後、同年の冬春モデルで、ガラケーでも展開した「LUMIX Phone」ブランドを採用した製品の展開をはじめます。NTTドコモ、ソフトバンクモバイル両社に機種提供をしたことからも、同社としてもかなり注力したと思われます。

ただ、当時のAndroidスマートフォンはOS 2.x台ということもあり、高画質なカメラ機能を十分に活かせる処理能力や機能に乏しく、デジタルカメラとしてメジャーなブランドである「LUMIX(ルミックス)」を活かしきれなかったといえます。なにより、まだスマートフォン市場が立ち上がったばかりで、現在のようなスマートフォン=高機能なカメラといった認識もユーザーや市場に浸透してはおらず、ルミックスブランドを活かすには時代が早すぎたのかも知れません。


■ELUGAブランドの変更で消費者と市場に戸惑いと混乱
2012年に入ると、パナソニックはスマホの大画面時代にいち早く合わせて、5インチ液晶モデルをフラッグシップとした「ELUGA(エルーガ)」 ブランドを立ち上げます。しかし、前年のLUMIX Phoneから馴染みのないELUGAブランドへの急な変更はユーザーや市場での戸惑いや混乱を招き、少なくともLUMIXブランドを打ち出した時ほどの期待感やインパクトは生まれ難かったことは間違いありません。

商品ブランドの変更は消費者だけでなく、販売店での認知や浸透にもある程度の時間がかかります。また機能面も5インチの大画面スマホにシフトしたことで、NTTドコモから登場した「ELUGAV P-06D」、「ELUGAPower P-07D」は、完成度もまだ高くはなく、ブランド認知までの時間と併せて、ELUGAブランドを十分に浸透させるには至らなかったといえます。

■第2世代で高い完成度とパナソニックらしさを確立したELUGAだが・・・
2013年に入るとELUGAは、使い勝手が良いパナソニックらしいスマートフォンに進化します。シンプルなガラケーライクなメニューや、置くだけ充電器もセットで同梱するなど、日本のユーザーが扱いやすいスマホスタイルを確立し提供してきました。

ところが、これからという矢先にNTTドコモのツートップ戦略の影響を受け、製品注目度が大きく下がってしまいます。


パナソニックの強みを活かしきれなかった3年間
市場参入から製品の完成度が高まるまでの期間は、他社と比べてもそれほど大きな違いはありません。パナソニックのスマホが他社と大きく異なったのはブランドイメージの迷走でしょう。

2011年から2013年までの期間でパナソニック、LUMIX Phone、ELUGAとブランドが変更したことは市場での認知や浸透という面で影響があったと思われます。また現在では、カメラ機能をセールスポイントとして打ち出す機種が多くなったことを考えると「LUMIX(ルミックス)」ブランドを早々に外した選択も惜しまれることでしょう。

さらにガラケー時代には、「二つ折りのパナソニック」「薄くて小さいパナソニック」などといったデザイン面での強力なブランドイメージがありましたが、スマホではパナソニックブランドを象徴するようなデザイン的な特徴を確立できなかったことも苦戦を強いられた要素の一つかもしれません。


とはいえ、現在のパナソニックのスマホ ELUGAシリーズは、完成度の高さや使い勝手の良さで、初心者から既存の利用者に至るまで幅広いユーザーが満足できる製品に仕上がっており、もし、本当に個人向けスマホ市場からの撤退が事実となるのであれば、ユーザーにとっても市場にとっても非常に残念な結果といえます。

これからがパナソニックのスマホの良さが華開くと思わせるスマホが登場しただけに、事業を継続して製品の提供を続けて欲しいものです。


パナソニックスマートフォンの歴史
○2011年夏モデル
NTTドコモ P-07C

○2011年度冬春モデル
NTTドコモ P-01D
NTTドコモ LUMIX Phone P-02D
ソフトバンクモバイル LUMIX Phone 101P

○2012
NTTドコモ ELUGAV P-06D
NTTドコモ ELUGAPower P-07D
NTTドコモ P-04D

○2013春モデル
NTTドコモ ELUGA X P-02E

○2013夏モデル
NTTドコモ ELUGA P P-03E


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