一歩裏に回れば台所は火の車−−。
 名横綱といわれた初代若乃花や輪島、大関魁傑らを輩出した大相撲の名門、花籠部屋が、5月6日から始まる夏場所(両国国技館)の終了後、閉鎖されることになった。

 4月11日、両国国技館内で開かれた二所ノ関一門会で師匠の花籠親方(53、元関脇太寿山)が一門の親方衆に報告したもの。所属の十両・荒鷲ら10人の力士、行司らは同じ二所ノ関一門の峰崎部屋に移籍する予定で、花籠親方は、
 「弟子たちにはすでに話してあるが、夏場所で(移籍先の)力士たちと顔が合う可能性があるので、場所が終わるまでそっとしておいて欲しい」
 と話している。

 これで、このわずか1年半足らずで部屋を閉じるのは5部屋目。相撲部屋に何が起こっているのか。
 「花籠部屋は、継承した輪島の不祥事でいったん閉鎖されたが、現師匠が平成4年に再興し、今年で21年目。この間、どちらもモンゴル出身ですが、光龍、荒鷲という2人の関取を誕生させるなど、堅実な部屋経営で知られていました。しかも親方の定年までまだ12年もある。それだけに、この突然の閉鎖の知らせに驚きの声を上げる親方衆は多い」(担当記者)

 閉鎖の理由について、花籠親方は固く口を閉ざしているが、部屋関係者は、
 「部屋の経営が苦しくなった」
 と明かしている。

 幕下以下の力士1人につき、養成費として1カ月7万円などが相撲協会から支給されているが、ただでさえ大食漢の力士たちの胃袋から着るものまではとてもまかないきれない。
 「景気がよかった頃は、それこそタニマチからの差し入れや、ご祝儀が引きも切らず、部屋持ちの親方たちはわが世の春を謳歌していたんですけど、最近はさっぱり。新弟子を獲得したくても少子化で思うようにはいかない。まさに八方塞がりの状態で、やる気を失う親方が出てきてもおかしくない」(相撲関係者)

 これに追い打ちをかけているのが、公益財団法人化に向けた年寄株改革。今後は相撲協会の一括管理となり、これまでのような高値売買や後継者指名もできなくなる。要するに、部屋経営のウマ味が何にもなくなってしまったのだ。
 8年前には相撲部屋が55あった。これが花籠部屋の閉鎖で46になる。これからさらに減ることだけは間違いない。