環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏

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 福島第1原発の事故を受け、経産省の「総合資源エネルギー調査会」は、有識者による基本問題委員会を2011年10月3日から開き、エネルギー政策の抜本的な見直しについての議論を始めた。同委員会の委員のひとりである飯田哲也氏は10月21日、北海道大学公共政策大学院(HOPS)で特別講座を開講。自然エネルギー発電が「技術学習効果で、作れば作るほど安くなる」のに対し、原子力発電は「作れば作るほど高くなる」と語った。

 北海道大学公共政策大学院(HOPS)は週1回、「北大×ニコ生×WEBRONZA 特別講義 原発、復興、メディア」と題した特別講座を開き、その模様をニコニコ生放送が録画放送、朝日新聞社の運営する言論サイト「WEBRONZA」が抄録テキストを掲載している。21日には、「環境エネルギー政策研究所」所長の飯田哲也氏を講師に迎えた。

 飯田氏は大学卒業後、原子力を取り巻くアカデミズム、原子力産業の現場、原子力発電に関わる電力会社や監督官庁など広く原子力に携わった。その後、環境エネルギー革命が始まった頃のスウェーデンに渡り、「市民参加型の社会の中で、世界がリアルに変わっていく」様子を目の当たりにし、帰国後はエネルギー政策のあり方を変えようと活動してきた。

「自然エネルギーは『技術学習効果』で作れば作るほど安くなるが、原子力は『技術物忘れ効果』で作れば作るほど(コストが)高くなるのが世界のトレンド」

 脱原発を訴える飯田氏は、コスト面から脱原発の必要性を訴える。「コスト高」の一例であるフィンランドのオルキルオト発電所3号機は、約3500億円の予算で作り始めたものの、コストがかさみにかさみ、このまま完成したとしても建設費が1兆5000億円にのぼる可能性があるという。加えて原発を自己責任で運営するには、事故が起きた場合に備え、多額の保険料が必要となる。その一方で、風力、太陽光などの自然エネルギーには原発のようなリスクはないため、これらを利用した発電コストは抑えられるという。

 また飯田氏は、風力、太陽光エネルギーの市場は拡大しているとし、数年のうちに風力や太陽光での発電量が原子力の発電量を上回ると予想する。そして、

「自然エネルギーは『たいしたことない』と固定観念にとらわれている人が多いが、自然エネルギーの大元にある太陽光エネルギーは、世界で消費される化石燃料および原子力のおよそ1万倍」

と、自然エネルギーが秘める可能性を強調。自然エネルギーは「人類のエネルギーを変えることができる」と述べ、農業革命・産業革命・IT革命に次ぐ「第4の革命」になり得るとした。その上で、「ちょっと前までエネルギー政策をやる人は、自然エネルギーをメインストリームで考えることはまったくなかったが、時代は変わってきている」と語った。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 飯田氏の語る「第4の革命」から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv67982821?po=newslivedoor&ref=news#27:00

(三好尚紀)