■近年まれにまれに見る混戦のJ2ディヴィジョン

9月に入って、首位のFC東京から6位のサガン鳥栖までの勝点差はわずかに“3”しかない。
この混戦の大きな要因は、“本命”と見られた有力なチームが出足でつまずいたこととそれに続く中堅どころのチームの健闘に他ならない。

鳥栖は開幕前には、本命どころかその中堅どころのなかにも名をあげる専門家は少なかった。
地方の零細クラブであることと99年のJ2創設以来一度もJ1への昇格を果たしていないこと、そして尹晶煥監督の監督としての1年目であることなどが理由にあげられていた。

確かに、尹晶煥監督は「J1昇格はお約束できないが、全力で戦うことだけはお約束します」と就任会見でコメントしていた。監督自身も、今季の戦力を他クラブと比較して、昇格は難しいと肌で感じていたに違いない。
しかし、前半戦を終了した段階で、「全力で戦います」との約束を果たしているだけでなく、この時期に首位をもうかがう位置につける結果を出している。

■鳥栖が上位に位置している理由

軒並み、“昇格候補”といわれているチームが苦戦している状況も背景にはあるだろう。
しかし、鳥栖が上位に位置している理由はそれだけではない。

前回のコラムでも書かせていただいたが、今季の鳥栖は、『失点が少ない』のである。
首位のFC東京に続くリーグ2位タイ(第26節消化時点・中断による未消化試合を除く)の少なさなのである。
昨季は1試合平均1・14失点だったが、今季はここまで0・78失点と守備での健闘が光る。
この失点の少なさに、今季の得点力が加わったことで上位に位置していることがわかる。
昨季の1試合平均得点は1・17得点。昨季は、失点数と得点数の差がわずかであったが、今年はその差に顕著な違いを見ることができる。

ここまでの1試合平均得点は、1・43得点で、得失点差は+15と首位のFC東京と3点差まで積み上げた。
試合の内訳を見ると、無失点勝利が11勝中6勝と堅実な試合運びが見える。また、ここまで6敗を喫しているが、全てが1失点差と接戦であることも裏付けている。

とはいえ、前述したように今季は首位を独走しているチームはない。出足でつまずくか、思うように勝点を上積みできず中位に位置しているチームもいる。
鳥栖も、第14節水戸戦で5-0と大勝したあとに勝点が伸びない時期があった。
水戸戦以降の10試合は、2勝5分4敗と失速した。残り15分での失点での引き分けや敗戦が増えたことによる。

言い換えると先制点が取れず、終盤に粘ることができずに失点した試合が増えていたのである。

■継続こそ力なり

この勝てない時期でも尹晶煥監督は「今まで鳥栖がやってきた事を続ける」といい続けてきた。
周りからの雑音は耳に届いていたに違いない。しかし、そこで戦い方を変えない頑固さは、選手たちへの信頼から出ているものだろう。
そういえば、尹晶煥監督から選手や審判への非難を聞いたことが無い。試合後のコメントでも、「選手は勝利に向けて一生懸命戦ってきた」と必ず入る。
それだけ、選手を信頼し自ら選出した選手たちの結果を全て背負っているのである。

その信頼が結果として出始めたのが、第24節鳥取戦からである。
退場者を出しながらも10人で1-0と辛勝すると、その次節も同様に10人で完封勝利を飾った。
この連勝で、勢いがついて続く水戸戦、鳥取戦と勝点を上積み続けた。
怪我人がチームに合流できたことも大きい。そして、それにより「今まで鳥栖がやってきた事を続ける」(尹晶煥監督)ことが、全員でできるようになった事が4連勝とつながっている。

試合をこなすたびに、様々な課題もうまれ克服し、時間を経るごとに今季の鳥栖が固まってきた。
「できるだけ高いところでボールを奪い、奪ったボールはつないでシュートまで持っていく」単純なことが、選手個々の能力とアイデアを加えて“鳥栖のやるべきこと”として形になってきた。その形こそが、攻守のバランスであり、今季の鳥栖の強さなのである。
尹晶煥監督が「どこが相手でも怖くない」と言葉は、今の鳥栖の好調さを裏付けている。。

■著者プロフィール
サカクラゲン
佐賀県出身。『J's GOAL』や『サッカーダイジェスト』・『ELGOLAZO』・『サッカーマガジン』などで主にサガン鳥栖関連の記事を寄稿している。またCS放送スカパーJリーグ中継で主に鳥栖スタジアム開催試合の解説を行うことも多い。


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