■ ACL

ACLのグループリーグの第3節。震災の影響でクラブの活動を停止していた鹿島アントラーズがアウェーで韓国の水原と対戦。水原は1勝1分けでグループ首位に立っている。一方、鹿島は初戦で上海申花と対戦してスコアレスドロー。第2戦は延期になったので、ここまで1分けである。

鹿島は<4-2-2-2>。GK曽ヶ端。DF新井場、岩政、中田浩、アレックス。MF青木、小笠原、野沢、フェリペ・ガブリエル。FW興梠、大迫。FWカルロン、FW田代、MF増田、MF本山らがベンチスタート。MF西、MF本田拓の移籍組は遠征に参加してない。

水原は昨シーズンはFW高原が所属したクラブで、FW高原はKリーグで12試合に出場して4ゴールをマークした。それ以外にも、元大宮アルディージャのDFマト、元横浜FCのDFオ・ボムソク、元FC東京のMFオ・ジャンウン、元ジェフ千葉のMF朴宗真、元柏レイソルのFWチェ・ソングクと日本になじみのある選手が多く在籍しているクラブである。MFオ・ジャンウンはFC東京U-18出身で、MF梶山陽平、FW李忠成、DF鎌田次郎が同期となる。

■ 1対1のドロー

久々の公式戦となった鹿島は、立ち上がりは波に乗ることができずに、水原にチャンスを作られるが、前半25分あたりを過ぎると、鹿島がペースを握るようになる。MF野沢のフリーキック、FW興梠のGkとの1対1、DFアレックスの飛び出しなど、立て続けにビッグチャンスをつかむ。しかし、シュート精度を欠いてゴールは奪えず。前半は0対0で終了する。

スコアレスで迎えた後半22分に、水原は左サイドからスローインを得ると、ゴール前にロングスローを入れると、韓国代表のFWヨム・ギフンが頭で押し込んで水原が先制する。しかし、鹿島もその4分後にコーナーキックを獲得すると、MF野沢のボールをニアでDF岩政が触って、その裏に入り込んでいたMF中田浩が左足で押し込んで同点に追いつく。

その後、鹿島は途中出場のMF本山のドリブルからチャンスを作るが逆転はできず。結局、1対1で狩猟。水原は1勝2分け、鹿島は2分けとなった。鹿島は第4節でシドニーFCと対戦する。

■ 久々の公式戦

震災の影響を受けて活動を休止していた鹿島は、3月28日に練習を再開したばかりで、10日ほどしか経っていないので、コンディション面で心配されたが、思っていた以上に選手たちのコンディションは良かった。序盤こそ、水原に攻め込まれたが、その後は、何度も決定機を作って、押し気味で試合を進めた。

ロングスルーから失点を許したが、セットプレーから追いついてドロー。初戦もアウェーでドローだったが、アウェー2試合で2引き分けというのは悪くない結果であり、最初にアウェー3戦を行ってからホームで3連戦を行うというイレギュラーな形となるが、グループリーグ突破に向けて、まずまずのスタートを切ったといえる。

攻撃では、執拗にDFマトを狙っていってチャンスを作ったが、このあたりは、昨シーズンまで大宮アルディージャでプレーしていた選手なので、穴になることもよく分かっていたのだろう。チャンスに決めれなかったのは痛かったが、決定機は多かった。

■ フォワード陣にゴールなし

オフに大型補強を行った鹿島は、名古屋グランパスと並んでJ1では随一の戦力を誇るクラブであるが、ゼロックス(名古屋戦)、リーグ戦(大宮戦)、ACL(上海戦、水原戦)と4試合を終えて、ゴールは5点だけ。MF野沢、MF中田浩、DF岩政、DF伊野波、オウンゴールという内訳であり、フォワード陣にゴールが生まれていない。

昨シーズンまでは、FWマルキーニョスとFW興梠の2トップで不動であったが、今シーズンは、FW興梠を軸にして、FW大迫、FW田代、FWカルロンが起用されているが、まだしっくりきておらず、軸となるFW興梠にもゴールは生まれていない。実績のあるFWカルロンがフィットしきれておらずにベンチスタートとなっているのが誤算であるが、現状では、FWマルキーニョスの穴を埋められておらず、厳しい戦いが続いている。

■ MFフェリペ・ガブリエルへのこだわり

もともと、FWマルキーニョスも、FW興梠も、サイドに流れてプレーすることが好きなフォワードであり、サイドに流れたところを2列目の選手が入り込んでゴールを奪うというのが、鹿島の1つの形になっているが、MF野沢、MFフェリペ・ガブリエルの二人が、十分な働きができておらず、得点力に問題が生じている。フル出場は厳しいが、ベンチにはMF本山というタレントがいて、MF本山が入ってくると流れは良くなるが、MF野沢とMFフェリペ・ガブリエルのところがもう少し頑張らないと勝ちきることは難しくなる。

ちょっと不思議なのは、オリベイラ監督がMFフェリペ・ガブリエルを絶対的なレギュラーとして起用していることである。昨シーズンは31試合で2ゴール。途中交代も多いので出場時間はそれほど多くはないが、2列目の選手としては、かなり物足りない数字であり、それならば、ゴールやアシストといった数字に残るプレー以外の貢献度が図抜けて高いかというと、そういうわけでもない。

確かに、ブラジル人プレーヤーには珍しく、運動量もあって、献身的で、非利己的で、守備もサボらないので、使い勝手はいい選手ではあるが、MFフェリペ・ガブリエルがいないと、攻守とも著しい問題が生じるというわけでもない。どの試合でも、採点すると「5.5」くらいのプレーをしてくれるので、安定しているのは間違いないが、ここまでオリベイラ監督がMFフェリペ・ガブリエルの起用にこだわるのは、理解しにくい。

■ 水原は1勝2分け

一方、韓国の水原は1勝2分けとなった。水原には、前述のように日本になじみのある選手が多いが、MF朴宗真は久々にプレーするところをみたので、特になつかしい感じがした。MF朴宗真は2007年にアマル・オシム監督時代のジェフ千葉でプレーしており、鋭いドリブルをもった光る好選手であったが、韓国に戻った後、水原でスタメンを勝ち取るような活躍をしているようである。

ただ、気の毒だったのは、水原ワールドカップ競技場の芝の状態が最悪に近いレベルだったことであり、水原ワールドカップ競技場は2002年のワールドカップを開催するためにできた近代的なスタジアムであるが、(真冬ならいざ知らず)、4月のこの時期に、この芝の状態というのは普通では考えにくく、MF朴宗真のような攻撃的なポジションの選手は持ち味を発揮しにくい環境だった。水原にも、いい選手が揃っているだけに、「もう少しいい環境を用意できなかったのか」と言いたくなるような「ひどさ」ではあった。


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