スペインのスタメンは、カシージャス、セルヒオ・ラモス、プジョル、ピケ、カプテビラ、ブスケツ、アロンソ、シャビ、シルバ、イニエスタ、ビジャ。クワトロなんちゃらでないので、ちょっと残念。なので、新しいデルボスケスタイルのスペイン代表に期待。選手名鑑を見ないでも、スタメンをあっさりと記載できるのが嬉しいチームである。やっぱり、日常的に見たことある選手が多いので、楽しみだなと。

 スイスのスタメンは、ベナーリオ、リヒトシュタイナー、センデロス、グリヒティンク、ツィーグラー、フッゲル、インレル、バルネッタ、フェルナンデス、デルディヨク、ヌクフォ。フレイって大舞台の直前で怪我をするイメージが有る。ベーラミは普通にスタメンなのか微妙。この試合で勝ち点を取って、自分たちの力を証明するにはもってこいの相手。親善試合で強さは証明しているけど。

 ■ちょっとした変化がすべてを変える。

 スペインのシステムは4-2-3-1。セナの代役にアロンソとブスケツが起用されている。4-1-4-1でアンカーにブスケツという形ではない。恐らく二人揃って守備面では一人前ということだろう。もちろん、メリットもある。パスで違いを生み出せる二人が揃うことで、今までよりもボールを支配し、試合の主導権を握ることができる。それは非常にスペインらしさを加速させるものなので、この選択は歓迎されたのかなとも思う。実際に予選は負けなしだったようで。

 スイスのシステムは4-4-1-1。コンフェデのアメリカの守備にちょっと似ていた。ペナルティエリアの幅でラインを形成することで、ちょっと中央寄りの守備ブロックを形成。シャビやイニエスタにマンツーマンをつけるってよりは、相手が近寄ってきたら注意するような形。なので、コミュニケーションが中心となる。恐らくスイスの選手たちは常に声を掛けあってDFとMFの距離を調整したり、マークの受け渡しを行っていたりしたに違いない。

 スイスの立場からすれば、自分たちの守備に自信はある。でも、スペイン相手に勝ちを狙うのは難しいだろうなってことで、スコアレスでも構わないよって姿勢で試合に臨んできた。なので、スペインがボールを保持してスイスがひたすら耐え忍ぶ展開で試合が進んでいく。スイスはボールを奪ってから、どのような攻撃を見せるか注目してみた。基本的には多人数によるカウンターをやりたそうなんだけど、前線にボールがおさまらないし、スペインの攻守の切り替えが早いので、自分たちで攻撃を展開することは不可能にも感じる前半戦だったと思う。

 なので、スペインがボールを運びながらスイスのゴールに迫っていく。スイスは4-4-1-1で邪魔をしながら守備をしたかったのだけど、スペインの横幅を使ったボール運びの前にゴール近くでの守備を余儀なくされることとなった。しかし、スペインの攻撃はバイタル付近から迫力を失っていった。シルバやイニエスタがバイタルで仕掛けたがっているのだけど、ゴール前で勝負する選手と空間が狭かった。

 その狭い空間からでもチャンスを作っていくのは凄まじい。でも、守備に枚数をかけているスイスからすれば、結局は中央のバイタルエリアから仕掛けてくるスペインにあんまり恐怖はなかったと思う。それは絶対的な数的優位からくる安心感ってやつだろうか。絶え間ないコミュニケーションによって形成される、同じ意志のもとで動く壁の前に、スペインはなかなか効果的にチャンスを作れない時間が続いた。

バルサがボール運びに苦しんだときに顔をだすのがピケである。でも、アロンソやブスケツがいるので、ピケがボール運びで周りをうならせるような場面はなかった。CBにボール運びを任せて、中盤の選手はボールをもっと高い位置でボールを受けるほうがいい。レアルはこのあたりが上手くない。CBがボールを運べれば、もっと攻撃に選手を投入することができる。しかし、ボールを運ぶのは中盤の選手である。なので、前線に枚数が足りない悪循環である。つまり、パサーが無駄に多い。

 クワトロフゴーネス時代のサイド攻撃を思い出すと、イニエスタとシルバである。いわゆるドリブルでボールを運べる選手である。彼らが縦横無尽にポジションをチェンジすることもあるし、バイタルに侵入してくることもある。でも、彼らはサイドからの崩しをメインに行っていた。それはセスクやシャビにはできない仕事である。ちなみに、クラブとは異なり、シルバが右をやっていたのはとても印象に残っている。

 今日のスペインのサイド攻撃を見てみると、右サイドはセルヒオ・ラモスが孤独に、左サイドはカプテビラとイニエスタであった。孤独なセルヒオ・ラモスは特攻を仕掛けることなく、ボールを繋ぐことに尽力していた。これは間違いのない判断である。だって、孤独なんだもん。ドリブルで相手を破壊する能力が期待されているでもないので、しょうがない。でも、相手からすれば、絶対に仕掛けてこない選手などまるで怖くない。こうして、右サイドは死んだ。ちなみに、シルバはバイタルで仕掛けを行っていた。そういう役割だったのだと思う。

 左サイドはイニエスタとカプテビラ。右サイドに比べれば、コンビで崩す場面もちょこちょこ見られたが、相手を警戒してか、カプテビラがゴール前に飛び出してくる場面は殆ど見られなかった。なので、左サイドの攻撃も不発である。なので、中央からの攻撃がどうしても中心となった。しかし、前述したようにボールを運ぶ選手ばかりで、ゴール前で仕掛ける選手が同じエリアでごちゃごちゃしていた。しかも、そこにはスイスの選手がたくさんだよってことで、最悪のマッチングが成立する。スペインはサイドも使っているのだけど、そこから突破するような感じがほとんどなかった。なので、スイスからすれば、中央固めるやり方で間違いないみたいな。

 スイスサイドからすれば、中央を固めてサイドからのクロスを誘発するほうがスペインの攻撃をゼロに抑えられると考えたのだろう。状況によって、スイスは5バックにもなることがあった。それはスイスの選手の間にクロスが落ちてくる可能性を限りなく少なくするための方策だろう。それでも、スペインはサイドから攻略すべきだった。しかし、サイドをボールを運ぶためだけに使っていて、相手のゾーンの外にボールを繋ぐ選手が多い配置された現状は悲しいミスマッチとも言える。7人でボールを運んで3人で仕掛けるような。

 スペインの最大のチャンスはセットプレーからのイニエスタ→ピケへのスルーパスくらいかな。この場面はベナーリオのファインセーブで事なきをえたスイスであった。攻撃面でカシージャスを驚かせるような場面がなかったスイス。前半は意図的に抑えていたのか、後半に勝負をかけるタイミングを決めているのか、それともスコアレスを狙っているのかは後半にわかる。

 後半のスペインはサイド攻撃を重視してきた。イニエスタを左サイドに配置。中央渋滞の解消とイニエスタのドリブル力に期待ってところだろう。しかし、相手のロングボールをブスケツが競り負ける→一気に攻撃の枚数をかけるスイス→ゴール前で混戦となり、最後はフェルナンデスに押し込まれる幸運な先制点がスイスに歓喜をもたらせた。ちなみに、ブスケツの競り負けるはバルサでもよく見られる現象である。

 なので、スペインはブスケツ→ヘスス・ナバス、シルバ→トーレスでシステムを4-4-2に変更。なので、両サイドからがんがん攻撃を仕掛けるのだなと予想された。しかし、その予想は覆された。サイドからの攻撃はイニエスタとヘスス・ナバスの特攻がメイン。数的優位を作るような動きをなぜか見ることが出来なかった。なので、クロスを上げるのが精一杯の両サイドアタッカーたち。だったら、ジョレンテで何かを起こすべきなんだろうけど、出てきたのはトーレス。

 ビジャやトーレスがサイドに流れてイニエスタたちを連携するような攻撃を行えば、スイスの中央寄りの守備は困る可能性が高い。それで、シャビやアロンソを経由してサイドを変えることに成功すれば、もっとチャンスは広がりそうである。しかし、そういう動きは見られなかった。もともとしないつもりなら、ジョレンテを投入すべきである。なので、この交代の意図がよくわからなかった。ヘスス・ナバスへの神頼みってことはないだろう。

 なので、サイド攻撃からのクロスは増えたが、中央で待ち構える屈強なスイスのDFの前にスペインの選手が競り勝てるわけもない。サイドの選手がフリーになるような状況を作れれば、もっと質の高いクロスによって、いい勝負ができたかもしれないが、そういうメカニズムはなかった。

 かつてのビジャレアルのように、相手のSBとCBの間に侵入してサイドを深くえぐる場面もなかった。このあたりは疲れなのか采配なのか不明。ただ、疲れていてもセルヒオ・ラモスは飛び出していきそうなんだけど。最終的にはイニエスタが相手のスライディングを食らう→ペドロが登場するんだけど、これで左サイドは再び死ぬこととなった。

 後半のスイスは、機能しないスペインを尻目に、カウンターを浴びせる回数が多くなっていった。特にヌクフォにボールがおさまるようになり、前がかりになった、というよりはシステム変更でバランスを崩したスペインに、危機的状況を与えることに成功していた。デルディヨクはあのシュートを決めていれば、一躍スターになっていたかもしれない。

 そんなわけで、苦しみながらもシュートを打ちまくったスペインだったが、アロンソの強烈ミドルも枠に弾かれて万事休す。ピケのパワープレーも結果には繋がらずに、まさかの敗戦でワールドカップを迎えることとなった。

 ■独り言

 ポルトガルは勝つためにボールを放棄したが、スペインはボールを放棄しなかった。また、ユーロの時に比べると、サイド攻撃がかなり適当になっている。確かに中央を固めている相手に正面衝突して、わずかながらも決定機を作れるところはさすがである。しかし、効率が悪い。ユーロの時はカウンターとサイド攻撃にもっと迫力があった。でも、今のスペインはサイド攻撃よりもボールを保持することを重視しているように見える。なので、地味に変化しているスペインは決していい方向に変化しているとは言えない。

 次こそはクワトロフゴーネスで試合に臨んで欲しいなと。ハビマル頑張れ。君に全てがかかっている。でも、監督は選択しないだろうな。クワトロフゴーネスの形を基軸に予選も戦えばこんなことにはならなかったろうに。マタやナバスがクワトロフゴーネスに殴りこむような展開を期待していた2年前。

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